終焉の果て 〜9つのものがたり〜

やがて、寒い冬がやって来ました。 キリギリスは食べ物も無く、ついには凍えて死んでしまいました。 それでもキリギリスは幸せでした。 想うがままに楽しく唄い続けた人生だったのですから。 一方、働き者の蟻の中にも寿命を迎えた者がいました。 蟻は思いました。食べ物に困る事は無かったが、その為の争いの日々、やりたい事もいっぱいあったのに我慢してきた、どこか悔いの残る人生だったと。 これは9つの終焉の物語

真月乃

12年前

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ドボン 泉に落ちたオオカミに目もくれず母親と子ヤギ達は家の中へ。 子ヤギ達は大人になり、子供もでき母親ヤギを看病する寒い冬の頃、三番目にお腹に入れられた元子ヤギは考えます。 真冬で草が食べれず空腹に苦しむことは辛い。あのオオカミも空腹が辛いから僕達を食べようとしていたんだ。僕達七匹食べようと、少しでも多く食べようとしたんだ。だから少しでも多くするために減らすこともあるよね 「ねぇ、母さん」

にらたま

12年前

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マッチはたったの一本も売れなかった。少女の飢えと疲労は限界を向かえていた。ぼろ布から覗く少女の手足は、彼女の売るマッチ棒よりも細かった。 とうとう少女は立っていることにも疲れ果て、路傍にゆっくりと横たわった。少女は最期にマッチの灯りで幸福の幻を見た。目蓋は閉じられ、二度と開くことはなかった。静かに雪が降り積もった。 人々が少女の亡骸に集まった。 そしてソレを食った。彼らもまた餓えていたから。

fly

12年前

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魔女の魔の手から逃れ、家族四人で幸せに暮らしていた。数年後、グレーテルは山に入った。 「あ、あんなところにお菓子でできた家があるわ。あゝ、なんて美味しそうなの」 グレーテルは何かの力に吸い寄せられるように家に近寄り、壁のチョコレートを舐めた。 「お前を待っていたよ。グレーテル!」 そう魔女は言うと、グレーテルを竈に連れて行き、煮えたぎる鍋の中へ突き落とした。 目には目を。歯には歯をってね。

リッチー

12年前

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人魚は泡になった。 苦しみに耐えて人間へと姿を変えた。それなのに思い続けた男は彼女に気がつかない。それどころか全く無関係の村娘と結ばれた。 魔女は言った。 「あの男を刺せ。然すればお前を人魚に戻してやる」 殺してやる。一度は決心した彼女だったが、憎んでも愛した人。ナイフは滑り落ちた。 「いいわ。泡になれば苦しまずに彼を愛し続けられるもの。そしていつか、私は彼の一部になるの。ずっと、ずっと……ね」

miz.

12年前

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悪い王妃の魔の手から逃れることが出来た白雪姫。 隣国のネクロフィリアの権力を利用し、王妃を拷問によって殺害することに成功しました。これでもう、命を奪われる心配はありません。 国王も、刺客の猟師も、七人の小人も、王子も皆、皆私のために尽くしてくれる。 しかしながら、王子は言いました。 「ああ、あの王妃は美しい!」 鏡よ、鏡よ、鏡さんーー。

aoto

12年前

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雉もやられた 残るは猿と私だけだ 目の前には若い鬼、鴉や蛇を連れている 「何か言い残すことはあるか?」 鬼が問いかける 因果応報というやつか まさか鬼を駆逐した10年後逆の立場になるとは 「桃太郎様、私を囮にして早く逃げて下さい!」 良いのだ猿、もう私は決めた あの時の大鬼の言葉を今度は私が使おう 「いつか私の子孫がお前達を倒しに行く」 「父上のかたき!」 棍棒が私の視界を覆った

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狼はお婆さんを喰べ、赤ずきんを喰べて その狼は猟師に命を奪われた。 狼は薄れていく意識の中で聞いた。 ・ 『今日もいい獲物が獲れた。 所詮この世は 弱肉強食….……。』 変わることのない食物連鎖…。 そうして狼は意識…命を手放す。 猟師の未来を想像して。

とまと

12年前

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お姫様は王子様の口付けで、長の眠りから目覚めました。 魔女の呪いから解放され、お姫様は王子と結ばれ幸せに暮らしました。 ですが、お后様となった彼女は王宮の奥に押し込められました。 出来ることは、老齢の両親の話し相手と、産まれた王子・王女達の遊び相手だけ。 お姫様だった彼女は、考えました。 私の人生って、何だろうと。 そうして、かつてのお姫様は城を飛び出したのでした。 人生の忘れ物を探しに。

12年前

- 完 -