忘れ花の何か。

何かが、足りない気がする。

いつもの教室。
いつもの放課後。
いつもの仲間。

いつもと変わらないはずなのに、いつもと違う感じがして。
そう、まるで、誰か1人、欠けているような。

理由はわからないけど、胸の奥の方から寂しさがこみ上げてきて、
気付いたら私は、泣いていた。

「どうしたの?」
親友が心配そうに私の顔を覗き込む。
「あれ、どうしたんだろ…わかんない」
私はそう答えるしかなかった。

戸亜留音子
- 1 -

何かを、忘れている気がする。

いつもの街並み。
いつもの夕焼け。
いつもの顔馴染み。

いつもと同じはずなのに、気持ちが落ち着かない。そう、まるで、大事なものを失くしてしまったような。

理由はわからないけれど、心の底から悲しさが溢れてきて、気付いたら、俺は泣いていた。

相棒が、心配そうに俺の顔を覗き込む。
俺は手の甲でぐしぐしと涙を拭って、
「腹減ったな、メシにしようぜ」
そう言って笑った。

申叉辰巳
- 2 -

何かを、無くした気がする。

いつもの帰り道。
いつものコンビニ。
いつもの仲間達。

いつもと同じはずなのに、切なさが止まらない。
そう、まるで、大切な何かを忘れてしまったように。

理由はわからないけど、気持ちの奥から切なさが溢れてきて、気付いたら、僕は泣いていた。

「何かあったか?」
友達が周りを囲んで心配そうに尋ねてくる。
「何もないよ」
強がって、僕は答える。

ryo
- 3 -

何かが、消えた気がする。

いつもの場所。
いつもの時間。
いつもの彼女。

いつもと同じはずなのに、心が痛い。
そう、まるで、特別な何が消えたような。

理由はわからないけど、体の中心から虚しさがこみ上げてきて、気付いたら、僕は泣いていた。

「嫌なことあったの?」
彼女が心配そうに僕の顔を覗き込む。
「大丈夫だよ」
忘れかけてた右手に繋いだ暖かさと優しさを思い出す。

tatsu
- 4 -

何かが、足りない気がした。

「ごめん……もう、帰るね」。

私は心配する親友にそう告げて、1人走った。
行き場のない寂しさを誤魔化したくて、何も考えずに体力の続く限り走った。

綺麗な夕焼けにも目を向けず、同じ学校の男子の集団を追い抜いて、公園のベンチで手を繋ぐカップルも無視して、走った。

ゆっくりと走るのをやめ、荒い息を整えながら行き着いた先は、確かにあの時、あの人と約束をした__。

そら
- 5 -

ここは……どこだっただろうか。思い出すことが、できない。

私は、僕は、俺は。
あの人を、忘れている。

この寂しさを、悲しさを、切なさを、虚しさを、これほどまでに強く覚えるほど、大切だったはずなのに──。

なぜ忘れてしまったのだろう。忘れたという感覚だけ、何かが足りないという実感だけ、忘れてしまったという痛みだけ、ここにある。

──ちゃんと忘れてよ、僕が君の前にいたこと。

忘れられない。

遠雷
- 6 -

集まったのは初対面の筈の五人だ。
ある人は親友を振り切って、ある人はメシの途中で抜け出して、ある人は友達に背を向けて、ある人はデートの途中で。
初めて会った筈の四人が口にした言葉は同じだった。

「「「「……ハル!」」」」

「忘れないよ!」
「忘れたくないんだ。」
「忘れられない…。」
「忘れるわけがない…!」

名前を呼ばれた彼は、悲しげに笑った。
「ごめんね。…ありがとう。」

凹凸
- 7 -

5人は仲の良い親友だった。家が近所で、一緒に遊んだり、今いる空き地に秘密基地を作ったりしていた。
小学校卒業を目前に控えたある日、メンバーの1人であるハルが引っ越すことになった。車で去っていくハルを、4人は泣きながら追いかけた。
“ずっと忘れないよ”と叫びながら。

ハルは4人に魔法をかけた。
彼らが悲しくならないよう、自分に関する記憶を消したのだ。
己が4人の絆を結びつけていたとも知らずに……。

ぱっちん
- 8 -

「魔法が不完全だったんだね」
彼は言った。四人の少年が目の前にいる。その目は寂しさに染められていた。ただ怒りが少し混じっていた。
「お前のこと、忘れるなんて無理だよ」
笑って言われた。だから笑って返した。
「もう、忘れてよ。忘れるから」
だからもう一度魔法を掛けることにした。誰も悲しまないように、今度は本当にしっかりと、自分の記憶も対象に含めて。彼は──ハルは笑った。

何かが──。

Ryoboch
- 完 -

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