乱暴な郵便屋さん
ある日、私のもとに一通の手紙が来た。
いや、正確に言えば
ぐしゃぐしゃに丸められた紙くずだった。
授業中、いきなり私の元に投げられたのだ。
誰からかもわからない
どんな内容かもわからない
私はゆっくり静かに紙を開いていった
それにはー
- 1 -
ー何も書かれていなかった
ただ、何度か書いて消した後が残っている紙くずだった。
「はぁ、何なのよこれ。」
誰かに恨まれる覚えが全く無いので、単なる悪趣味なイタズラだろうか。咄嗟に辺りを見回したがそれらしき人は見付からない。
気にしないのが最善策と思い、その日はそのまま授業を受けて早々に帰宅した。
あくる日、授業中にも関わらずまたしても紙くずが投げられた。
一体、誰が何のために…?
- 2 -
私は授業を真面目に受けているだけなのに、なぜこんな目に合わなくてはならないのだ。
全くこんなくだらない悪戯をするのは一体誰なんだ。
何だか段々イライラしてきて、思わず私はその紙くずを元通りぐしゃぐしゃに丸めて、ゴミ箱へ放り投げる。
すとんっ、と綺麗にゴミ箱へ落ちたそれを見て少し満足していると、同じくその一連の動作を見ていたらしい佐藤と目が合った。
「お見事〜」
彼はそう言って小さく拍手をした。
- 3 -
そのまた次の日も紙くずを
投げつけられた。
もう〜怒った。こうなったら絶対に相手が誰か突き止めてやる!
私は紙くずをシャーペンで
塗りつぶし何が書いてあったか探ることにした。
何度も書き直されているせいかほとんど文字が潰れている。その中でかろうじて残った文字を拾っていくと
ずっと 好き
放課後 教室 待ってる
- 4 -
はぁ?
授業中だが、声が出るかと思った。
シャイ?なのか?
いや、それなら靴箱にでも入れておいてよ。授業中に投げるなんてふざけているとしか思えないから、これも含めて悪戯か。うーん、もしかしたら本と…いやいや、本当に好きなら消すなよ!
後ろの方の席の奴に聞けば、簡単に終わる話だった。でも、これをあえて楽しんでやろうと思った。悪戯ならば、絶対に仕返ししてやる。そう考えて、放課後は残ることにした。
- 5 -
放課後、夕方の暖かな光が差し込む午後5時の教室。
ぐしゃぐしゃの紙くずを塗りつぶして見つけたメッセージの通り、私はその相手を待っていた。
しかし待てど一向に現れない。
「もしかして私のことからかってるんじゃ…!?」
自分の席に座り紙をもう一度開くとやはりそこには「ずっと 好き 放課後 教室 待ってる」の文字。
「もー帰ろ。」
諦めて立ち上がったその瞬間…。
- 6 -
「一人?」
他に誰もいない教室で、それは私に向けられた言葉だとすぐ分かった。振り返ると後ろの出入り口を塞ぐように佐藤が立っていた。
「誰か待ってんの?」
誰か分からない人を待っていた、とは言えず。
「ううん、もう帰るところ」
「あっ……そ」
佐藤の前をすり抜けるように廊下に出て、暗くなった道を歩きながらふと気がついた。
忘れ物を取りに来たふうでもないのに、佐藤は何しに教室に来たんだろう?
- 7 -
そう言えば、佐藤は私があの紙くずをゴミ箱に放り投げたところを見ていた。
いつから見ていたのだろう。
私が投げるところから?
それとも、私を目掛けて紙くずが飛んでくるところから?
佐藤の席は私より後ろ。
紙くずが何処から飛んできたか、見ていたかもしれない。
街灯の下で立ち止まり、ポケットに手を突っ込む。
「ずっと 好き 放課後 待ってる」
あの紙くずの感触が、やけに胸をざわつかせる。
「ねぇ」
- 8 -
「紙、投げてたのあんたでしょ。」
ただのはったり。
「ど、どうしてそれを!」
あたり。
「私って視野広いの。」
「その視野、まさか前世はウサギ。」
「っ人だから!まぁウサギなら許す。」
「あはは。」
佐藤ってこんな顔で笑うんだ。
ちょっと可愛いかも。
「好きって書いてあったよね。」
「梨花に投げたんだけど外れた。」
「あんたがどうしてもって… え?」
梨花は隣の席。
もしかして振られたの、私。
- 完 -
作品情報
乱暴な郵便屋さん
#15577
- リレー期間
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2年8ヶ月