とあるクラスの恋愛事情

ある日の学校。 後で職員室に来い、と担任に言われたので行ってみると、足立の家まで配布物を届けて欲しいと言われた。 足立はクラスの女子の中でも気が合う方だ。ついでに家も一番近くなので俺が呼ばれたっぽい。 「風邪ねぇ…」 道理で欠席してたのか。 足立の家のインターホンを押す。 ガチャッ 「はーい…あれ、原君?」 「よっ!ほいこれ、配布物」 「わざわざありがと…あ、そうだ上がってく?」 え"。

コノハ

12年前

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「あ、うつったらいやだよね」 げほげほと足立は咳をした。 風邪は接触感染だ。 「まあ茶くらい頂くか」 「本当?ちょっと話したいことがあったの」 風邪は同じ空気を吸う程度でまず感染しない。鼻水がついた手で触った物を介してうつる。あとはキ、キッスしなきゃ大丈夫。 バタンと玄関のドアが閉じるとドキドキした。踏み込んではいけないところに踏み込んだ気分だ。 あながちそれは間違いではなかったのだが。

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「お、親は?」 「昨日から仕事で海外なの。今週は帰って来ないと思う」 「兄弟は?」 「言ってなかったっけ。私、一人っ子なの」 ということは、今この家には俺と足立の二人きりだ。 足立を心配する気持ちとこの状況に何かを期待する気持ちとで心が揺れる。 「風邪はどんな感じだ?」 「大分良くなったよ。一人だったから寂しかったの」 笑顔で答える足立を見て、どきりとする。 「それは良かったな。話ってなに?」

Rin

12年前

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「うん。小島くんのことなんだけど」 小島、とは。それはもう俺の唯一無二の友達だ。当然足立とも面識がある。が、俺ほど話してるわけじゃない。わけじゃない、けれども。さっきとは違うドキドキとは違うドキドキが俺の心臓を叩く。 「こっ小島がどうかしたのか?」 ひいっ!声が裏返った!動揺してるのがばれる! 「実はね、私小島くんのことー」 やめてくれ!聞きたくない!と思っても願いが届くはずもない。

ハイリ

12年前

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「げほげほっ」 「ゴメンね、咳がなおんなくて」 お茶を飲み顔をしかめた足立を見ながら俺は別の話題を振ろうと考えたが、ろくな話題が見つからずしょうもない言葉を返した。 「喋らない方がいいんじゃないの」 「あーいやあ、うん。いい機会だし原君の意見も聞いておきたくてさ」 「私ね、小島君のこと、見ちゃったんだよ」 「はあ?」 覚悟してたから変に気が抜けた返しをしてしまった。 「はあって。失礼な返事だなあ」

makino

12年前

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「で、何を見たって?」 「体育館の裏から、小島君が涙目で出てきたんだよ」 まさかイジメか? 小島がその手の被害に遭うとも思えないが… 「私、気になってさ。体育館の裏を覗いてみたんだよ。そしたら…誰がいたと思う?」 「誰だよ。勝てそうなヤツなら、俺が仇を取ってやる!」 「はあ?」 「はあって。で、誰だよ」 「それがね、美鈴さんだったの」 なんと。美鈴さんと言えばクラスで一番人気の女子だ。

hayayacco

11年前

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恐らく告白してフラれたのだろう… まあ無理もない。競争率が高いのはこの俺でも知ってるくらいだ。笑 そして足立がこう口を開いた。 「小島君が泣いていたのがずっと気になってて…」と悲しそうにいった。 なんとかしてやりたい。今そう思った。 「俺が明日小島と話して、探り入れてみるわ。」と言った。 彼女は「明日もまだ休むからお願いします」と最近髪を切った短い髪を揺らしてぺこりと頭を下げた。

めい◎

11年前

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「まかせてよ!」 とは言ったものの、振られた話なんて人にできるものだろうか。 俺が足立に振られたら…いや、振られてないけど!?むしろ、頼られちゃってますけど?俺! 「よう、小島!なんか最近、元気ないな?大丈夫か?」 「あぁ、原。俺、振られちゃってさ…」 「そ、そうなのか。大丈夫なのか?」 「あぁ。振られたからって、落ち込んでばっかじゃいられないからな」 ありがとな、と笑う小島は辛そうだった。

リッチー

11年前

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「やっぱフラれちゃったんだ」 「まぁ落ち込んでられないって言って笑ってたから大丈夫じゃないかな」 「そっか!」 あまりにもあっさりした彼女の返事に、俺はいささか拍子抜けしていた。 あんなに心配してたのに…。 その理由はすぐに分かった。 「これで小島くんに心置き無く告白できる!ありがとね原君!」 …あ、そーいうこと。 この原が噂の美鈴さんから告白されるのはそう遠くない未来である。

- 完 -