月の掃除夫モンティは眠る 人の夢が蓄えられた岩の影 希望の月光を集めるために 塵取り手にして砂をすくう 月の掃除夫モンティは眠る 蜘蛛の巣かかる満月の夜中 優しさのカタチを作るため 箒星一つ手にして糸をくる 月の掃除夫モンティは眠る お好きな詩を書いて下さい 宵の月に願いを込めながら シャボンをモップで描こう
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愛染明王の顔相有りの侭に 火宅現世娑婆様言葉有れど 座礁し櫓櫂船に我は唯独り 堕落した蜜壺は只管に甘美 難攻不落と憶しき彼方国の 覇王別姫の如く舞い後自決 欺瞞戦争の真実此処に在り ヤーヌス過去未来二面の顔 螺鈿の鈍き耀き遠く遠くへ 戦慄き騒ぎ笑う事限り無し
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貘なるケモノあらわれた 悪夢を喰らうは生きるため 翌朝すっきり目覚めても もやもやするのは貘のせい? 不安の味を知りながら 貘はそれでも生きていく 不安の味を忘れても 私はそれでも足掻いてる 悪夢を喰らう貘 命果てるまでアクを喰らえ 救われないアクを喰らえ
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天天くるり青はとろりと 昊は何回泣いたのか 桃色の雲を掻き混ぜて 紫の故意に飛び込んだ 橙色の恋の芽生えも 果てぬ浅葱の夢見し君なら さあ弾けて跳んだ虹の蜘蛛 嗚呼ふわりと消えた銀の象 どろりと溶けて固まった 宇宙の蜻蛉の飴玉ひとつ 君が為なら成せぬことなど
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昨日の私には何があるのか 何もせずに過ぎてゆく失敗 偶然の産物がもたらす成功 どうしても変えられぬ結果 今日の私には何があるのか 考え抜き体験して来た過程 足が立ち竦んでしまう不安 未来へとつなげられる希望 明日の私には何があるのか 手探りで進む将来への恐怖 夢へと一歩ずつ進める知識 閉ざされた扉を開ける勇気
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砂を掴んで投げれば良い 明日は泥濘に浮かび来る 小さな茨冠は立ち行かぬ ざらりとした掌には残熱 粉を掴んで投げれば良い 昨日は白濁へと沈み行く か細い断末は届きゃせぬ ざらりとした蹠には春風 灰を掴んで投げれば良い 今日は沙霧にゆらゆらと あえかな灯はとらえ得ぬ ざらりとした唇には静寂 石を掴んで投げれば良い 見果てぬ夢など幾らでも 生きるとはかくも容易く 比ぶ由もなく難解な絡繰
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群青無限の空はわらった 紺碧の天いざ駆けゆけと 縹にきらめく水に泳げと さあ始めよう青色の旅路 暗闇かくした錆納戸には 瑠璃紺紺瑠璃織り交ぜて 秘色の宝は鉄紺にねむる 鉄鼠の知る灰青のゆめを 薄花桜の季節が過ぎれば 淡藤揺れて桔梗をさそう 花をうたおうかきつばた 紅掛花色うつくしきかな 白から薄らと白藍色付く 指折り数えて漆黒までを 勿忘草のことのはたちが 千代に連なる青碧蒼アオ
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音があふれるこの世界 例えば人の歩く音 てちてちペタペタたっかたか その日の気分で変わるもの 音があふれるこの世界 例えば楽器の演奏中 ジャカジャカドンドンパーンポロン いろんな音が混じり合う 音があふれるこの世界 例えば雨の落ちる音 ポツポツパラバラザーザーザー 音で強さがわかるよね 音があふれるこの世界 何も聞かない時はない 耳をすまして聞いてみて 新たな音が見つかるよ
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怪物が 決められた同じ服を着た生徒を 丸呑みするくらいの勢いで 飲み込んでひと吠え くだらない聖職者の話を 偽善者ぶって相槌打って 気まぐれに怪物が鳴くのを 時計を睨みながら待ち続ける くだらない同級生の話を ばれない程度にこっそりと わかりやすい笑顔を顔に 貼り付けて聞くだけ それでも それなりに充実してるんです それなりに楽しんでるんです 何故か嫌いになれないんです 怪物のお腹の中は
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