ゲオルルグの死の呪い

なんだってこんな事をしてしまったんだ。あの子の…桜子の体育着を盗んでしまうなんて!! クラスのマドンナ的存在の桜子の体育着がなくなってた暁には大事件だ。明日になれば、早速犯人探しが始まるだろう。 中学生にもなれば多少の性欲も湧く。ほんの少しだけと思ったんだ。少しだけ桜子の匂いを知りたかったんだ。 それなのに…それなのにアイツがいきなり放課後の教室に入ってくるからっ!! …もしや、見られたのか?

銀色桜

13年前

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予想に反して、翌日になっても大きな騒ぎになることはなかった。 ゆうべは桜子の甘酸っぱい香りを十分に堪能できたし、放課後にこっそり戻しておけば、これは完全犯罪成立じゃないか? だが、それは昼休み。クラスメイトと談笑する桜子を、ひとり遠目に眺めニヤニヤしていた時に、背後から冷水のごとく浴びせられた。 「私の体育着……返してくれないかな」 ──振り返ればそこには、地味でモッサい女子、清美がいた。

saøto

13年前

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「私、桜子ちゃんに体育着貸してたの…」 何だと!?通りで桜子の体操着にしては小さいと思ったらそういう事か!? 「それで、放課後返してもらいに行ったら…あなたが体育着を持って教卓の中に隠れてたから。」 !? あの時入って来たのはこいつだったのか…暗くてよく見えなかった… 「じゃあその場で言えば良かったじゃないか!」 「馬鹿だね。そしたら内輪で話が済んで、あなたの苦しみが減るじゃない。」

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モサくておとなしい女子、清美は見たこともないような性悪そうな表情をしている。 「ねえ。今私がここで『伊藤くんが桜子の体操着を盗んだ』って叫んだら、一体どうなると思う?」 「脅してるのか?」 「ふふ。だってこんなチャンス、なかなかないもん。バラされたくなければ、私のいうことを聞いて?」 清美は小さな体で懸命に爪先立ちをし、俺の耳元に口を寄せて言った。 「

13年前

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「加藤くんの体操着を盗んできて」 「は?」 「聞こえなかった?加藤くんの…」 「いや聞こえたよ。聞こえたけど…」 加藤はサッカー部に所属するクラス一のイケメンで、日頃から女子たちにきゃあきゃあ言われている。清美は加藤が好きだったのか? 「んなもん、何に使うんだよ?」 聞くと、清美はにやりと不気味に笑って言った。 「決まってるじゃない。大神ゲオルルグ様に捧げて死の呪いをかけるのよ」

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嫌な汗がぶわっと出た。 神様仏様一昨年死んだばーちゃんごめんなさい。 もうこんなことしないから、俺を、今すぐ、たすけて。 「か、加藤を、げおるるぶ様に...?」 「ゲオルルグ様!」 「な、なんで...?」 清美は少し眉をよせ、ぼそりと呟いた。 「...やっぱり、みんな知らないんだ」 「え?」 「今日の放課後、加藤くんの体操着持って、視聴覚室に来て」 そう言って、清美は俺から離れていった。

さはら

12年前

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一体なんだっていうんだ。 放課後、俺は加藤から普通に体操着を借りて、視聴覚室に向かった。理由は適当に、体操着忘れて部活に出れなくて困ってるって言って借りた。加藤は特に怪しむでもなく、体操着を俺にかしてくれた。まったく、いい男だ。 「ちゃんと、持ってきたんでしょうね」 清美は偉そうに俺に向かっていった。 「あぁ。持ってき…⁉」 なんで、視聴覚室に魔法陣が? こいつ、やっぱり、頭いかれてる。

リッチー

12年前

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「さあ、始めましょう」 描かれた魔法陣の中心に加藤の体操着をおいた清美は怪しげな分厚い本を広げ、あいつの口から聞いたことのない言葉が紡がれ始めた。 背筋がぞわりとする。本当にあいつは、いや、そんな馬鹿げた話はある筈がない。 「やめろ清美!!加藤を呪って何になる!」 清美の腕を掴むと清美は振り払い泣き叫んだ。 「桜子を、あの子を傷つけた罰よ!」 そう言い切ると彼女は本を床に叩きつけた。

NaNasi

12年前

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清美の言葉が理解できなかった。あいつはイイ奴。 「どうして、桜子ちゃんが体操着を持っていなかったか、わかる?」 「忘れたからじゃないのか?」 おめでたい人ね、清美は呟くと儀式を終わらせ、手のペンを片づける。でも、体操着に変化はない。 「アンタに返すわ」 返された体操着を俺は体育で使う。清美は女子に、俺に向けてブラックライトをつけるよう言う。 『桜子の体操着でオナった加藤』 文字が浮かび上がる。

aoto

12年前

- 完 -