反逆者達
俺は今、反逆者を追っている。
姿を見たことは一度もないが、どうやら目の前にある部屋のようだ。
装備の確認を終え、扉を開けると、そこにいたのは、
「子ども?」
一人の子どもがじっとこちらを見ていた。何も言わずにただ見ていた。
ふと、恐怖に似たようなものを感じた。しかし何故だ?相手は子どもだ。大人の俺の方が強いに決まっている。しかし、震えは止まらない。
反逆者がこっちへ歩いてくる。
- 1 -
「ふーん兄さん一人か」
子どもはその姿に不釣り合いな、見下した笑みを浮かべた。
「もっと大勢でやってくるって踏んでたんだけどな」
ちょっと肩すかしだね。
子どもは人を馬鹿にしたジェスチャーをとると、拳銃で俺の左足を撃った。
強い衝撃とともに激痛が神経を襲った。
油断していた。
まだどこかに、この子どもが反逆者であることを信じていない自分がいたからだ。
「本当に君なのか?」
「撃ったろ? 信じてよ」
- 2 -
「はぁ、僕も舐められたもんだね。警戒もできないような兄さんに追われるなんて」
至極つまらなそうに、彼は武器を向ける。拳銃だけではなく、侮蔑という名の武器を。
だが、構わない。
「ここでどうする?」
「追手の人を殺すんだよ、一人残らず」
「へえ」
面白い。
「全員、だな?」
「奇襲でしょ?」
「ああ。けど、負けるのはお前だよ。警戒ができてないのはお前の方だからな」
これでよし。
あとは、潰すだけだ。
- 3 -
詳しい罪状は知らない。今の世の中、“反逆者”と言えば通る。それは追われ、狩られる者たちの総称だ。その意思は無かったとしても政府の意に反すれば“反逆者”。
このチビの言動からすると、確信犯だろうが。大方契約違反か隠れて盗みを働いたか。銃を所持していた点から見て、年長の連中と徒党を組んでいたのかも知れない。
「さあ、銃を棄てろ。両手が見えるように頭より上に挙げるんだ」
- 4 -
彼は顰め面で拳銃を床に放り投げた。よし、それで良い。痛む左足を引きずりながら子どもに近付く。
あとは可哀想だが手錠をかけて、無線で仲間に応援を頼めば──
「誰が簡単に捕まってあげるなんて言ったの?」
発砲音。
「もう一丁隠し持ってやがったか」
狙いは俺の心臓だった。それでも俺が倒れないのを見ると、すっと目を細める。浮かび上がるのは、侮蔑。
「可哀想なのはお兄さんだ。権力の犬、って言うんだよね」
- 5 -
「権力は役に立つ。こんなふうにな」
シャツを開いて防弾チョッキを見せた。彼は躊躇わず狙いを俺の眉間に移した。
「撃ってみろ」
俺は言った。
「俺はな、結構感染力の高い病気を持ってるんだ。俺の血を浴びたら、お前にもそれが移るかもしれない。それでもよかったら撃てよ」
子どもの顔にこれまでにない怯えた色が浮かんだ。
左足の血を拭った掌を翳し、俺はまた彼に近づく。
「く、来るな」
彼は慄いて後退った。
- 6 -
「撃てよ!」
「確かに権力は役に立つけど僕にいらない」
何かを決意した様に彼は銃を俺の眉間に向ける
「俺を打てばお前も死ぬぞ」
「僕は自由に囚われた奴隷だ死しか自由への道はない。僕は父上の操り人形にはなりたくない」
扉が開き銃弾が彼の持っていた銃を弾く
「白鳥様、お父上がお待ちです」
白鳥は政府のトップだ
驚愕する俺をよそに彼は諦めた様に目を伏せる
「僕は逃げれなかった、また権力の犬に成り下がる」
- 7 -
追手に挟まれ去りゆく彼に声をかけた。
「お前は白鳥の息子なのか?」
歩を止め彼は振り返らずに呟く。
「残念ながらね」
俺はその背後で落ちていた彼の銃を拾う。
「なぜ反逆など…」
弾はまだ残っている。
「権力から逃れたかったのさ。僕はあの人が使う駒のひとつだ。使えない駒ならその内捨てるだけだ」
人形、犬、駒ーー自らを貶める揶揄を口にする彼は何を求めたのだろう。
そして俺は…何を求めてこうしている?
- 8 -
俺は力一杯引き金を引いた。
弾はくるくると回転し、政府のトップの広い背中にめり込んだ。
崩れ落ちる白鳥。吹き出る血液。
反逆者は驚いたようにこちらを振り向いた。
「自由にしてやるよ」
自由のない生活。それは自分たちも同じだった。政府から雇われた人間は発言、行動を制限される。全て白鳥の手によって。
SP達が俺の元へ走ってくる。俺はそいつらに弾を乱雑に打ち込んだ。
もういい。
今は、俺が反逆者だ。
- 完 -
作品情報
反逆者達
#312
- リレー期間
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2年8ヶ月