迷探偵・黒谷向日葵の不覚

私が探偵の黒谷向日葵です。 …なんつって笑 というのは冗談で、32歳独身の行き遅れ探偵オタクです… でも、そんな私にも彼氏というものがいます。 最近は疎遠で、その上昨夜、私の親友の夏子と一緒に歩いている現場を目撃しましたが… ーピンポーン なんだろ?宅配かな? 手紙? るてでとれ いまほいか ってじごつ るやぜいん まんつがさ PS.迷探偵のお前は首をかしげて悩んでいるがいい

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さて、どうしようか。 届いた手紙を片手に、私は首を傾げて悩みました。 手紙の内容が分からないからではありません。 そもそも探偵オタクの私には朝飯前の怪文書です。 "三月五日 午前零時 大和ホテルで 待っている" 右下から順に斜めに読んでいけば、簡単に解けます。 それと、差出人は筆跡からして親友の夏子で間違いないです。 しかし三月四日の今日、私にはやらなければならない事が残っているのです。

reshia

12年前

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そう、大事な用事ー彼氏太陽君の浮気調査!! 夏子と昨夜歩いているのを見つけそのときから調査と言う名のストーカー行為をしています。 とりあえず夏子には簡単なLINEを送ろう かのばがっ。 りそはといる むもひいはて PS.バカと煙はどこからどこに? これでよし、さて、太陽君のGPSは特に動いていないし盗聴器の録音聴いとこう

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彼をつけていると夏子からLINEが返ってくる なぜ、彼女は普通に連絡が取れないのだろう。まぁ、私が言えることではないのだけど…… で、LINEの内容は 40 14 19 9 41 7 11 14 3 13 38 37 6 35 12 41 34 PSはじまりは木の下

ネメシア

11年前

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夏子のLINEに私は眉をひそめました。 足を止めて手帳から五十音表を取り出すと、何度も彼女からのメッセージに目を配ります。 平仮名の『く』から順に数字を追うと、まるで叱責するような一文が現れました。 “あなたはたいせつなことをわすれている” そして次の吹き出しには、 『レラーシローラ』の用意は絶対に忘れないで PS. 鏡を覗いて、あらゆる 角度に首を傾げよ迷探偵 …とありました。

おやぶん

11年前

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フルーツロール?なぜそんなものを用意しなくてはならないのか。 携帯から目を上げるといつの間にか二人はホテル!…ではなくその横の喫茶店へ入っていった。幸いにも席は窓際のようだが私もずっと道端から覗き続けるわけにはいかない。 すると丁度私の真後ろにはケーキ屋。まさか尾行がバレているのかと思っていると再びLINEが。 室冨梯技゛八京続税持゛。 PS.首の頭を並べなさい。 信用していいのだろうか…。

nanome

11年前

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浮気ではない、なんて。 信じたいけど、ますます気になるよ。 でも、一旦ここは隠れるためにケーキ屋へ。 ここのフルーツロールは、私も太陽くんも大好物。眺めてたら、顔見知りの店員さんが話しかけてきた。 「ご予約のフルーツロール、出来てますよ」 え? 予約なんてしてないのに? その時、スマホにメッセージ。 「や↓ら↑、た・あ←や↓あ↑か↑わ↑ま↓か↑ら↑や↓ P.S.フリック入力にはもう慣れた?」

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夜、太陽君もくるよ? 一体何なのよ。夏子が指定してきた大和ホテルに、太陽君もくるって事? 2人でコソコソ会ったりなんかしてどういうつもりなの… ケーキ屋から喫茶店の窓際を睨みながらフルーツロールを受け取る。 盗聴器からは『ガ、ガ、ガ…』というノイズしか聞こえない。 2人の様子は、なんだか夏子が一方的に話しかけていて太陽君は元気なさげ。 『向日葵が忘れ…ガ、ガ…筈ないでしょ…ガガ…』 え?

11年前

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『…バイトなんて言って…けど…あんなの嘘に…決ま…』 そこで盗聴器の音声がようやくクリアになった。 『だって明日は二人が付き合って三周年の記念日でしょう?太陽君の気持ち、ちゃんと伝わってるよ』 気持ち?どういうこと? 『…向日葵に、プロポーズするんだもんね』 なっ、なななな、なんですとー!? こんな真実に気付かないなんて……黒谷向日葵、一生の不覚! 私はケーキの箱を手に店を飛び出した。

まーの

9年前

- 完 -