「自分、肉筆フェチなんですよ〜」と、新入部員の濱口くんは興奮気味に机を揺らした。ガタガタうるさい。文具研究部であるからして、論点が少しズレている気もする。我が部では自己紹介の時、〝文具の中で何が特に好きなのか〟を語るのが決まりになっているのだ。 「万年筆が紙の上を走る時に、紙がシュタッと吸い付く感じも堪りません」 「濱田くんも万年筆担か。これで二人目だなぁ」 一人目は部長の十和田よろずである。

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