ラノベの主人公になりました!

僕は、どうしようもないオタクで学校では一人ぼっちだった。 教室の隅で小説を読む僕をクラスの皆は"エアー"と呼んだ。 人がとても嫌いだった。 信頼できない。皆自分が可愛いんだ。 平気で裏切って、傷つける。 だから僕は一人が好きで、二次元の世界が好きなんだ。 しかし、そんな僕がただ一人だけ話せる人がいた。 その子は、学校では"マドンナ"と呼ばれて、誰もが愛する女の子だった。

a-1020

12年前

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『マドンナ』何て呼ばれているが見た目は別に他の人より特別に秀でているわけではなかった。ただ、彼女は誰に対しても公平で優しかった。だけど僕は最初は他の人と同様彼女の事も嫌いであったのだが彼女は僕に優しく話し掛けてきてくれた。いつしか僕は彼女の事を気に掛けていた。 ある日学校に行ったら机の中に一枚の紙が入っていた。出して見るといかにも女の子の字で今日の放課後に屋上に一人で来て下さいとの事であった。

とほほ

12年前

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頭の奥が熱くなった。 期待しちゃいけない。とは思うけど、この文面だとどうしても浮ついたことを想像してしまう。 僕は小まめに深呼吸しながら放課後を待った。 終HRが終わるとすぐに教室を出た。すると隣の教室からマドンナも出てきた。 僕の顔を見て、彼女は首をかしげた。 「顔赤くない?」 「やっ、屋上がっ」 慌てて変なことを口走ってしまった。 「ば、ばいばい!」 それだけ言って、屋上に走った。

さはら

12年前

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僕は屋上のドアの前までやって来た。だが、マドンナが上がって来る気配はない。 ま、現実なんてこんなもんだ、そう思いながらドアを開いて屋上に出た。 だが、現実はもっと悲しかった。 屋上には、一番会いたくない女生徒がいた。 いつも僕の事を蔑んだ目で見ている嫌な奴だ。 「…何か?」 僕は彼女を睨みつけた。すると彼女は顔を赤らめながら答えた。 「あのさ…今度アニメ教えてくんない?」 「はあ?」

hyper

12年前

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散々蔑むような眼差しを送っておきながら、どういった風の吹き回しだと僕は思った。 「どういう、つもりだ?」 対人恐怖症の僕は、ややおどおどとしながら彼女に聞いてみた。 「いや……実はちょっと気になるアニメがあってね。あんたならよく知ってそうだし、聞いてみようかと思って……べ、別に暇だったからとかそんなんじゃないわよ」 この上から目線が鬱陶しかったが、断ると何か起こりそうだったので教えることにした。

Swan

12年前

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「で、なんていうアニメ?」 教えるにしても題名がわからなければ意味がない。 「それが、『菊と薔薇とオタク』っていうアニで…」 「あぁ、原作がラノベのあれか。オタクである主人公の幼馴染の和風少女とツンデレ少女が主人公を取り合うっていう」 「そう!それ!」 おや?ふつーに話せる。 「あれ、ツンデレ少女きもいんだよ。まぁ、それによって和風少女の優しさが際立つが。」 「〜!もういい!知らない!」

ドメシ

12年前

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彼女は走り去った。 なにか悪いことでも言っただろうか 人と話すことに慣れていない僕は,その過ちに気づけなかった 「いちいちはっきりしないツンデレとか,わかんないんだよなぁ…好きなら好きって言えばいい… ん待て。 さっきの女子。 いつもあの侮蔑の目で僕を突き放しておいてさっきの態度… 俗に言う…ツンデレ? あぁあぁ悟ったぞ なのに何の考えもなくきもいと言い放った僕…

DaigO

12年前

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「謝らなくちゃ」 追いかけようとした時、なぜかマドンナが扉を開けて姿を現した。 「今、ツン子ちゃんがすごい勢いで出て行ったけどーー」 「え、いや、ななんでもないぜっ⁉」 「そう。あの、この手紙君が落としていったから、渡さなくちゃとおもって…」 マドンナが僕にツン子からの手紙を差し出している。 「あ、もちろん中は見てないから安心して!」 「お、おう、さんきゅ?」 手紙を受け取ろうとしたまさにその時、

nanamemae

12年前

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ツン子が戻ってきた。走ったからなのか、顔を赤らめて。 「さっきは、ごめん」 真っ先に僕は謝った。 「私もごめん…。手紙、最後まで読んだ…?」 しまった!!屋上に来て下さいだけで興奮して読んでない。 僕は慌てて手紙の最後を読む。 『すきです』と小さく書かれていた。 ツン子が僕の手を握ってきた。陰に隠れて見ていたマドンナが息を飲むのが聞こえる。 僕はエアーから、あのラノベの主人公になった。

宝珠院

12年前

- 完 -