美人作家の苦悩

「あああああぁぁ!!面白い小説が書けないわあああぁぁ!!!」 急に発狂したのは、高城裕子先生。今大人気のBL作家だ。 「おおぉ…男!男が必要なんだよぉぉ!こんな家に閉じこもってばかりの生活で、いいBLが書けるかっつーんだよ!畜生!」 いかん、先生のホルモンバランスが…。折角の美人が台無しだ。 仕方ない、ここはアシスタントの僕が、何か気晴らしになるようなことを提案しよう。

斉藤紺

13年前

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「先生」 「なに」 声色が黒い。 苛立ちのせいだろう、煩悶のうねりに揉まれてのっぴきらない状態にあれば誰だってデリケートになる。 僕はやんわりと、 「実際にリアルな男とLOVEしてみたらいいんじゃ...って危ねえ!」 琴線に触れたかしら? 豪速で投げられたガチムチの男性フィギュアが壁にめり込む。 避けていなければ持っていかれてた。 「閉じこもっているから男がいな、いん...あ、いた」 え、僕?

13年前

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「あんた、私に男を教えなさい」 意味がわからない要求をされたが 先生の目は本気だ。 しかし僕は彼女居ない歴=年齢の 冴えない専門卒のヘタレ野郎であって その役割は荷が重過ぎますよ。先生。 「…無理です」 またフィギュアが壁にめり込んだ。 「やれっつってんだろぉ…!?」 「は、はひ…」 いわゆる、万事休すだ。 「…じゃ、明日デート行きましょう…か?」 その言葉が、今の僕の精一杯だった。

minami

13年前

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「先生、状況がまるで分かりません」 「デートに何か不満?」 噴水前で待ち合わせというベタな始まり。 デートにと誘ったのは僕だが、現在ここには僕含めて三人いた。 一人は言わずもがな、稀代の売れっ子BL作家高城先生。 そしてもう一人は、全く面識のない大学生の男の子だった。 高城先生の同級生の弟で、強引に連れて来たそうだ。 「しっかりデートするのよ。二人でね」 尾行してるからと言って先生は去っていく。

ムラサキ

13年前

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とりあえず、街中を歩き始めた。 「あの〜、僕、『そっち』の方は興味無いんですけど…」 「俺も…」 「そちらは、何故こんな事に?」 「…ちと、借りがあってな…」 相手は、二本指で輪を作った。 「なるほど…」 「で、どうします?」 「知らん…」 「ですよね…」 「とりあえず、何処かで時間潰します?」 「う〜ん…」 行くあても無く街中を彷徨っていると、携帯の着信が。 案の定、先生からだった。

hyper

13年前

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「真面目にやんないと原稿書かないわよ」 地を這う声で脅されて、返事をする間もなく切れる通話。携帯を閉じた僕は、腹を決めた。心配そうな隣をよそに先生の作品を猛スピードで思い出す。 思い出せ、先生の萌えポイント…! 「あのっ!」 「はい?」 「…っ、その、手、繋いで…?」 必殺!上目遣い裾掴みおねだり!! 背後から、壁に頭を打ち付けるような音がした。どうやら萌えポイントど真ん中だったらしい。

かえで

13年前

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「…じゃあ、行くぞ」 大学生の彼は、少し強引に僕の手を引いた。意外と力強くて、引っ張られるように歩き出す。 小洒落たカフェに入ると、先生からの指示で、横並びのソファ席に座ることに。 男二人ではさすがに狭くて、体の側面がぎゅっと密着せざるをえない。コーヒーに手を伸ばそすと、彼が身じろぎする。 「ご、ごめ…」 「あ、ああ」 後ろの席から、期待に満ちた先生の視線が。

13年前

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あのー先生? 流石にそんなに見られると、めちゃくちゃ恥ずかしくなってくるんだけど… いつもは男同士で飲む、ということに意識なんてしないのに、デートという名目でこの人と一緒に居るからか、二人して意識しまくっているのが分かる。 あーマジで恥ずかしい…!! ちらり、と横を見ると隣の彼と目が合って二人してさっと赤面する。 …まぁ、その直後に先生と目が合ったから、その雰囲気は台無しになったんだけど。

riku

13年前

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…しかし、ずっと恥ずかしい状態でいると、何か変な気持ちになってきた。 よくみると彼の横顔はなかなか男前だ。恥ずかしそうな表情も可愛らしく感じてしまう。 周囲の刺さる様な視線も痛みからだんだん快感に変わっていく様な…… 悶々として…ふと、先生の方を見ると… あれ…………居ない⁈‼ すると、携帯にメールが… 「いいアイデアが浮かんだから帰るわ!あとは二人きりでごゆっくり……(笑)」

battamon

13年前

- 完 -