ストーカーからの招待状

君へのストーキング歴一年を記念した催しが、主催俺、司会俺、カメラ照明音響俺で開催されることになりました。 この一年の集大成(盗撮盗聴窃盗などで得たありとあらゆるデータや物品)をターゲットである斉藤佳菜子氏ご本人に曝け出し、思いの丈を伝える所存であります。 ふるってご参加下さい。 会場 俺の家 日時 君の二十歳の誕生日0時

字兎粋亜

12年前

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そう書かれた手紙が私の元へ届いたのは、20歳の誕生日の3日前。 見に覚えのない話だし、誰かにストーキングされていたなんて今初めて知ったよ。 20歳の誕生日っていったら、晴れて大人です‼っていう輝かしい1日じゃない。友達とパーティしたり、20年間どうもありがとう‼的な感じで家族と過ごしたりするものでしょ? 何が悲しくてこんな自称ストーカーの家に行くのよ。そもそも君が誰だか知らないよ、ストーカー君!

紅の豚

12年前

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そんな二十歳の誕生日がきた。私はストーカーのことなんてさっぱり忘れて友達とパーティをした。忙しくて家には帰れず親にはメールで祝ってもらう。 「佳菜子おめでとうっ!」 その瞬間クラッカーが響いた。嬉しいな。そして祝福の乾杯。恋愛咄やらが夜9時頃まで続いた。酒が強い私が珍しく表情に出たところで解散となった。少し酔いすぎたかな、そう感じて夜道を歩いた。ふと鞄の中を覗いた。そこには一枚の紙があった。

えりf^_^;)

12年前

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『友人優先の君のことだからこれを見るのは君の誕生日の夜遅くになるのはわかっています。 君のことをずっと待っています。』 いつの間にこんなものが? 暗い夜道、数m先の街灯までが遠く感じる。 気味が悪い。家まで誰かと電話しながら帰ろうと、携帯を取り出す。 電話帳のデータは全部消されていた。入れた覚えのない名前、でも見覚えのある名前がそこにはあった。 中学時代の同級生の名前。でも話したことはない。

12年前

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かけるべきか迷っていると、携帯が勝手に鳴り出した。表示された名前は1件だけ入れられていたソレで、手に汗が滲む。 切っても切っても電話は鳴り続け、着信拒否にする間もない。実際には変わらない筈の着信音が、段々と大きくなっているような気さえする。 遥か彼方に見える街灯の近くに、公衆電話があった。あそこまで辿り着けば、友達の番号は分からなくたって警察は呼べる。

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公衆電話まで駆け寄ると、中には既に先客がいて使用中だった。 早く終わってくれないかと、気持ちばかりが焦る。 鞄の中で携帯が鳴り続け、私はここでやっと主電源を切る事にした。 ギィ…と公衆電話から出てきた人と入れ替わるように私は急いで中に入る。 ホッとした所で、外に出た人がギィ…と扉を開けてきた。 「え!」 思わず身構えた私に男が言った。 「佳菜子ちゃんは携帯持ってるのに、どうしたのかな?」

10年前

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その言葉に同級生の顔が頭を掠めてドキリとする。 でもよくよく見ると、その人はバイト先の先輩だった。 「せ、先輩こそ…」 「俺は携帯忘れちゃって。佳菜子ちゃんは携帯持ってんのに何で公衆電話使うの?」 なるほど、さっきの言葉は単なる質問だったのだ。 知っている人に会えたことにホッとしたのか、急に体が震えて涙が止まらなくなった。 「えっちょ、佳菜子ちゃん!?」 珍しく慌てている先輩にちょっと笑えた。

toi

10年前

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私は安心しきってしまい、バイトの先輩にすべての事情を話した。 「それじゃあ、今夜だけ俺んち来る? あ、別に変な下心とかじゃなくて、その手紙が言う0時過ぎに誰かが側にいた方が安心でしょ? 何事もなければすぐ家まで送って行くよ」 人の良い先輩の申し出に安堵した私は、彼についていくことにした。 だが。 彼の家のドアを開けた時、私は驚愕の事実に気づいたのだ。 ストーカーからの手紙の本当の意味に。

10年前

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部屋の中一面に、少女の死体を写した写真が貼られていた。 ふと少女を次々と無残に殺害するサイコパスが未だ逃亡中というニュースを思い出す。 気付いた時には遅かった。 満面の笑みを浮かべた彼は私の身体にナイフを突き立てた。 意識が朦朧とする中ドアが開かれた。男性が入ってきて、私の姿を見ると同時に泣きながら叫んだ。 「なんで警察に通報しないんだ!その為に送ったのに、君の事を守りたかっただけなのに!」

supooon

10年前

- 完 -