俺と幽霊の日常

きゃああああああああああああああああああああああああああああッッッ!!!! 悲鳴が聞こえた。 一昨日引っ越してきたお隣さんからだ。 またアイツらかよ……。 アイツら、これ以上住人がいなくなると、このマンションが潰れちゃうのわかってんのかな。 そう、このマンションには幽霊が住んでいる。しかもたくさん。 とりあえず、お隣さんの様子を見に行こう。 靴を履いて廊下に出て、お隣さんのドアをノック。

ルーク

13年前

- 1 -

「あのー。なんか悲鳴が聞」 「幽霊がああああぁぁぁっっっ!」 ガチャ!ゴン! 「…っっ…ぅおぉ…」 「きゃーっ!だ、大丈夫ですか!?あと助け、たす、ゆ、ゆうれ…」 いやちょっと落ち着こ?一旦落ち着いていこ?俺もお隣さんもさ。とりあえずすげー痛いよねこれ。もう幽霊とかどうでもよくなっちゃう痛さだよねこれ。ドア当たったからね思いっきり。 しばらくして、ほとんど呻く様だったが俺はなんとか彼女に向かい、

こてつ

13年前

- 2 -

「幽霊でも見ましたか?」平静を装いつつ、尋ねる。 「あのっ、すいませんでした!とても驚いたとはいえ……そうだっ!幽霊!幽霊は⁉」 「落ち着いて」彼女の肩に手をかけ諭す。すると、段々彼女も落ち着いてきたみたいだ。 「ありがとうございました。だいぶ落ち着いてきたみたいです。……ところで、彼はなんなんですか?」みると、部屋の奥では彼女を驚かせたと思われる田島さん(幽霊)が俺に向かって手を振っている。

弥太郎

13年前

- 3 -

「…田島さん。女の子なら天国にもいっぱい居るでしょう?こんなところでナンパなんかする必要ないですよ」 「いや、天国の女はダメだ。あいつらもう死んじまってるから、男になんか興味ネェんだ。枯れちまッてる。やっぱり俺ァ、血の通った生身の女が良いよ」 田島さんはそう言って、ケタケタと笑って見せる。 彼は先の大戦で死んでしまった特攻兵の霊だ。 「現世で遊び損ねちまッた」と、こうして女の子ばかりに手を出す。

minami

13年前

- 4 -

「また騒いでんの!?大体あんたねぇ、そんなガッついてるからモテないのよ!」 「う…うっせんだよユキ!テメーこそモテてねェじゃねーか!ブース!」 天井をすり抜けてやって来たのは、ユキさん(幽霊)。田島さんとは犬猿の仲らしく、顔を合わせるとこんな感じ。大抵いつも言い負かされて逃げるのは田島さんだが。 「あら!その人が新しい入居者……ていうか、生きてんの?」 いつのまにかお隣さんは気絶していた。

nonama

13年前

- 5 -

「あ〜、おじさんまたあたらしいおねーさんいじめてる〜」 ユキさんの横から、信太くん(幽霊)が顔を出して田島さんを指さした。 「んだと!このガキ‼」 「お〜恐っ。ささ、信ちゃん、こんなおじさんと一緒にいるとバカがうつるから、向こう行きましょうね〜」 「てめえ!今何つった!ゴルァ‼」 ウチのマンションはいつもこんな感じである。 俺も最初ここに来た時は少しちびってしまったが、今はこの生活も慣れた。

hyper

13年前

- 6 -

そんなある日のこと、田島さん(幽霊)がもじもじしながら俺の部屋にやってきた。 「おい、折り入ってお前に頼みがある」 「俺糞してる最中なんで、とりあえずちょっと待っててもらっていいすか?」 壁をつっきって便所に現れた田島さんを迷惑げに睨みつつ、俺は言った。 「イチモツを見られて恥ずかしいのか、生娘じゃあるまいし。それより、ユキに男が出来たらしいんだが」 「へええ。それって幽霊?それとも生きてる人?」

13年前

- 7 -

俺は白々しくそう聞いた。 「それがよぉ、ユキの話によれば生きてる奴らしいんだ。しかも、近くに住んでて俺達にも普通に接してくれて、なんと俺とユキの共通の知り合いらしいんだ! 全く…そんな都合のいい奴が居るかってんだよな?なぁ?お前もそう思うだろ?」 「そ…そっすね」 良かったぁ! 田島さんが田島さんで良かったあ!!! 「ねぇねえ、それって…」 そう言いながら姿を表したのは信太くんだ。 やべぇ…

- 8 -

「お兄さんの事じゃない?」 「俺⁉」なんてこった! 「だって、あの後お兄さんの話ばかりしてたよ。」信太くんがそう言うと、 「あの…」突然ユキさんが現れ、 「ずっと貴方の事が好きでした。」 いきなり告白された。だが、 「生憎、俺は生きてる女にしか興味無いんでね。」そう言うと、ユキさんは泣きながら消えていった。 あれから幽霊達は来なくなった。なんだか心に穴が空いたような感じで寂しい今日この頃だ。

Dr.K

13年前

- 完 -