見通せるものと見通せぬもの

「凄い」
目を見開いた新聞記者が僕をじっと探るように見た。

完全なる予知能力

今僕が見せたことはそうとしか言いようがないだろう。
未来を読める、これは僕が気づいた時には手にしていた能力だった。
少し先から遠い未来まで、僕にかかればどんなこともお見通しだ。

桜木 初音
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僕のことは世間では有名だった。
世界初の超能力少年という触れ書きで、おそらくこの国で知らない人間は居ない。
インチキなマジシャンが自称したことさえあれ、正真正銘の能力者は今の所僕しかいない。
発現したのはここ数年のことだった。
生まれて初めて買った宝くじで、適当に選んだ数字が一等に輝いた。
競馬場でたまたま選んだ高倍率の馬が、一着を獲得した。
軽い気持ちで占った友人の未来が、僕の言葉通りになった。

noname
- 2 -

僕は僕自身を自負していた。
僕の望み通りに世界は、動く。

そんなときだった。
なにも言っていない。
なにも思っていない。

不意に脳裏によぎったのは…

僕が階段を降りているところ。

目をつぶった僕は、真っ赤に染まる。

綺麗に染まった頭はまるでザクロだ。

僕は恐怖と、そして望み通りの世界への飽き、そして…ザクロのような美しさに恍惚を覚え、頭が…混じった。

そして僕は

櫻井 夏孝
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赤に染まったその先を見た。

僕が死んだその先、棺桶の前で泣く家族の姿。けれど、その光景に心を痛めたのは他でもない僕自身だった。

なぜなら、家族以外に僕の死を悼み哀しんでくれる者がいなかったからだ。

心がはり裂ける寸前で僕は瞼をこじ開けた。数秒の目を閉じていただけなのに、久しぶりに光を見た気がする。
涙が溢れて止まらない。望み通りであるはずのこの世界で初めて僕は望まないものに直面した。

lawya3
- 4 -

お金、名声、自信、
この力で沢山の物を手に入れた。
だけど、こんな未来なら知らない方が良かった…。

普通なら、死んだ本人は自分の葬式を見ることなど出来ないし、泣いてくれる人が家族しかいなくても、死んでいるから、がっかりする事もない。

…なんで、自分の葬式の場面なんて見えてしまったんだろう…

この力は、自分の望みを叶えるために与えられたものじゃないのか…

マーチン
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予知から数日、僕は倦怠感と共に過ごした。窓際の風通しの良い所に座り、外を眺めた。
街の郊外に建てた家は小さな雑木林がその敷地内にある。地主曰く今でも夏になるとカブトムシやクワガタが居るそうだ。
夜になり、電灯を付けて数時間。窓に勢い良く何かが当たった。
「……え?何ッ?」
外に出て何が当たったのか確認すると、それは立派なノコギリクワガタだった。窓に当たった衝撃ですでに事切れている。

KELL
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窓が分からなかったのだろう。もし、それが分かっていたのならどうだろう。ノコギリクワガタは窓にぶつからず、終わり方は違ったのだろうか。

……ダメだ、こんな想像は考えただけ時間の無駄だ。ノコギリクワガタは窓が分からない。知りようがない。けれど僕ならどうだろう。未来を知っていたならどうだろう。僕は繰り返し自分に言い聞かせるように、問うてみた。

そんな馬鹿な話があるか。あってたまるものか。

餌食
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未来を変える決意した僕は、病人など社会的弱者に会い、積極的に寄付などして支援した。
病人に会うたびに僕はハグし、お互いに涙した。

ある日4階建の老朽化した病院を立て直しのため視察に来ていた。
院長とバルコニーに立っていたら聞き覚えのある少女の声が下から聞こえてきた。
それは別の病院で支援していた車椅子の少女だった。
「先生、降りてハグして、早くー!」
横を見るとあの階段があった、螺旋状の。

Dre
- 8 -

「ああ、ここか」
「ああ、今日か」
そんな思いで一段ずつ噛みしめるように降りてゆく。

その中で悟った。
あの葬式の件は僕の早とちりだったのだと。
僕が見たのは親族のみで行った「家族葬」の場面であって、その後に「偲ぶ会」をあれから出会った人達がやってくれるに違いないと。

だから僕は、少女が悲惨な狙撃場面を見ないように別の方向を指差して彼女がそちらに目を向けるようにしながら、腹を決めて歩を進めた。

ぷにぷにヒロ坊
- 完 -

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