花のキューピット

あるところに、花の妖精が住んでいました。 彼女には、仲良くしたいと思っている男の子がいました。 けど、まだ一度も話しかけたことがありません。 花の妖精の寿命は花と同じ。 彼女に残された時間は、あと三ヶ月です。

リベー

13年前

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男の子は、良く妖精の住む花畑にやってきて絵を描きます。妖精は隠れてそっと見ているだけです。声をかける勇気が出ないのです。 男の子は今日もやって来ました。 妖精は花の影から、男の子の描いている絵をこっそり覗きました。絵の中では、男の子と女の子が仲良く手を繋いでいます。きっと男の子はこの女の子のことが好きなんだろう。そう妖精は思いました。

竹千代

13年前

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男の子はとても内気で、他の子と話すことが苦手でした。もちろん、絵の中の女の子とも話したことはありません。だから花畑で一人、絵を描いているのでした。 男の子はその女の子と仲良くなりたいと思っていました。しかし、話しかける勇気がありません。 「君達にはこうやって話しかけることが出来るのに」 花達は喋らないから。男の子は心の中では分かっていました。 「どうすればうまく話すことができるのかな?」

13年前

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「その子に絵を描いてあげたらいいのに…」 妖精は小さく呟きました。 本当は少しでも男の子の力になりたかったのですが、自分声が届かないことは知っていたのです。 「僕だって、一緒に笑ってお話ししたいんだ。でも、あの子が前だとどうしても出来なくて…」 男の子は妖精の隠れていた花をそっと撫でました。 「君みたいに綺麗な赤い頬なんだよ」 まるで自分に向けられた言葉のようで、妖精の胸は大きく跳ね上がりました。

13年前

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男の子は、ため息をつくと、花畑にゴロリと寝ころびました。そして、スヤスヤと眠りについてしまいました。妖精は、彼の寝顔をしばらく眺めたのち、羽を広げて、飛び立ちました。女の子に、彼の気持ちを伝えてあげようと思ったのです。

noname

13年前

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妖精はがんばって女の子を探しました。でも、どこにも見当たりません。妖精はしょんぼりしながら、公園に咲いている花の上で休むことにしました。

Hitomi.K

13年前

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やがて一人の女の子が公園にやってきました。あの男の子が絵に書いていた女の子に、何だか似ていると妖精は思いました。 女の子は妖精が休んでいる花の前までやって来ると、手を振って妖精に挨拶をしました。 「こんにちは、妖精さん」 妖精は驚き、思わず聞き返しました。 「私が見えるの!?」 女の子はにっこりと微笑みました。 「うん。私、妖精さんとお話しするのが大好きなの」 妖精も、にっこりと微笑みました。

lightmain

13年前

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妖精は早速、彼のことを話さなければと思いました。 しかし、もし二人が仲良くなってしまったら、もう男の子は自分に話しかけてくれなくなるんじゃないか… ふと、そんな思いが頭をよぎりました。 彼を、取られたく、ない。 妖精は戸惑いました。 こんな気持ちは初めてです。 二人に仲良くなってほしかったはずなのに… 「どうしたの?」 女の子は不思議そうに、こちらを見つめています。

Hamaar*

13年前

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妖精は勇気を出して彼女に彼の気持ちを伝えました。彼が話しかけてくれなくても、彼が幸せならば。彼の事、知っているすべてを話しました。彼女はわっと泣き始め、 「私も、私も彼とお話したいと思ってたの、私も彼が、彼も同じ気持ちだったなんて」 これでいいのだと思いました。 そして、彼女に誘われ妖精は彼と3人で残りの3ヶ月を生きました。 3ヶ月後、彼の完成した絵の中に妖精もいます。妖精は思い出になったのです。

カッツェ

13年前

- 完 -