未完ノベル #14112
「うーん…」
神田凪(女)は悩んでいた。
彼女は美術部。部活では、主に人物イラストを書いている。
「何書こうかな…」
さっきからどうにもイメージが湧かず、開いたスケッチブックは真っ白なままだった。
せめて構図を…ああ、思いつかん。
凪は頭を掻きむしり、机に突っ伏して、
…そのまま寝てしまった。
- 1 -
次に凪が目を覚ました時には、既に陽が暮れ始めていた。どうやら思ったよりも寝ていたらしい。
「も、帰ろ……」
スケッチブックを仕舞おうとした時、白紙である筈のページに何か描いてある事に気付いた。
机に突っ伏し、頭を掻きむしったポーズの人物画。その端には、『面白い寝相だったよ(笑)』の文字。
どうやら部活メンバーに悪戯されたらしい。凪は羞恥に顔を赤く染めたが、その直後、人物画の構図を思い付いた。
- 2 -
一瞬の閃きが消えないうちに、違うページにクロッキーを残しておく。
誰の落書きかは分からないが、ここから良いアイデアが生まれそうだ。そう思いながら手を動かし始めたら夢中になりすぎて。
時計を見たときには運動部すら帰る時刻を回っていた。
……ぐぅ。
静かな美術室で腹の虫が鳴く。帰宅すれば夕飯が待っているのだが、小腹を満たす為にあんぱんの袋を開けたら。
「まだいたんだ。…もしかして、いま寝起き?」
- 3 -
背後から聞こえた声に飛び上がりそうになった。
恐る恐る振り向くと、視線の先にいたのは見知らぬ男子生徒だった。
「誰……?」
「え。佐藤だけど。新聞部の」
新聞部……?
首をひねる凪を見て、佐藤と名乗った男子は苦笑した。
「先々週に校内新聞の部活紹介用のインタビュー取らせてもらったばっかなんだけど、俺ってそんな印象薄かった?」
その説明で凪の記憶はうっすらと焦点を結び始めた。
「ああー……あの時の」
- 4 -
彼の印象云々よりも、あの日は丁度新作あんぱん発売日と言うのが重なり、気が気でなかったのだ。本校購買部のパンは、そのパンメーカーから商品を卸している。時間がなかった。
「あの時はちょっと急いでて」
それよりも、彼が例のらくがきを残したのだろうか。とすると、新聞部にしては絵心があり過ぎる。
「下校時間、とっくに過ぎてるからさ。今こそ急ぐべきじゃないかな」
そう言う彼は何故まだ校舎にいるのだろうか。
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