「もういいかい」 「まあだだよ」 「もういいかい」 「まあだだよ」 「もういいかい」 「もういいよ」 私は目を開けた。 楽しい楽しいかくれんぼの はじまりはじまり
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まずは、いじめっ子の拓くんから探そうか。 彼は周りの子と比べて体も態度も大きかったから、すぐに見つかるだろう。 ベンチの下 草むらの茂み すべり台の影 停まっている車の後ろ 歩道橋の下 ポストの死角 エレベーターの中 マンションの角部屋 ピンポーン 「はーい」 ガチャッ 「拓くん、みぃーつけた!」 「お、お前はッ!」
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もー拓くんずるいよー、家に隠れるんだから。ま、デカいから無理もないけど。 次は蛇田くんを探そう。 けど、蛇田くんは忍者やスパイなどの潜入マニアでかくれんぼ得意なんだ…。 だから見つけるのはすごく難しいなぁ…。 …ん? あの、ダンボール箱一瞬動いたような…。
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「蛇田くん見つけたー!」 段ボールをのけて、そう言うと、どういう関節してるんだってくらい折れ曲がった蛇田くんがみつかった。 「みつかっちゃった」 さあ、つぎはミキちゃんだ。あの子はとても頭がいいから、わかりにくいところにいるのかも。 魚屋さんの裏? それとも八百屋さんのとなりの狭い路地? かさっ。 あ、花屋さんでなにか音がしたみたい。
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「ミキちゃんみつけたー!」 うまく隠れてたみたいだけど花屋さんのワンちゃんに驚いて音たてちゃったみたい 「みつかっちゃった」 よし、つぎはなっちゃん! なっちゃんは体が小さいから狭いところに隠れてそうだなー ガシャ 路地の方で物音がしたみたい
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路地の方に来てみたけどなっちゃんはいない。 ガチャ あれ?でも、やっぱりこの辺にいそう?裏も見てみよう。 狭い路地裏に来たら、いろんなお店のゴミ箱やらお酒のケースがいっぱい。隠れるトコもいっぱい。 一つずつ捜したけど、やっぱりいない。 ガチャ あ!また!この辺に来ると気配がする。 お店とお店、建物の隙間20センチ位のトコを覗き込んだら、あ!挟まってる! みーつけた! 次は身軽な空くんだ。
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空くんは高いところが好きで、木登りがとっても上手。 でも、前に木から落ちて大ケガをしたことがあって、それからは木登りをしなくなっちゃったの。 木登りをしなくても高いところに行ける場所……。 私は街にひとつしかないスーパーの屋上に行ってみた。 予想的中、空くんはそこにいた。 「空くん、みーーっけ」 空くんはフェンスを登ろうとしてたところを見つけられて驚いてた。 次は勉強の得意な住田くんだ。
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住田くん、どこだろ。あれ?あそこだけ不自然に落ち葉が集まってる。 もしかして…。近くにおいてあったホウキではいてみると…。 やった! 「住田くんみーつけたっ」 「あーあ。見つかっちゃった。 僕の計算によると、この深さが一番良かったんだけどなぁ。あ!4ミリここがずれてたからだ。」 次は、やんちゃな上野くんだ。
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上野君はすぐに見つかった。 どうやら隠れているのに耐えられず、動きだしてしまったようだ。 「上野君、みーつけた!」 さて、これで全員みっつけた! あーぁ。全身真っ赤っか。 流石に皆の絵の具を一身に浴びたらこうなっても仕方ない。 あれ? 全員? あぁ、ぼくが残ってる。 そっか、次は鬼ごっこだね。 僕が鬼。 皆、いま捕まえにいくよ。 僕はその手に持った赤まみれの鋭利なおもちゃを、首に近づけた
- 完 -