カンニングの行方

この平凡と思われたこの世界にもスリリングな出来事はある…

もうすぐ始まるのだ。手に汗握るその瞬間が…

僕はこの日の為に大変な準備をしてきた。挑戦し、挫折し、絶望し、撤回し、計画し、確認し、再度確認し、希望を得た。絶対に成功させてみせる。もし失敗したら僕は全てを失うであろう…失敗は即ち、僕の人生のエンディングが流れる事になる。

僕が決行しようとしているのは…
………
……
…

カンニングだ。

- 1 -

それはテストを受ける者が一番行ってはいけない卑劣な行為。胸が痛むが、この僕の今の成績では留年だ。この頭では必死に勉強してももう遅れを取り戻す事は出来ない。残された道はカンニングしかないのだ。

絶対に成功させねばならない。その重圧に僕は必死に耐える。
大丈夫だ。この日の為に準備してきたんだろ?
僕は自分に言い聞かせた。いよいよその時だ。
「始めっ‼」
先生の合図と同時に僕の戦いは始まった。

広東大熊猫

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一時間目、数学。
僕は公式を全て極小の文字でメモしてきた。左手の親指の爪、薬指の内側、腕時計の下になる手首、袖口、消しゴムカバーの裏、六角鉛筆の一面、筆箱の蓋の裏、などなど。

教師が巡回に来ても自然に隠せる場所ばかりだ。しかも全て水性のボールペンで書いたので、問題が終わり次第親指の腹でこすればだいたい消える。メモ用紙を持ち込むより安全だ。

これで数学は乗り切れた。
次は公式の通用しない国語だ。

lalalacco

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二時間目、国語。
この科目は、漢字はともかく、読解問題になるとカンニングのしようがない。

…と、普通なら思う所だが、僕には秘策がある!
国語のカンペには「樹形図」を書いたのだ!

説明しよう!樹形図とは、ある事柄に関連するキーワードを枝状に繋げたものである!

昨日、一晩かけてネットで書き方を勉強しただけあって、国語もなんとかクリア!

だが、油断はできない。
次は、試験範囲の広い歴史だ。

hyper

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三時間目、歴史。
これに関してはさほど悩まなかった。
なぜなら隣の席の工藤くんは歴史の秀才だ。
この日のために僕はコンタクトレンズを買った。

僕らの机は人ひとり通るのも難しいほど近い。案の定彼は超人的な早さで問題を解き終え、そしていつものように右腕を下にして寝始めた。

僕は横目で冷静に用紙を盗み見た。
自分の長めの前髪に感謝した。
この時の僕は死ぬほど集中していたと思う。

次は、英語だ。

noname

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「テストを始める前にー。皆、ズルはいけないぞー。先生達なー、皆の中にズルをする奴がいたらー、とても悲しいからなー」

テストを配りながらそんな事を言われたら、誰だってバレたのかとビビっちまってカンニングを止めるだろう。
誰だって、普通の奴ならば。
僕は違う。
僕には後が無い。このテストの点数が低ければ、僕の青春は終わる。
カンニングに、僕は全てを賭けたのだ。
カンニングは続ける、依然変わり無く。

ナゾグイ

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英語も何の問題もなかった。強いて挙げれば多少ヤマが外れたことだが、及第点を取れるのは間違いないだろう。

僕はお昼ご飯を早めに片付け、トイレの個室に駆け込み次の物理のテストに向けて仕込みをする。

ギリギリに戻ると怪しまれる可能性があるため、15分前には席に着く。よし、今回も無事に乗り切るぞ。

自席で教科書を読んでいると、不意に肩を叩かれた。

「ねぇ君、カンニングしてるでしょ」

fusuke

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血圧が上昇する。計器で測ったら針が振り切れる程に。肩の手は花岡さんだった。僕の後ろのクラスのマドンナ。
誤魔化せ!
「知ってるよ。カンニング竹山がなにか?」
「はぁ?knowじゃなくdoかって聞いたの。してるでしょ」
「ならNOだよNO」
僕は涼しく教科書を見る。が、次のセリフで椅子ごとずっこけた。
「咎めてるんじゃないよ。君に…協力してもいいよ」
「はい?」
花岡さんの頬が心なしか紅い。なぜ。

ハルノテル

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結局、物理以降のテストは赤点だった。
花岡さんの後ろからの視線が、カンニングをさせてはくれなかった。

僕の努力は無に帰し、青春は終わった。

…と思ったけれど、僕は今、花岡さんの「協力」を受け、再試のための猛勉強中だ。
教師になりたい彼女は教え方も上手い。何とか留年を免れそうだ。

「次はテスト前にも協力してあげるからね」

ちゃんと勉強しよう。
僕の青春はカンニングをやめたことから始まった。

- 完 -

作品情報

カンニングの行方

#3013

リレー期間

2ヶ月