13番目のアリス

「遅れちゃう遅れちゃう!さあ、アリス、早く行こう!」 いや、ちょっと待った。 私はアリスという名前ではないし、こんな二足歩行をして喋る白兎、という奇妙な知り合いはいないはずだけど。 で、これは何のドッキリなの。 白兎は少しキョトンとしたが、あーなるほど、と頷き笑顔をみせた。 「じゃあ君は僕らの13番めのアリスなんだね!ようこそアリス!」

きるこ

13年前

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ここで解説しておくと、この白兎はかの有名な、ふしぎの国の住民、ではない。あれは幼女にせがまれて生み出した、おはなしの中のキャラクターに過ぎない。 この白兎は、そのおはなしに憧れ過ぎた、地上の兎だ。 そしてこのアリスと呼ばれている少女。 彼女はたまたま偶然居合わせただけの小学生に過ぎない。 今日は学校行事で触れ合い動物園に来ていた。 嫌な子と思われたくなくて一応兎小屋に入った、実は動物嫌い。

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13番目って…アリスさんを連れ込みすぎだろ。 動物は嫌い。だけどこの後は私が最も嫌いな爬虫類のコーナーがある。爬虫類となんか死んでも触れ合いたくない。 それよりかは、この夢みがちなうさぎにつきあってあげた方が良さそうだ。 私は手を引かれて、ひと気のない所まで行った。 「さあ、アリス‼僕らのアリス‼今回は世界を救えますように。行こう。」 「行こうって…」 次の瞬間、地面がなくなっていた。

aice

13年前

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なんなの! と叫ぶと、アリスの穴さ、と返事が来る。 「穴の底では爬虫類たちが巨大化して、白兎を食いつくそうとしている。君には彼らを滅ぼすべく、ハートの女王と同盟を結んでもらいたい。他の12人は失敗して二度と地上には戻らなかったけどね。お茶会をしてるし、まずは作戦会議だ、アールグレイは嫌い?」 今サラリと怖いこと言わなかったか? 「動物を敵視するような目。最高。君なら一思いに彼らの命を奪えるさ」

aoto

13年前

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「いやいやちょっとまって!確かに動物は嫌いだけど、命を奪うとか無理!いやそれ以前に爬虫類を目にするとか無理無理!巨大とか絶対ムリ‼」 うさぎに捕まれている手(あ、ふわふわしてる)を振り払うように思いっきり振るが手(前脚?)は一向に外れない。可笑しい。そんな力が強いわけではないのに 「さぁ、アリス。もうすぐ着くよ」 「は?ちょ、やだやだ!帰して!」 「見えたきた」 このっ…爬虫類に食われてしまえ

ハイリ

13年前

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やだやだ、と目を瞑って下降していく。 途中結構な落下速度があったのが、地面の数メートル手前で突然速度が弱まり無事に着地できた。だがそんなことで安心している場合ではない。 見上げると、壁だと思っていたのはカブト虫や芋虫の体だった。 「ぎゃああああああああああああ!!!」 もう…助けて…… 「アリス?アリス!?」 次第に意識は遠退いた。

se-shiro

13年前

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「やあアリス!よくぞ夢の世界へ!」 それはチェスの白のナイトでした。 「ぎゃっ!」 アリスは再び、でも今度は短く悲鳴をあげました。何しろ白のナイトは巨大な馬の顔だけの姿ですし、アリスの顔を鼻の先近くまで覗き込んでいたのですから。 ナイトはブホブホと臭く荒い息を吹き掛けながら続けて言いました。 「よくお聞き。ハートと同盟してはダメだ!陰謀に気」 そこで突然、アリスは白兎の平手打ちで目覚めていました。

真月乃

13年前

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「え、えぇー‼目が覚めてもまだ白兎が居る〜!……お願い元の世界に戻してよー」 私がなぜこんな目にあうのさ、まったく もぅ… 「これから、ハートと一緒に憎たらしい爬虫類を倒すべく、アイテムをアリスには 取りにいってもらうよ」 ん…?アイテム?なんじゃ?剣でも取るんかい。 いや、さっきチェスの顔だけナイトに何か言われたぞ?………あ!ハートと同盟しちゃダメって… 「さあ行こう!」ち、ちょっと待ってよ〜

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「え。この人? 」たどり着いた先にいたのは、ハートの女王と呼ばれる青い口周りにゴツゴツした体をもつ、どうみても、化粧してドレスきたおじさん。「うさぎ!私が連れて来いと言ったのは、かわいいboyよ。さっさと芋虫のとこでも連れてって始末してきなさい。」とわけのわからないことを言う。「あの、お言葉に甘えてすぐにでも帰ります。」そういい全速力で走り抜けた私は気づけば、幻覚を魅せる新種の爬虫類の前にいた。

popo

12年前

- 完 -