俺には名前なんてない。俺に名前をつける前に両親は死んだし、管理官も俺を識別番号でしか呼ぶ事はなかった。No.7362番。施設ではそれが俺の名前だったが、それももう呼ばれる事はないだろう。だって施設は焼失したのだから。いや、焼失させた、という方が正しいが。 ともあれ、これでゲロを食べさせられる事も、人のツバを飲ませられる事も、便所を舌で掃除する必要もない。 あとは施設の関係者を、八人殺すだけでいい。
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さてと。この施設は"あの"施設だから人を殺すための道具は充実している。 折角だ。普通に殺すのは勿体無いしつまらない。一人一人に似合った残虐な殺し方を提供しよう。あとはトリックも考えないと。 これはただの人殺しではない。俺の復讐劇なのだ。俺の舞台なのだ。 1人目。 口にはガムテープ。首吊り死体。窒息死であることは間違いないがどちらが先かは分からない。両手は硬く握られていた。
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施設から持ち出した道具で1人目を殺した。焼失した施設の後に別の施設で働き始めたのを調べ奴の家の近くの公園の便所に置いてきた。俺の屈辱はこんなものではないが。 2人目。こいつは俺にゲロを食べさせた。拉致した後、胃に管を通してそこから流動食を与えた。しかし口にはガムテープ、吐き出せない。こいつはやがて自らの吐物で死んだ。 つぎは誰にしようか。
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次は唾を飲ませたアイツだな。奴の舌を火炙りにし、唾さえわかないよう、舌を乾ききらせてやろう。 いた。暢気にトイレに入りやがった。個室とは運がいい。 俺は無防備な奴に対し、前の二人にやったのと同じ手口で拉致しようとした。しかし、何者かが俺の背後を襲った。 奴の仲間だった。あいつもリストに名を連ねている。仲間の死におびえ、俺を反対に捕らえようとしていたというわけか。俺としたことがぬかった。
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現れた仲間。 そいつは汚れた便器を俺の舌で舐めさせやがった奴だった。 頭髪を掴まれ、汚物のこびり付いた便器に顔を突っ込まされた時の屈辱は、この野郎を殺しても決して忘れないだろう。畜生以下のクソ野郎め。 俺は身を翻し、奴を抑え込む。 そして奴の舌を、隠し持っていた裁ちバサミで遠慮なくで切断した。 神経に耐え難い痛覚が走ったのか、奴は全身を痙攣させて窒息死。実にいい気味だ。 さて、もう一人か…。
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個室から出てきた奴は想定外の事態に怯えていた。それでも容赦しようという情はない。 口の中にバーナーを突っ込み、予定通りに点火する。 どうだ、苦しいか。俺はもっと苦しかった。それでも、最後の慈悲をくれてやろう。水だ。便器の汚水を腹一杯飲むが良い。 便器に顔を深く突っ込んで息絶えた無様な死体に唾を吐く。 まだまだ終わらない。 いや、終われない。 残っている奴らは、俺にもっと酷い仕打ちをしたのだから。
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次はあいつだ。 今まで殺した奴らを仕切ってた、ボス的存在。 絶対に許せねぇ。 車に乗ろうとしていた所を捕まえた。 睡眠薬を注射し、眠らせ椅子に座らせる。 目を覚ました。 こいつのナニをつかんで、尿道にアイスピックをゆっくり挿れた。血が滴り落ちる。 次はかかとで睾丸を踏む。 全体重をのせて一つを潰した。 刺さっていたアイスピックが勢い良く飛び出し血が吹き出る。 あまりの痛さでショック死。
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あと2人。 俺がとある建物の一角へと向かうと、奴が金庫を開けてほくそ笑んでいた。 そう、施設の管理官だ。 俺は奴が他の奴等に指示して俺を虐めさせていた事を知っている。 しかも、奴は俺達を闇ブローカーに売り渡し、多額の金を受け取っていやがる。 俺は奴が背中を向けている間に背後から忍び寄り、盗んでおいた金塊で撲殺すると、金庫の金を床にバラ撒いた。 あの世で一生好きな金を抱いてろ。 最後は…
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悪の根源、施設長。 こいつが施設を作ったせいで俺は普通の生活ができなかった。もし施設が焼失していなければ俺は今頃虐め殺されていただろう。 さぁ、どんな殺し方をしようか。これで最後かと思うと名残惜しい気もする。 施設長を探していてハッとした。施設があった場所に戻り確認する。 奴は死んでいた。 俺が火をつけたのは奴が月に一回見回りに来る日だったのだ。 くそっ。 虚無感が男を包み込む。
- 完 -