良い選択

遺書 ありきたりな事を書くようだが、 この遺書を読んでいるという事は 私は既に この世にはいないのだろう。 一度書いてみたかったんだ、小さな夢が叶ったよ。 冗談はさておき、 私が死ぬ前にこの遺書が出てくるという事態には絶対にならないようにしているから 本当に私は死んでしまったのだろう。 どんな死に方だったのかは、 大方想像はつく… まぁ、それはいい ここからが本題だ。

K5.

13年前

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もし私が死んだら、私の会社を受け継ぐ人は優秀でスポーツ万能。知識豊富で、頭脳明晰で頭の回転が早い。そして既に明るく、前向きでポジティブ思考の奴にしてくれ。 馬鹿でスポーツが駄目でネガティブ思考の根暗は辞めてくれ。例え万能でもネガティブ思考だったら駄目で、前向きでも頭の回転が遅い奴も駄目だ。くれぐれもそんな後継ぎを探してくれ。 ー○*株式会社社長より 追伸:サーティーワンのアイスが食べたかった。

12年前

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「そんなやつ、い・る・か!」 父の遺書を読んで思わずそう叫んでしまった。とりあえずサーティーワンのアイス(バニラ)をお供えしておこう。 俺は長男で、父の会社で働いている。普通の財閥なら長男が継ぐべきだが、父は実力主義なので新米の俺は残念ながらまだヒラだ。 しかしこれは困ったことになったぞ。副社長がなんて言うか…これは極秘裏に探すしかなさそうだ…。

fusuke

12年前

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だからといって探すアテがあるはずもない。父が探せと書くのだから会社にいない事はわかりきっている。一応、知り合いにも当たってみるが期待はできないだろう。 「俺にどうしろっていうんだ……」 居酒屋で一人、そんな愚痴を零した。亡き父の願いは叶えてやりたいが、いつまでも社長の椅子を空ける訳にはいかない。 「俺の知る限り、そんな超人あんただけだよ、親父……」

らるむ

12年前

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「あら一人酒なんてしてー。フられちゃったの??」 一人項垂れていると、横から声をかけられた。しかも隣空いてるわよね、なんていって勝手に座ってくる。 「いや、別に…ちょっと悩んじゃってるだけですよ。」 適当に言って曖昧に笑う。 「無理しないのー。お兄さんが聞いてあげるから。」 このオトコ…おネェ?何でこんなに楽しそうなんだよ…少しうんざりしながら、このオト…おネェと話をしてみることにした。

nonatsu

12年前

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「ふんふん、なるほどね。上が居ないと下も安心して仕事出来ないわよね、分かるわー」 俺は酒が入って警戒心が無くなったのか、会社名だけは伏せて、遺書の内容を全て女、じゃなかった戸籍上は男に話していた。しかも彼女、彼は話を聞くのが上手い。頭の回転が早いのか、相槌も返す言葉も的確だ。 「私はこう見えても昔は大手企業の秘書課長をしていたのよ、うふふ」 そう言って誇らしそうに、逞しく太い腕を組む。

なつ

12年前

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「腕、太いな」 つい、口に出してしまった。気を悪くするかなと思ったら、おネェはむしろ誇らしげに、チカラこぶを作って見せた。 「ラグビーをやってたの。脱いだらもっと凄いわよ。脱ぐ?」 道理でガタイがいい。 「いや…今はどんな仕事を?」 「ム、ショ、ク。内定は貰ってんだけど転職に妥協はしたくないのよね。それより、いい雰囲気の店を知ってるの。ねぇ、行くでしょ?」 ポジティブな奴だ。色々な意味で。

hayayacco

12年前

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着いた店は以外にもこじんまりとした普通のレストランだった。 「私、ずっと両親に会ってないの。」 急なトーンの下がりぐあいに驚いた。 「まだ両親には私を認めてもらってないの。母は私をさけていて、父にはお前はそれでやっていけるのかって言われたわ。」 俺は何を言ったらいいか分からなかった。 「父の言った通り、私を雇ってくれる会社は限られたわ。それでも私は後悔してない。」 明るさを持ち直してホッとした。

pastel

12年前

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俺はとりあえず、このオカマを社長にすることにした。だってしょうがないだろ。正直言って誰でもいいんだ! 翌日、俺は飲み屋で知り合ったオカマを社長にすると宣言した。文句あるか?俺が大株主なんだよ。副社長はその日に辞めた。会社は飲食チェーンの元締めだったが、その日を機にオカマ向けのお店を次々出店した。大成功だった。 俺は世界のオカマカンパニーの総帥として国連にも参加した。 決め事は勢いが大事だな親父!

kei

12年前

- 完 -