終焉の果て 〜9つのものがたり〜
やがて、寒い冬がやって来ました。
キリギリスは食べ物も無く、ついには凍えて死んでしまいました。
それでもキリギリスは幸せでした。
想うがままに楽しく唄い続けた人生だったのですから。
一方、働き者の蟻の中にも寿命を迎えた者がいました。
蟻は思いました。食べ物に困る事は無かったが、その為の争いの日々、やりたい事もいっぱいあったのに我慢してきた、どこか悔いの残る人生だったと。
これは9つの終焉の物語
- 1 -
ドボン
泉に落ちたオオカミに目もくれず母親と子ヤギ達は家の中へ。
子ヤギ達は大人になり、子供もでき母親ヤギを看病する寒い冬の頃、三番目にお腹に入れられた元子ヤギは考えます。
真冬で草が食べれず空腹に苦しむことは辛い。あのオオカミも空腹が辛いから僕達を食べようとしていたんだ。僕達七匹食べようと、少しでも多く食べようとしたんだ。だから少しでも多くするために減らすこともあるよね
「ねぇ、母さん」
- 2 -
マッチはたったの一本も売れなかった。少女の飢えと疲労は限界を向かえていた。ぼろ布から覗く少女の手足は、彼女の売るマッチ棒よりも細かった。
とうとう少女は立っていることにも疲れ果て、路傍にゆっくりと横たわった。少女は最期にマッチの灯りで幸福の幻を見た。目蓋は閉じられ、二度と開くことはなかった。静かに雪が降り積もった。
人々が少女の亡骸に集まった。
そしてソレを食った。彼らもまた餓えていたから。
- 3 -
魔女の魔の手から逃れ、家族四人で幸せに暮らしていた。数年後、グレーテルは山に入った。
「あ、あんなところにお菓子でできた家があるわ。あゝ、なんて美味しそうなの」
グレーテルは何かの力に吸い寄せられるように家に近寄り、壁のチョコレートを舐めた。
「お前を待っていたよ。グレーテル!」
そう魔女は言うと、グレーテルを竈に連れて行き、煮えたぎる鍋の中へ突き落とした。
目には目を。歯には歯をってね。
- 4 -
人魚は泡になった。
苦しみに耐えて人間へと姿を変えた。それなのに思い続けた男は彼女に気がつかない。それどころか全く無関係の村娘と結ばれた。
魔女は言った。
「あの男を刺せ。然すればお前を人魚に戻してやる」
殺してやる。一度は決心した彼女だったが、憎んでも愛した人。ナイフは滑り落ちた。
「いいわ。泡になれば苦しまずに彼を愛し続けられるもの。そしていつか、私は彼の一部になるの。ずっと、ずっと……ね」
- 5 -
悪い王妃の魔の手から逃れることが出来た白雪姫。
隣国のネクロフィリアの権力を利用し、王妃を拷問によって殺害することに成功しました。これでもう、命を奪われる心配はありません。
国王も、刺客の猟師も、七人の小人も、王子も皆、皆私のために尽くしてくれる。
しかしながら、王子は言いました。
「ああ、あの王妃は美しい!」
鏡よ、鏡よ、鏡さんーー。
- 6 -
雉もやられた
残るは猿と私だけだ
目の前には若い鬼、鴉や蛇を連れている
「何か言い残すことはあるか?」
鬼が問いかける
因果応報というやつか
まさか鬼を駆逐した10年後逆の立場になるとは
「桃太郎様、私を囮にして早く逃げて下さい!」
良いのだ猿、もう私は決めた
あの時の大鬼の言葉を今度は私が使おう
「いつか私の子孫がお前達を倒しに行く」
「父上のかたき!」
棍棒が私の視界を覆った
- 7 -
狼はお婆さんを喰べ、赤ずきんを喰べて
その狼は猟師に命を奪われた。
狼は薄れていく意識の中で聞いた。
・
『今日もいい獲物が獲れた。
所詮この世は
弱肉強食….……。』
変わることのない食物連鎖…。
そうして狼は意識…命を手放す。
猟師の未来を想像して。
- 8 -
お姫様は王子様の口付けで、長の眠りから目覚めました。
魔女の呪いから解放され、お姫様は王子と結ばれ幸せに暮らしました。
ですが、お后様となった彼女は王宮の奥に押し込められました。
出来ることは、老齢の両親の話し相手と、産まれた王子・王女達の遊び相手だけ。
お姫様だった彼女は、考えました。
私の人生って、何だろうと。
そうして、かつてのお姫様は城を飛び出したのでした。
人生の忘れ物を探しに。
- 完 -
作品情報
終焉の果て 〜9つのものがたり〜
#3468
- リレー期間
-
2ヶ月