ヘイドアウト街

ヘイドアウト街。 犯罪者や前科者が漂い、私利私欲が溢れたこの汚い街を、裏社会ではそう呼ぶのだった。 ルイスは愛用のマシンピストルを、一人残された男の眉間に突きつけた。あたりは血の海である。 依頼主は金もくれたし、この武器保管庫の物は好きなようにと仰せになった。太っ腹なことだ。 「さあぁてぇー、楽しい嬉しい殺しの時間だよぉ」 「ひいっ」 「なんだよぉ。俺に殺されんの不満だってえぇのぉ?」

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「たっ、頼む…!どうか命だけは、助けてくれ…!」 「あははは!なにそのドラマのテンプレみたいな台詞。ねぇおっさん、今まさに死ぬって時にそんな言葉しか出てこないのぉ?」 男はがたがた震えながら、恐怖のあまり失禁しだした。 ルイスは男の鼻に触れるほど顔を近づけると、真顔で言った。 「そんなんだから、こんなゴミ溜めみたいな街でしか居場所がないんだよ。生きている価値のない人間はさっさと死ぬべきだ」

sabo

11年前

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「…………プッ」 沈黙の末、男は笑った。 「プハハハッ!」 男は笑い続ける。 「ありゃ〜、死に直面していかれちゃった?」 可哀想に〜、でもすぐラクにしてあげるからね〜と笑いを噛み殺すルイス。 「…可哀想な奴は貴様だよ」 「何?」 異なる雰囲気を醸し出した男にルイスは声を低める。 「略奪のジャスティス。聞き覚えはねえか?」 「っまさか⁉︎」 「貴様の鼻持ちならねえ根性叩き直しに来てやったぜ」

ゆりあ

11年前

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-その昔ヘイドアウト街が無法地帯と化して間もない頃、幼いジャスティスは殺し合いの現場を目撃してしまった。唯々恐ろしくてその日から自身を守る為に訓練を重ねていった。 「…じゃあな」 そう呟きながらルイスが持っていたピストルを素早く奪って額に銃口を向けた。まさに形勢逆転だ。 パンッ! ルイスはその場に倒れ込み、辺りが血の海となった。 これが“略奪のジャスティス”と呼ばれる男のやり方だった。

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如何にも簡単な片付けられそうな様で相手の油断を誘う。そして一発で仕留める。 相手をだらだら嬲るのは時間の無駄だ。そういうことをしていては、いつかやられる。 ジャスティスはルイスの懐から札束の入った分厚い封筒を抜き取った。保管庫のお宝を車に積んだ後、建物に火を放つ。こうして、大した苦労もなく荒稼ぎをするのだ。 さて、次の獲物は誰だ。 車のライトがヘイドアウト街の闇に消える。

misato

10年前

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「羽振りが良いなぁ、ジャスティス。」 「っ! その名で呼ぶなって言ったろう!」 慌てて店内を見渡したが心配は無用だった。ケチなバーテンが1人で切り盛りする店にいる客は自分1人しかいない。 「いい仕事があったみたいだな。」 静かに微笑むバーテンはジャスティスが心を許せる数少ない人物だ。ゴミ溜めみたいな街にも大切な人はいる。 だからこそこの街を出る事は出来ない。‘‘略奪のジャスティス’’は健在だ。

コウロウ

10年前

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「その通りさ。なかなか殺しがいがあったぜ。さらに相手の依頼人は大富豪のダビッド氏ときてる。お宝奪い放題さ。」 「それは良かったな。」 段々気持ちがほぐれてきた。カクテルを注文した。バーテンが作るカクテルは最高だ。 いきなり全身の細胞が痛みが駆け巡った。。 「ううっ。」 何が起きたというのだ。 「即効だったぜ。」 バーテンの声だった。 なぜだ、なぜなんだ?

neutral

10年前

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「裏切り」裏切られない保証はない。神経毒かっ・・・!カランコロンと銅製の鈴が客の来店を告げる。「マスター、いや、ドクターマルクス!」 「よう、ルイスか!」 朦朧とした意識の中、呟く。「ルイス?死んだ筈じゃ・・・」「影武者さ。マスターに頼んだんだ。知らねえのか?マスターは腕の立つ美容整形医なんだぜ?」拳銃を突きつけられる。「店を汚さんでくれよ?」「心配はいらん。代償は死で払え!」乾いた銃声が響いた。

江口鬼扇

10年前

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倒れたジャスティスを見て、バーテンとルイスはにやりと笑う。その時だった。 銃声が響き、二人の胸に銃弾が突き刺さった。 「だ…誰だ…」 息も絶え絶えながらルイスは振り向いた。そこにいたのは一人の少女。 「私の反対を押し切って、兄は貴方の影武者を引き受けた。昔命を助けられたからって。でも貴方は兄の死を何とも思っていない!」 そして再び銃声が響いた。 ここは何が起きてもおかしくない街、ヘイドアウト街。

Piano

10年前

- 完 -