「どうしてあなた達8人は、そうまとまりがないのでしょう」 ミラ先生は、溜息をついた。 今日特別授業として集められた8人は、みんな可愛い小人達。 さっきから帽子を引っ張りあったり、背くらべしたりと、先生の話を聞かずに騒いでばかり。 「そうだわ。この8人で、喫茶店を開いてみましょう!庭園のテラスを使って、皆で協力すれば出来るはずよ」 突然の提案に、小人達は騒ぐのを止め、ぽかんと先生を見上げた。
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最初に口を開いたのは一番元気な小人。 「やる!面白そう!」 一番元気な小人は駆け回ったりジャンプしたり大はしゃぎ。 「僕ね!おきゃくさまをおむかえする人をやる!」 「あら、ウエイターさん?」 「うん!うえいたーさんやる!いらっしゃいませする!」 一番元気な小人は元気に言うが、あまりに大きな声だったので、隣の子に、うるさいよ!と言われてしまった。 「そうね、いいかも。他のみんなはどうする?」
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「一つの店を始めると言うのは、そんなに簡単なことでは無いはずです」 一番理屈屋の小人が丸い鼻に皺を寄せる。勢い余ってぶつかってきた元気な小人を邪険に押し退け、更に言った。 「設備、場所代、初期経費だけでも大変なものですよ。失礼ながら先生、あなたには論理力と言うものが欠けている」 これにはミラ先生も苦笑。 「大丈夫よ、あそこなら授業に使わせて貰えるし、設備もととのってるわ」
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「そういうことなら良いのです」 一番理屈屋の小人が満足そうに頷いた。 「じゃあ、あなたはどうしたい?」 ミラ先生が一番人見知りの小人に尋ねる。人見知りの小人の頬は、突然みんなからの視線を浴びて真っ赤に染まる。 「わ、私は……」 言いかけて小人は口をつぐんだ。自分のやりたいことを口にするなんて、傲慢だと思ったからだ。 「良いのよ、言ってごらん」 ミラ先生の優しい微笑みを見て小人は再び口を開く。
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「ケ、ケーキを作りたいです」 消え入るような声で呟いた 「あら良いじゃない。私も頂きたいわ」 甘い物好きのミラ先生は満面の笑顔だ 小人は更に顔を赤くさせた 次に一番ネガティブな小人に先生は尋ねた 彼は自分の眼の下にある隈を指でなぞりながらこう呟いた 「僕たちが頑張った所で誰も来ないですよ。どうせ僕たちは役立たずの小人なんだ」 「大丈夫、そんなことないわ」 ミラ先生はふふっと笑いながら言った
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「学校にいらっしゃるお客様や、私の知り合いやお友達にも声を掛けるわ。きっと大にぎわいになるわ。 それに、あなたたちの頑張りを見たお客様は、きっとまた来てくださると思うの」 …食器洗いくらいなら、とネガティブな小人が呟くと、ミラ先生は満面の笑み。 皆の期待が高まる中、一番手先が器用な小人が名乗りをあげた。 「私は看板を作りましょう。 それに、テーブルや椅子にも綺麗な細工を彫るのはどうですか?」
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「素敵ね。お出しする飲み物やメニューだけじゃなくて、設備にまで気を配るなんて。あなたの優しさは、きっとお客様に伝わるはずよ」 そんな中、一番の皮肉屋と一番の面倒臭がり屋が手をあげて言った。 「こんなことして一番喜ぶっつーか満足するのは、先生なんじゃないの?」 「だよね。僕ら、別にやりたくてここに来たわけじゃないし」 それを聞いたミラ先生は、優しい顔で微笑みながら、二人にある事を教えてあげた。
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「そうね、私は勿論やりたいわ。 けどね、先生だけでやってもつまらないじゃない?私の大好きなみんなと一緒にしたいのよ。」 先生は、優しく二人に言った。 「…べ、別に…やってあげてもいいけど。」 と、1人の小人が言うと、 「しょーがないなぁ…イイよ?暇だし。 …面倒いケド。」 と、もう1人も言った。 「そう?良かったわぁ。ありがとうね。」 先生は、ふふ…と、優しく微笑んだ。 「…じゃあ…
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「そうと決まれば、皆で準備ね」 ミラ先生の一言で、小人たちは動き始めた。 元気な小人はウエイター。理屈屋の小人は会計担当。人見知りの小人はケーキを作る。ネガティブな小人は皿洗い。器用な小人は看板作り。皮肉屋の小人は完成した家具で内装を飾る。面倒臭がり屋はケーキの材料を買いに行く。 「あれ、もう一人の小人は?」 忘れられていた小人はお客に混じってケーキを食べていた。 「お前ばかりずるいぞー!」
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