ひとりぼっち

「……」 「……」 「……」 会話が続かない。箸が転がってもおかしい年頃のはずのあたしたちにとっては、由々しき事態だ。 増して、机を縦に並べたまま前を向いてお弁当を食べるなんてありえない。 周りのグループはお喋りを楽しんでいるのに、なぜあたしたちはこんな状態なんだろう。 違うグループに移りたいと思うけれど、タイミングが掴めない。グループを移動するには、時間が経ちすぎた。 もう、10月なんだ。

ジュリ

12年前

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はじめは、楽しかった。というより、楽しもうとしていた。 でも、人って感情と表情が大体一致するでしょう?特に、マイナスの感情って。 感情と表情。そこに段々ズレがでてきた。 マイナスを隠すために、強引に笑顔をつくる。 つまり、不一致ってこと。 「五時間目って、実験室だよね??」 「うん、そうだよ。」 「うん。」 沈黙ばっかり。こんなのグループじゃない。 でも、ひとりは嫌。

利休生壁

12年前

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「おはよう」 いつも通りの風景に私は入っていく。いつも通りの私で。 でも、いつもなら返ってくる挨拶がその日は返ってこなかった。 同じグループの梨花と清美が、派手な女子グループの輪にいたのだ。クラスのリーダー的存在の佳菜子と楽しそうに話している。 あ………理由は分からないけど、私は仲間はずれにされた。目があってもスルーされたのがその証拠だ。 何であのグループに入れたんだろう。私は思った。

- 3 -

きっと梨花と清美は、私の悪口をネタにして佳菜子のグループに近づいたんだ。 別のグループに乗り換えた彼女たちより、 そんなことを考えてしまう自分に腹が立つ。 他のグループに移りたいなんて気持ちは消え失せてしまった。 いざ独りになってみると、あんなギクシャクした雰囲気よりよっぽど良かった。 何にも気兼ねせずにお弁当は食べられるし、 授業に集中できるし。 でもそんな虚勢も、長くは続かなかった。

山葵

11年前

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やはり、孤独はキリキリと胸を締め付ける。 たとえ沈黙であっても、友達と食べることは良いことだったのだ。 一人でいると、何より、周りから仲間はずれだと思われることが一番辛い。 かわいそーに。 そんな視線がチラホラと私に刺さる。 そして、話しかける相手のいない私には、その針は心にどんどんと穴を開けていった。 梨花と清美を見る。昨日までとは違う冷たい視線。慌てて目を伏せた。

Dangerous

11年前

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そして、その日から嫌がらせは始まった。梨花と清美のグループだった。 最初は私を見ながらひそひそと嗤う程度。しかし、それは次第に大きな声になり、それを見ていた周りの目も同情から嫌悪の目に変わっていった。 誰も、助けてはくれなかった。 …当然か。巻き込まれてまで助ける義理、あるわけないもんね。 いつしかクラスメート全員が敵だった。 視線を逃れ暴言に耐える日々。 私は下を向くことが多くなった。

haco

11年前

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毎日が、辛い。 自分が生きていても、家族以外誰も喜ばないんじゃないかと思うことが多くなってきた。 私がいたって、クラスメイトは迷惑するだけだ。 私が学校に行くのは、勉強するため。 決して、友達のためなんかじゃない。 私に、友達なんていない。必要ない。ひとりで充分だ。 むしろ、友達がいないことを誇りに思う。 だって、周りの奴らはみんなひとりじゃ怖くて仕方ない臆病者ばっかりなんだから。

noname

11年前

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一人だってやっていけるさ、一人だって…… そう言い聞かせて毎日をやり過ごす。 そんな言葉は無意味だ、とでも言うように、どんどんエスカレートしていくいじめ。 授業中にひそひそ聞こえる暴言などはBGMと化していた。 空気になってやりすごそうと思っても、それすら許されない。 最近の先生はいじめの見て見ぬ振りをする、なんてよく聞くよな、と思いながら、ビリビリに破られた教科書を鞄に入れた。

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家へのバスを待ちながら泣いていた。もう限界だった。 家と反対のバスに乗る。どこへ行くとも知れぬバスで、人生を振り返る。 鞄にはお母さんの手作りのお守り どうしてこんなことに… 死にたくない、生きたいよ -じゃあ、生きれば? 少年がこっちを向いていた。 生きていいのかな? -いいんじゃない、生きたいのなら そうだよね -好きなように なら生きてみる ひとりぼっちはもう気にならなかった。

とうま

10年前

- 完 -