エドは森の洋館に住む、吸血鬼だ。 その名は西洋で知らぬ者はいない。 どんな女でも彼の巧みな手腕によって落ちてゆく。 容姿とその実力も手伝って彼は自分に自信を持っていた。 そんな彼には奇妙な友がいる。東洋にいる九尾という妖怪。 九尾は食通であった。 今では友だがその出会いは酷かった。 出会い頭にハンが言ったのだ。 「血が主食とか馬鹿なんですか」と。 完璧な吸血鬼の、負けず嫌いの、彼にだ。
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「私、そんな事言いましたっけ?」 「言ったぞ。俺は覚えてる」 「いいえ。『血が主食だなんて蚊みたいな事を仰るのですね。それにしてもよくぞここまで美丈夫に成長なさいました。どんな奇跡ですか』とは言いましたが」 「そっちの方がよほど酷いセリフだな」 「もう済んだ昔話はどうでもいいでしょう」 「はあ?忘れたとは言わせねえぞ」 俺の三大事件の一つだからな、あれは。 超意地っ張りなエド。何とハンに
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無茶な勝負を挑んでしまった。 「絶対に思い出させてやる。忘れるなど…ハンよ、馬鹿は貴様だと思い知らせてやるからな」 「ほほう、では勝負をしましょう。7日の間に私に思い出させる事が出来れば私の負け。私は九尾を名乗る価値もない大馬鹿ということになりましょう」 「よし乗った。ならば九尾、思い出せなければ貴様の尾を頂くぞ」 「ご随意に。ただし、私も、思い出せたなら貴方のその両の牙を頂きましょう」
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