月の掃除夫モンティの詩集
月の掃除夫モンティは眠る
人の夢が蓄えられた岩の影
希望の月光を集めるために
塵取り手にして砂をすくう
月の掃除夫モンティは眠る
蜘蛛の巣かかる満月の夜中
優しさのカタチを作るため
箒星一つ手にして糸をくる
月の掃除夫モンティは眠る
お好きな詩を書いて下さい
宵の月に願いを込めながら
シャボンをモップで描こう
- 1 -
愛染明王の顔相有りの侭に
火宅現世娑婆様言葉有れど
座礁し櫓櫂船に我は唯独り
堕落した蜜壺は只管に甘美
難攻不落と憶しき彼方国の
覇王別姫の如く舞い後自決
欺瞞戦争の真実此処に在り
ヤーヌス過去未来二面の顔
螺鈿の鈍き耀き遠く遠くへ
戦慄き騒ぎ笑う事限り無し
- 2 -
貘なるケモノあらわれた
悪夢を喰らうは生きるため
翌朝すっきり目覚めても
もやもやするのは貘のせい?
不安の味を知りながら
貘はそれでも生きていく
不安の味を忘れても
私はそれでも足掻いてる
悪夢を喰らう貘
命果てるまでアクを喰らえ
救われないアクを喰らえ
- 3 -
天天くるり青はとろりと
昊は何回泣いたのか
桃色の雲を掻き混ぜて
紫の故意に飛び込んだ
橙色の恋の芽生えも
果てぬ浅葱の夢見し君なら
さあ弾けて跳んだ虹の蜘蛛
嗚呼ふわりと消えた銀の象
どろりと溶けて固まった
宇宙の蜻蛉の飴玉ひとつ
君が為なら成せぬことなど
- 4 -
昨日の私には何があるのか
何もせずに過ぎてゆく失敗
偶然の産物がもたらす成功
どうしても変えられぬ結果
今日の私には何があるのか
考え抜き体験して来た過程
足が立ち竦んでしまう不安
未来へとつなげられる希望
明日の私には何があるのか
手探りで進む将来への恐怖
夢へと一歩ずつ進める知識
閉ざされた扉を開ける勇気
- 5 -
砂を掴んで投げれば良い
明日は泥濘に浮かび来る
小さな茨冠は立ち行かぬ
ざらりとした掌には残熱
粉を掴んで投げれば良い
昨日は白濁へと沈み行く
か細い断末は届きゃせぬ
ざらりとした蹠には春風
灰を掴んで投げれば良い
今日は沙霧にゆらゆらと
あえかな灯はとらえ得ぬ
ざらりとした唇には静寂
石を掴んで投げれば良い
見果てぬ夢など幾らでも
生きるとはかくも容易く
比ぶ由もなく難解な絡繰
- 6 -
群青無限の空はわらった
紺碧の天いざ駆けゆけと
縹にきらめく水に泳げと
さあ始めよう青色の旅路
暗闇かくした錆納戸には
瑠璃紺紺瑠璃織り交ぜて
秘色の宝は鉄紺にねむる
鉄鼠の知る灰青のゆめを
薄花桜の季節が過ぎれば
淡藤揺れて桔梗をさそう
花をうたおうかきつばた
紅掛花色うつくしきかな
白から薄らと白藍色付く
指折り数えて漆黒までを
勿忘草のことのはたちが
千代に連なる青碧蒼アオ
- 7 -
音があふれるこの世界
例えば人の歩く音
てちてちペタペタたっかたか
その日の気分で変わるもの
音があふれるこの世界
例えば楽器の演奏中
ジャカジャカドンドンパーンポロン
いろんな音が混じり合う
音があふれるこの世界
例えば雨の落ちる音
ポツポツパラバラザーザーザー
音で強さがわかるよね
音があふれるこの世界
何も聞かない時はない
耳をすまして聞いてみて
新たな音が見つかるよ
- 8 -
怪物が
決められた同じ服を着た生徒を
丸呑みするくらいの勢いで
飲み込んでひと吠え
くだらない聖職者の話を
偽善者ぶって相槌打って
気まぐれに怪物が鳴くのを
時計を睨みながら待ち続ける
くだらない同級生の話を
ばれない程度にこっそりと
わかりやすい笑顔を顔に
貼り付けて聞くだけ
それでも
それなりに充実してるんです
それなりに楽しんでるんです
何故か嫌いになれないんです
怪物のお腹の中は
- 完 -
作品情報
月の掃除夫モンティの詩集
#10042
- リレー期間
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3日