恐ろしい鬼に美しい姫がさらわれる話

昔々ある所にお爺さんとお婆さんが居ました。お爺さんは山へ芝刈りにお婆さんは川へ洗濯に行きました。 お婆さんが川で洗濯をしていると川から桃が流れて来ました。しかし綺麗好きのお婆さんは洗濯に熱中していて桃に気付きませんでした。そのまま桃は鬼ヶ島まで流れていき、鬼に拾われました。 その頃お爺さんは竹薮の中で光り輝く竹を見つけました。切ってみると中でには女の子の赤ん坊が入っていて大事に育てることにしました

12年前

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鬼ヶ島では桃なんか実ったことなどありません。鬼はなんだかわからないけど,優しい色と匂いをした果実を見, 「喰エルンジャネェカ?」 鬼は大きな手でその実を掴み取り,すこしの躊躇の後,かぶりついてみました。 そのころお婆さんが家に帰るといつものようにお爺さんが背中に薪,,,ではなく女の子を背負っていました 「アーンタ何そんな土だらけのきったないとこに女の子のっけて!かわいそうじゃないのよ!」

DaigO

12年前

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鬼が桃をかぶりつくと、中から玉の様な男の赤ん坊が出て来ました。 鬼は「オオ、中カラ人間ノ子ガ出テキタゾ!ツイテルナ!ツイデ二喰ッチマエ」と思い、大きな口を開けました。 しかし、赤ん坊の可愛らしい笑顔を見てしまった鬼は、赤ん坊を食べるのをやめてしまいました。 その頃、お爺さんとお婆さんは、女の子を風呂に入れ、綺麗にしてあげました。すると、そのあまりの美しさに二人は目を丸くしてしまいました。

hyper

12年前

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鬼は男の子を育てることにしました。 と言っても、やはり人間(桃から生まれたけど)の子どもなので案の定、成長しても角は生えませんでした。 仕方がないので、鬼っぽい服を着せたついでにその辺の鬘に角っぽい木の実をつけて被せました。 一方、お爺さんお婆さんも女の子を育てることを思いつきました。 成長するにつれ益々美しくなり、そのお陰で近所では有名になって毎日覗きにやってくる者が後を絶ちませんでした。

ちどり

12年前

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やがて第二次成長期を迎えようとしていた男の子は、自分が周囲の鬼たちと姿形が違うことに悩み始めました。自分はおかしいのか、これから仲間の鬼たちとどう接していけばいいのか、日々悩みあぐねる男の子に、育てた鬼たちの心境も複雑でした。 対してお爺さんとお婆さんに蝶よ花よと育てられ、近所からも日々甘やかされた女の子は、すっかり舞い上がって傲慢な性格になってしまい、両親に反抗ばかりするようになりました。

C.K.

12年前

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そしてある日、男の子は決心すると、育ての親である鬼の所へ行き、こう告げました。 「僕は、本当の鬼になるために外の世界を旅してきます。必ず、帰ります!」 角の形をした木の実を身につけたまま、男の子は旅立ちました。 その頃、女の子は我儘放題。 あれこれ物をねだり、叶わないと近所に響く声で泣くので、お爺さん達は散財する毎日。 貯金が尽きそうになった頃、噂が流れます。 鬼は財宝を持っているらしい、と。

12年前

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男の子は旅の途中、とある噂を聞きました。「村はずれにすむ老夫婦が、娘を養うために鬼の財宝を狙っている」と。 「なんということだ!大切な財宝を!」 男の子は村のはずれへと駆け出しました。 一方の女の子も村人から噂を聞きました。 「旅の途中の鬼の子孫がこの村へ立ち寄っている」と。 女の子は考えました。 「その者を捉えれば、交換条件として財宝を山ほどもらえるかもしれないわ!」

いとのこ

12年前

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その晩、嵐が村を襲いました。 男の子が着いた時には村はボロボロで、崩れた屋根に女の子が挟まっていました。男の子が屋根を持ち上げた時、初めてお互いの顔が見えました。 財宝を奪う人間はきっと傲慢で醜いに違いない。しかし倒れていたのは大層麗しい女の子。 鬼ならば肌は赤く、恐ろしい形相に違いない。しかし目の前にいるのは逞しい体の人間の男の子。 こうして二人は出会い、村の再興が始まりました。

lawya3

12年前

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村の再興を通じて、いつしか二人は惹かれあい、色んな話をするようになりました。 そして、村が元どおりになると、二人は姿を消しました。 村では噂が流れます。「美しい女の子がさらわれた!やはりあの男の子が世にも恐ろしい鬼だったんだ!」 後日、老夫婦のもとに一枚の写真と抱えきれないほどの金銀財宝がとどきました。 写真には立派な角が生えた男の子と、財宝に囲まれてご満悦の女の子が写っていましたとさ。

- 完 -