ずーっと、一緒。
「好きな人を監禁したいと思ったことあるでしょ?」
「僕はないね」
「私はあるの。ていうか今も思ってるんだけど」
「そうなんだ」
「なんていうか、私以外の女と喋ってるのも…ううん目を合わせてるのさえ嫌なのよね」
「へえ」
「で、どう?」
「どうって何?」
「男の人って監禁されたいと思うのかしら?」
「彼氏の僕としては恐ろしいことこの上ないんだけど」
- 1 -
「何が恐ろしいことがあるの?好きな人と一日中一緒にいられるのよ?衣食住にも不自由させないわ」
「させないわ。ってお前まさか…」
ガチャリ、と僕の右手首とテーブルの脚にどこで手に入れたのか手錠がかけられた。
「私に監禁、されてくれない?」
もうしてるだろ。
「嫌だと言ったら?」
「もちろん解放してあげるわ」
「別れるけどね」
僕の彼女はずるい奴だ。
- 2 -
「もしよかったら離して欲しいな」
「いやよ」
「いやって……僕もいやなんだけど」
「私のこと、嫌いなの?」
「そうじゃなくて」
「そうじゃないなら、なによ」
「ううん…」
「私、知ってるのよ。あなたが最近可愛い女の子とよく喋ってるのを。昨日だって、あの娘と一緒にデパートへ行ったんでしょう」
「えっ?あ、そりゃあ……」
君の誕生日プレゼントに何を買ったら良いか相談してたんだ、なんて言える訳がない。
- 3 -
「私、知っているの。あなた、あの娘の隣で一緒に勉強してたでしょ?」
あれは、君が休んでいたときのノートを作るのを手伝ってもらっていたんだ。
なんて、言える訳もない。
僕にできるのは、この既に外れている手錠が掛かっている振りをして、ただ彼女が満足するのを待つのみ。
そして、僕が彼女を愛しているということを体で示すだけだ。
言葉にすると安くなる。
容易にできてしまうから。
僕はそういうの好きじゃない。
- 4 -
手錠を掛けられたことはない。
鎖をガチャガチャ鳴らしてみる。
ホンモノ?
どこで手に入れたんだ?
僕を監禁するために?
手錠の冷たさと硬さ、重さ。
彼女の中に同じものを感じる。
この女はサイコだ!
どうして今まで気づかなかったんだろう。
「とにかく、さ」
わざとらしくならない程度の笑顔と声を出してみる。
「こんな話し方やめない?君が見たことはぜんぶ説明できるからさ。外してよ、これ」
- 5 -
「鍵がないの、それ」
「どうして?」
「それ買った後、鍵だけ川に捨てたから」
最初から解放するつもりがないって、おい。というか鍵ないと僕はここに拘束されたまま。トイレどーすんだ。
「心配ないわ。あなたの為ならなんでもできるし」
だめだ彼女の脳内はサイコモードでいろいろオカシイ。目がやばい。
「あなたの瞳に私しか映らないなんて素敵だわ」
床に座り込んだ僕の顔を覗き込み、僕の額に流れる汗を拭う彼女。
- 6 -
「仮に君が僕に飽きたら、その時はどうなるのさ?」
そう聞くと彼女は意表を突かれたような表情をし、すぐ笑って見せた。
「そうしたら、鍵屋でも呼ぶか、放置ね。でも大丈夫。私はあなたに夢中だもの」
リアル放置プレイの恐れに鳥肌が立った。
「学校はどうするのさ」
「行かなくてもいいでしょ?」
「いいわけないだろ! 学費だって払ってるわけだし、将来のことだって」
僕の突然の大声に彼女はびくりとした。
- 7 -
「将来のこと、だなんて…。私との未来までちゃんと考えてくれてたのね。…嬉しい」
勘違いで泣き笑いに顔を歪める彼女。その顔に差す影が深くなる。
「大丈夫よ。学校やめても、家でも勉強して資格取れるし、自宅でも働けるわ。外に出る仕事は全部私がするから」
彼女の微笑みに、背筋が総毛立った。
「大丈夫。私はずっとあなたを好きでいるから。
あなたはずっとここにいて。…私のことを嫌いにならないで。ね?」
- 8 -
「好き…、好きよ 愛してるわ」
譫言のように呟かれる言葉に、こんな状況なのにも関わらず笑みが溢れた
彼女は僕が好きなだけなのだ
「君の、好きにすると良い」
女性特有の柔らかい髪を梳きながら僕は笑った
「ありがとう、」
そんな言葉と同時に、何故か、腹部に鈍い痛み
彼女は僕にナイフを突き刺した
「これからは…、………
視界が霞む中、彼女が狂気的なまでに純粋な微笑みを見た
- 完 -
作品情報
ずーっと、一緒。
#14864
- リレー期間
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1年3ヶ月