ゴミ捨て場のメリーさん

ある日、友達のミユちゃんとリビングルームで遊んでいると、携帯にこんな電話がかかってきた。 「あたしメリーさん。今ゴミ捨て場にいるの…」 何の報告のつもりだろう。いたずら電話だと思い私はすぐに電話を切った。 「誰からの電話?大丈夫?」 ミユちゃんが私の顔を覗き込んでそう聞く。 「ううん、大丈夫だよ」 私はそう言ってまた遊びを続けた。 けれど、すぐまたメリーさんから電話がかかってきた。

kam

12年前

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「わたし、メリーさん、ゴミ捨て場にいるの。」 また、同じこと言ってる‥。 私は、無視していったん電話を切り、ユミちゃんに相談してみる。 「ねー、ユミちゃん変な電話来るんだけど、わたし、メリーさん、ゴミ捨て場にいるのって‥。私、少し怖いんだけど‥。」 ユミちゃんは、「なんか、怖いねー。何?メリーさんって、ひつじ?‥」 「どうしよう。ユミちゃん。」

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「とりあえず、着拒すればいいんじゃない?そうすれば掛かってこないよ」 「うん、そうだね」 私は、すぐに着拒の設定をしようとーーした、が、 「え…」 着信履歴を見た。相手の携帯の番号が、ない。その代わりに、変な文字の羅列が画面に並んでる。 「どうした?……ひっ」 画面を覗き込んだミユちゃんは、小さく悲鳴を上げる。 そして、 「わたし、メリーさん、ゴミ捨て場にいるの」 また、そう聞こえた。

star*gazer

11年前

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「ゴミ捨て場にいるの。わたし、メリーさん、ゴミ捨て場にいるの…」 最初の電話では抑揚のない機械的な声だったのに、今度は今にも泣き出しそうな声に聞こえる。声が震えてる。泣き叫びたいのを我慢しているような。 「焼かれちゃう」 メリーさんと名乗る電話はそこで切れた。 私とミユちゃんは顔を見合わせた。 「どうしよう?」 私の言葉にミユちゃんは、 「ゴミ捨て場ってどこ?電話の向こうから波の音聞こえたけど」

11年前

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波の音っと言われてもここは海に覆われた島国、しかも情報はゴミ捨て場のみ。 「え、待って?行くの?」 ユミちゃんの言葉に咄嗟に場所を特定しようとしたが、あの不気味な声を思い出し正気に返る。 「行く。」 なぜか真っ直ぐな目でユミちゃんは答える。 「嫌だよ。怖い。」 「でも、泣いてたよ。」 そうは言われても怖いのは確か。 しかし、このままユミちゃんが一人で行ってしまうのも怖い。私は仕方なく行くと言った。

アオトキ

10年前

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そうしているうちにまた電話がかかってきた 「わたし、メリーさん、ゴミ捨て場にいるの」 「どこの!どこのゴミ捨て場!」 ユミちゃんは電話を奪い取ると同時にそう叫んだ。 受話器の向こうから悲壮な声が返ってくる 「渋山駅の近くの…」 そこまで言って電話が切れた。 渋山駅…。 偶然にもおばあちゃんの家の最寄駅だ。 電車で30分の距離だが、母子家庭の私には通い慣れた場所だった。 「ユミちゃん、行こう」

ノナメ

10年前

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「着いたね…」 渋谷駅から近いとは言え、そのごみ捨て場は異様な雰囲気が漂っていた。 「わた、し…メリー、さん。今、捨てられている、の。」 カタコトで喋るメリーさんは、小綺麗な西洋人形でごみ捨て場に転がっていた。 人形が喋るのは、はっきり言って怖すぎる。オカルト系には関わりたくないけど、この時は怖くなかった。 だって人形がぐしゃぐしゃになって泣いているのだ。

エーデル

10年前

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もしかしたら、今迄とは違う魔法の様な不思議な毎日が始まるのかも。そんな想いが怖さより勝っていた。 でもやっぱり、拾っていいのか躊躇していた。すると、 「…メリーさんが…泣いて…る…」 その声にミユちゃんに視線を向けると、ミユちゃんは虚ろな表情でフラフラとゴミ置場の中に入り込んだ。 そしてなぜか、メリーさんを拾わずに鏡の欠片を拾い上げ、 「わたし、ミユちゃん、メリーさんに身体あげなきゃ」と囁いた。

真月乃

10年前

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その時! 「キャ─、もう止めてよ!」 「何だよ、お前が廃墟とか行ってみたいって言うから付き合ってるんじゃないか」 「言ったけど、そんな話してなんて...」 「ただの都市伝説、作り話だよ」 「つまんないから帰る!...ちょっと..あれ、焼却炉じゃない?」 本当だ。さっき怖がらせちゃったから見てきてやるか。 「ほら、何もないよ。おっ、電話だ」 「わたしメリーさん。今、貴方のう・し・ろに...」!

blue

10年前

- 完 -