何これ・・・・・・ 朝から私は混乱していた。なぜなら目の前に部屋を埋めつくすような巨大な荷物があるからだ。 「どうやって運んだんだろ、これ」 そんな間抜けな感想しか浮かんでこない。 というか、こんな物頼んだ覚えすらない。 そんな朝一から頭痛の種を供給してくれる荷物の表面に 『なりきり変身セット』 という文字が見えた。
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益々ワケがワカラナイ…。 全く覚えが無い。配送ミスで送り返そうかとも思ったけど、送り主も配達業者も何もかも不明。 こんなことって…まるでドラえもんみたい。 なんて、また間抜けな感想しか思い浮かばない自分がちょっとイヤになる。 それに…最早…開封したい気持ちが沸々と湧き上がって困る。 特に変身願望なんて自分には無いと思ってたけど、何だか商品?のネーミングがセンスは兎も角として、魅惑で誘惑的だ。
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え〜い!───ビビッ! ガムテープを一息にはがす。あ、開けちゃった!だって中に伝票とかあるかもだし。 やだ、なんだこれ。怖い。ミイラの棺みたいな人型の物体。 『なりきり変身セット』とあるからには用途は明らかだ。 これに入ると何かに変身する。とか? いやいや?使わない!あり得ない!メタリックな素材で未来の道具感いっぱいだけど棺か鉄の処女みたいなの使っちゃダメ。 伝票の類を探せ! 取説だ・・・
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「カプセルに入って中から蓋を閉めれば、たちまちスーパーヒーローに変身できます。」 取説…とは言い難いA4のペラ紙一枚には、それだけが書かれていた。 え?なにこれ。保証書とかも無いの? 「これに入って…か」 正直私は幻滅した。 変身アイテムというからには、可愛らしいブレスレット的なモノを想像していたからだ。 でもやっぱり使ってみたいなぁ…。 …変身しちゃえ。 ええと、カプセルに入って…、と。
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私がカプセルの中に落ち着くと、蓋が ぷしゅう と音を立てて閉まった。出る時はどうするんだろう、コレ。 そして目の前にホログラムの文字が現れた。 『ようこそなりきり変身セットに!この装置を貴方が気に入りなヒーローの可能性がなるできる。口で選択肢を発音すれば完璧な!』 …うわっ、なんじゃこりゃ。日本語がおかしい。日本で作られたものじゃないのかな? 『1番目で制服を選ぶ。』 どれどれ…。
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『ヒーローと思われるためにあなたの選んだ制服を区別しなければいけない。サンプルは用意されている。いくつか、あなたは選ぶ。サンプルから一枚をとって、装着することで完成する』 とにかく、選ぼう。 青いピチピチスーツ、フリル付きのドレス、フルメットタイツ・・・ 魔法少女はないな、と笑うと、それが選ばれてしまった。そういう仕様だと理解してなかったから! 魔法少女コスになってしまった。
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20代後半にもなってこんな服装する羽目になるとは…。 『では次でしょう。あなたはヒーローの持つアイテムを選ぶ』 …とりあえず、この服装に合うものにしないとおかしいわね。 何かないかな…。 鎖付き鉄球、マシンガン、手榴弾、斬◯剣… …何だよこの武器は‼︎ 魔法少女関係ねーじゃん‼︎ 戦争でもしにいくのか⁉︎ 他には…あ、あったあった。 ステッキ(玩具)、コンパクト(玩具) …おい。
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玩具じゃなぁ…と思ったが、マシンガンや手榴弾よりはマシだろう。そう考え、ステッキを選んだ。 『では次。あなたは自分の必殺技とその際のポーズを選ぶ』 ポーズもいるのかよ!と内心つっこんだが、その一方必殺技を出せる事に安心した。これでただのコスプレ装置だったってオチだったらどうしよう、と思っていたからだ。 …魔法少女なら、『〜フラッシュ!』とかの方がいいだろうか。
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ちょっと待って。魔法少女がファイ◯ルフラッシュとか使うわけないじゃん!確かにフラッシュだけどさ…。 とりあえず魔法少女っぽいの…お、ラブリースト◯ートフラッシュ!これにしよ。ポーズはまあ…ね。うん。そんな感じで。 『お疲れ様です!以上であなたがヒーローです!』 ぷしゅう 蓋が開いた。出てみると、コスプレだった。知ってたけど。てか実際怖くて必殺技とか使えないし…外出できないし… 私服に着替えよ…
- 完 -