シャドー部を追って

君は知っているだろうか。 日々、暮らしているこの学校の中での 非日常を。 例えば 出しっ放しの用具が片付けられていたり 壊れたドアがいつの間にか戻っていたり。 人数が足りなくて予選で諦めた放送部が金をとったり、 負傷者で困っていた筈のラグビー部が勝ち進んだり。 どうにかなったんだよ、 と普通の人なら済ましてしまうだろう。 そう、 "シャドー部" の存在を知らない者ならば。

taco

11年前

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”シャドー部”その名の通り実態は誰も知らない。本当の名前さえも。ただシャドー部の力を借りたものは口を揃えて言う。「まるで影のように気づいたらいて、また気づいたらいなくなっている」と。 「…分かっているのはこれで全部です」 「みんな知ってることね」 「だから言ったじゃないですか!シャドー部を記事にするのは無理です!」 ここは新聞部の部室。ユカは部長のリツコに恨めしい視線を送るが、無視されている。

月野 麻

11年前

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「シャドー部の記事、いつやるの?」 「いや無理でしょ!書けないよ!」 リツコはため息をつく 「ユカ考えてみな?シャドー部は噂の部活よ?一般の聞き込みで情報が得られるわけ無いじゃない。あるとしても極一部よ」 ユカはそうとう落ち込んでいた 「シャドー部の情報掴むための簡単な方法教えようか?」 ユカの顔はみるみる生気がみなぎってきた リツコは真っ直ぐにいった 「シャドー部に助けてもらいなさい」

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「ユカ、何か困ってる事とかないの?素振りを見せたらシャドー部が来てくれる」 「…そっか…その手がありましたね」 リツコがニヤリとする。 「そういえば、『学園祭のクラスリーダーになっちゃったんです〜』って?ホントじゃんけん弱いわね」 「だ、だって誰も手挙げなくて、それで…」 ユカが口ごもる。だがこれはチャンスだ。 「ねぇ、リーダーも部活の記事も忙しいけれど、これはユカにしかできないことだわ」

nono

11年前

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ズバッと、シャドー部の正体を暴いちゃいなさい! そう言い残して、部長はそそくさと部室から出て行った。多分また調査に出かけたのだろう。ここ最近ずっとあんな感じなのだ、部長は。 はあ、と溜息をつく私。 部長。何もそこまでしなくてもいいんじゃないですか? シャドー部のことを知りたい? もう•••部長ったら。 シャドー部が実態を知られないようにしてる理由、考えたことがありますか? それはですね•••

11年前

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内情がバレたらただの“お助け部”だからに尽きますよ。 助太刀ヒーローじゃあるまいし、都合のいい労力に扱われるのは御免です。 というのも実は私、シャドー部が本命で籍を置いてるんですよね。 そう丁寧語でユカの別人格が独白する。シャドー部は、学校七不思議と同じくらい曖昧だからこそ隠密な活動内容を徹底できている。他の部員のためにも、いよいよリツコを何とかしなければならない。 さて、どうしたものか。

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…助けられたフリをする? 万が一ボロがでるとマズイ。 …リツコを消してしまう? シャドー部の主義に反する。 …いっそリツコもシャドー部に? リツコは口が軽いし、なにより人助けって柄じゃない。 それならば──。 『シャドー部がリツコを助ける』 これしかない。シャドー部がリツコを助け、それでも正体を知ることができないと思わせれば解決する。 ユカはさっそく部員を集めた。

続木

9年前

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「えぇー……別にいいけどさぁ〜」 「あいつかー」 シャドー部の部長と副部長が顔を見合わせる。 「万が一俺たちの本当の秘密が、バレたらどうするんだ?」 そう。本当の秘密とは、私達がこの学校を動かしてる実質的な責任者であること、そして、全員 影の貴族と呼ばれるこの国の諜報員と言うこと。 「でも…」 「分かった分かった。助けりゃいいんだろ?タスケリャ」

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影の貴族に手に入らない情報はありません。 リツコは自分が卒業した後の新聞部が心配だったのです。 「シャドー部の記事を書けば新聞部が盛り上がるし、安心して後を任せられるということですね?」 「そうだ。二人の困ったことが同時に解決するし」 ユカは学園祭でシャドー部に助けられた?、という記事を書くことになった。 「あくまでも学園祭で起きた事件の一つ、という体裁でな」 影はまた、人を助ける。

すくな

9年前

- 完 -