ザ☆布団で誕生日祝われる俺は定冠詞に呪われている。

布団に 定冠詞theをつけると座布団。 なんだか凄そうだな、と思った。 いっそのこと☆を付けて ザ☆布団としてはどうだろうか。 布団の究極進化形が座布団なんだろうか それとも布団エリートの意だろうか。 そんな事を考えながら 僕は学食でフォークにパスタを巻きつけ もふもふと食べながら 待ち合わせに遅れてきた彼女が あたふたと学食に入ってきたのを見ていた。 「ごめんごめん、遅れちゃった。」

kagetuya

13年前

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「考え事でもしてた?」 俺の向かいに座りながら、彼女がそう聞いてきた。 「何で?」 「なんだか難しそうな顔してたから」 僕は一瞬座布団のことを言おうか迷ったが、やめておいた。 どうせバカにされるのがオチだ。 それよりも、僕達には話し合わなければいけないことがある。 「最近、弘樹と仲良いらしいな」 そう切り出すと、さっと彼女の顔色が変わった。 「どういう意味よ」

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ここで優位に立つため 「まず言っておくが、俺の情報網をあなどるなよ」 少し脅しておく。 「何なのよ一体」 不安そうな顔、効果は上々だ。 「昨日、弘樹とお前が2人で会ってるのを見た人物が居まーす」 しばし沈黙 からの笑顔 「ザ☆嫉妬!って感じ?」 何て笑顔だ。その笑顔が大好きって言ったっけな。いやまだ言った事ないな。言ってみようかな。そんな場合じゃない。 ん?今「ザ」って言った?偶然?こわ!

tuzura

12年前

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「誤魔化すなよ」 「え〜、だって〜」 こっちは真剣に話してるのに甘ったるい、鼻にかかった声で 応えて。俺は怒ってんだぞ。 「でもさ、私が何処で誰と会っててもいいじゃん」 むむ、なんだ開き直って、弘樹と会ってたの認めたようなもんじゃないか。 「開き直ってなんか無いよ」 おかしい。何で僕の思ってること分かるんだ?まさか超能力者? 「違うし、さっきからあんた声に出てるよ」 「どこから?」 「座布団から」

nyanya

12年前

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「えっ⁉︎」 俺は慌ててケツを上げると、そこにはマイクの絵柄が描かれた座布団が敷いてあった。 『これが?って、声出てるし!』 辺りを見回すと、他の学生が皆、必死で笑いを堪えていた。 『まさか、座布団の事も聴こえてた…っておい‼︎』 俺は座布団を掴み、地面に叩きつけた。 「じゃ、もう話は終わりね」 「あ、ちょ、ちょっと待って!」 彼女はツンとした顔で立ち上がり、去って行ってしまった…。

hyper

11年前

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心の声が構内放送になっていた恥ずかしさと、彼女にあしらわれたダブルパンチで汗が止まらない。 動揺で思考がオーバーヒート気味だけど、まだ弘樹とのこと明確に解決してないよな? そこに気付いて我に返った俺はまだ追いつく距離の彼女を呼んで振り向かせたけど。 「話は終わりって言ったよね?いちいち束縛してくるようなら別れる。今日でジ☆エンド」 ちゃんと定冠詞に母音の音を被せて彼女に言い放たれた。

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俺は苛立ちを座布団にぶつけた。思いっきりぶん殴ってやると ゴンッ という低い音がした。まるで本物のマイクを殴ったようだ。俺の手の方が痛くなった。 涙目になってうずくまっていると、 「ちょっと、大丈夫?」 去ったはずの彼女が声をかけてきた。ふっ、哀れみならよしたまえよ。 「ああもう、面倒だから私がこの座布団に座ってみるわ。私の心の声を聞けばいい。それで気に入らなかったらキッパリ分かれてよ、ね?」

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私は座布団に座った。 まったく手がかかるんだから。弘樹にはちょっとあなたのことで相談に乗って貰ってただけ。 『…………』 「…………って、君の心は無か!」 あれ、おかしいな。 「君は、僕を馬鹿にしているのか?」 「なんだかこのザ☆布団がおかしいのよ。乱暴に扱うから壊れちゃったのかも」 「もういい、何も聞きたくない」 「待って!」 「俺に構うな」 まったくもう。 「誕生日、おめでとう」

トウマ

8年前

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「あ…?誕生日?」 「何よ、まさか忘れてたの?」 彼女が俺にプレゼントを差し出した。 それはやけに四角で、触り心地は柔らかい。 「ま、まさかお前……」 「ん?素直に喜びなさいよぉ」 彼女のドヤ顔など気にも止めず俺はプレゼントの包装紙を破り中を出す。 「これは………………」 怒りとも落胆ともいえる、形容し難いこの気持ちを、俺は何と呼べばいい? やっぱり 「やっぱり座布団じゃねーか!!!」

都塚

8年前

- 完 -