木崎君と伝言役

「はじめまして。」 「・・・はじめまして。」 「なぜこんな事になってるのか、 それは僕にも見当がつかないけど、まずは状況を整理しようか。」

K5.

13年前

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「僕は、学年一のハンサムな木崎と友達だから、僕と同じクラスの千代美さんに、彼に気持ちを伝えてくれと、伝言役を頼まれたんだ。だから一昨日あいつに言ったのさ、その事を。そしたら、返事を待ってくれ、考えるから二日間時間をくれ、放課後頃には結論を出すって言われたんだ。それで今来たんだけど…」 「なるほど。だから木崎はあんな事を…。あ、多分僕がその木崎の伝言役だ」 「僕が伝えるんだから直で言えよ…」

harapeko64

13年前

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「あー、ところでさ。君も木崎の友達なの?」 「いや、僕はただの通りすがりだよ」 はて。どういうことだろうか。 名も知らぬ彼が言うには帰ろうとした時に丁度木崎に声をかけられ、一通りの事情を聞かされたあと言伝を頼まれたらしい。 あいつはどういうつもりなんだろう。少々常識から外れた行動のようにも思える。 まあいいや。で、なんて? 「うーん。それがね。実は他に好きな人がいるみたいんだよ」

kako

13年前

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「ふうん、それは残念だね。千代美さんに伝えておくよ」 正直僕は驚いた。自分は木崎の一番の親友だと思っていたが、木崎に好きな人がいたなんて今まで知らなかった。 千代美さんは部活中だろうな。でも、木崎の返事を待っているだろうから、部室まで行ってあげよう。 歩こうとしたその時、木崎の伝言役が僕を止めた。 「このままでいいのかな? 森田千代美はふられたんだよ」 そんなこと言われても。僕らは伝言役だし。

熊岡りり

13年前

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「いいか。千代美は振られたんだ。つまらないイケメンの木崎にだよ…………木崎くん」 「今、何て言った………」 「いいか。俺は木崎を許さない!絶対復讐してやるぞ」 「何でそんなに怒ってんだ?………君は森田千代美のなんなのさ?もしかして兄弟?」 そいつの表情は見えない。何故なら帽子を深く被ってるからだ。身体も妙に華奢だし妙な奴だな。 「私?いや俺の名は森田千男だ。森田千代美の弟だよ」

yoi523

12年前

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「なるほど。ま、お姉さんが振られたなら、気持ちはわかるけど」 僕は思うところはあったが、森田千男と名乗る伝言役をたしなめた。 「復讐はまずいんじゃないか?それに、木崎に好きな人がいるって、本当かどうか微妙な気がする」 「いや、確かに木崎く…木崎が言ったんだ、『好きな人ができたから、告白することにした』って」 僕は考えを巡らせ、口を開く。 「じゃ、どうやって復讐するんだ?」 「…伝言ゲームだよ」

12年前

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伝言ゲーム? 真意が分からず具体的にどういうことか説明を求めた。 「いいかい、筋書きはこうだ。俺は通りすがりに木崎の伝言を預かった。 『好きな人からだから、告白することにした』ってね」 「はあ?」 「君はわた…姉にそれを伝えるよね。そしたら姉は天にも昇る心地で木崎が告白してくるのを待つわけだ。 なのに告白しない木崎に君は言うんだ。 『千代美は両思いだと思って待ってる、付き合うしかしないぜ』ってさ」

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「強引な…」 この千男と名乗る人物もどこか挙動不審だし、木崎も一体どこに行きやがった? 「とりあえず木崎を探さないとな」 「まだ学校にいるんじゃないかな。さっきも階段の踊り場で会ったし」 よし、あいつを捕まえて尋問してやろう。親友の俺に、好きな人がいることを隠すなんて。 そして。木崎は簡単に見つかった。 屋上の扉前。木崎と一人の女子が、イイ雰囲気で向き合っている。 だがその女子は…俺の妹だった。

12年前

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「そう言う事か」 「は?」 つまり、兄である僕に妹の事が好きだとは言えなかったのだ。 「森田君、やっぱりさっきの話は無しだ」 「へっ?」 「あの子、僕の妹なんだ」 そう言って僕は静かにその場を去った。 後ろから甲高い抗議の声が聞こえてくるがそんなのは無視だ。 誰だって、赤の他人よりも身内の幸せを選ぶだろ? でもまぁ、この事を黙っていた木崎には明日、僕の親友パンチを食らわす事にしよう。

皇 梨花

11年前

- 完 -