九尾のハンは、世界の食に想いを馳せる変な性格の妖怪であった。それは何百年経っても変わらず、ハンを知る者であればそれは当たり前であった。 ハンは他人の物を気ままに掻っ攫ってゆく。それは西洋という異国の地でも、変わらぬ習慣なのだ。 森の暗い洋館の中。 「おぉ、これは美味しい…!」 「てめ勝手にプティング食うなー!」 洋館の主人である吸血鬼のエドは今日も今日とて、ハンを追いかけるのだった。
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「プティングじゃなくてプディングでしょう?てか、エド。君はその翼で飛べばいいじゃん」 あ…という呟きをハンは聞き漏らさない。 「ふふーん、もっとここを鍛えなきゃね」 ハンが自らの頭を指差して不敵に笑った時、 「じゃあ…遠慮なく!」 エドの声が真後ろから聞こえた。 「えっ⁉︎」 振り返ったハンはつまずいた。 ふぎゃ!と今日も顔面から転ぶ。 「鍛えるのはお前のようだな。そして俺のこれは“羽”だ」
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