あとどのくらい走れば君に会える? あと何度月を涙で濡らせば君は現れる? あと何回霧を払えば君が見える? あといくつ息を止めれば君は会いに来てくれる? あと何日耳をすませば君の声が聞こえる? あと何夜起きていれば君は目を覚ます? あと何年同じ日を送れば君が世界を変えてくれる? あと私は何をすれば君は答えてくれる? もう私は疲れたよ。
- 1 -
僕は待ってる。 君が走ってこなくても、 途中で休んでいても、 涙の雫で君が溺れそうになろうとも、 濃い霧で君が進む道を見失いかけようとも、 僕の声が届かない遠くにいようとも、 僕が深い眠りの中にいて君を見失いそうになろうとも、 君が悲しみに打ちひしがれていても、 笑顔を失いそうになっても、 僕は必ず君の元へ、 ずっと、 待ってる。 諦めないでいて。僕は、 僕は、 君の隣に必ず、、、
- 2 -
私は少しわがままなだけ 私は少し疲れただけ?
- 3 -
僕の中の君が変わる前に、 もう一度ひとめ会いたい、 ああ、 そうやってやっと君に会う日の事を想う、 君の悲しみは、別れは、 また会う為の伏線でしかなく、 そうやってまた終わり、 また二人で始まるのだろう、 瞬く間にたどり着く想いは、 君の元に走り抜けていくよー、、
- 4 -
君は、同じ空の下にいるのかな 動かない、冷たい空気の中で 私はただじっと、空の月を見ていた 君を追いかけて 追いかけても 多分また、あの月みたいに 君は私を追い越して、行ってしまうんだよね それをわかっているから、時々虚しくなる …ねえ、あと、どれくらい? 空気が、動く。微かな暖かい風。 私は擦り減った力を振り絞って、立ち上がる。 君の声が、聴こえた気がした。
- 5 -
君と僕は、遠く離れた同じ空の下。 動かない、冷たい空気の中で僕はただじっと、空の月を見上げている。 君はやがてここに辿り着き、ぼくを抱きしめてくれるだろう。その時、強く抱き返そう。 繰り返しではない、曲がりくねったようにみえても。 一歩ずつ、君は近づく。 …ねぇ、あと少しだよ。 僕の声が空気を震わせる。ほんの少し、世界が震える。 君が立ち上がるのをまなうらに思い浮かべる。目頭が熱くなる。
- 6 -
遠くで呼ぶ声。それはただの空耳。空気が震えただけ。 だけどほんの少し世界は変わる。歩き続ければ、いつか。そんな気持ちが、久しぶりに生まれた。 あと少し。あと少しだけ進んでみよう。疲れて走れなくても、虚しくても、私にできることはまだある。 月が巡る。少しずつ大きくなっていく。空に金の光が満ちるとき、地平に向こうに懐かしい姿が見えることを信じて。
- 7 -
カラン、と何かが転がる音がして、僕は顔を上げる。君が来たのかと思ったけれど、ただ空き缶が冬の夜の風に吹かれただけだった。 雪が降り出した夜空には満月。星たちは輝きを増し、白い光が空に放たれている。 君はきっと来る。僕にはわかる。 君もこの空を見ているんだろう? 愛し合って言えば、また会える。そういったのは君だったね。 不思議と僕もそんな気がしたんだ。君となら、絶対にできるって。 足音が。
- 8 -
あなたは、馬鹿ね。 いいえ。私が馬鹿なのね。 あなたはもうとっくに、走るのを止めた私を、待っていたというの? 私は、月を見るのが怖かった。 あなたに会うのが怖かった。 ここで立ち止まっていたら、いつかあなたが来てくれる気がしたの。 “愛の力でまた会える” そんなこと、もう誰も信じていないわ。 同じ空の下、私はあなただけを思っていたけれど、あなたを求めたりしなかった。 さようなら。
- 完 -