乱暴な郵便屋さん

ある日、私のもとに一通の手紙が来た。 いや、正確に言えば ぐしゃぐしゃに丸められた紙くずだった。 授業中、いきなり私の元に投げられたのだ。 誰からかもわからない どんな内容かもわからない 私はゆっくり静かに紙を開いていった それにはー

相澤ララ

11年前

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ー何も書かれていなかった ただ、何度か書いて消した後が残っている紙くずだった。 「はぁ、何なのよこれ。」 誰かに恨まれる覚えが全く無いので、単なる悪趣味なイタズラだろうか。咄嗟に辺りを見回したがそれらしき人は見付からない。 気にしないのが最善策と思い、その日はそのまま授業を受けて早々に帰宅した。 あくる日、授業中にも関わらずまたしても紙くずが投げられた。 一体、誰が何のために…?

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私は授業を真面目に受けているだけなのに、なぜこんな目に合わなくてはならないのだ。 全くこんなくだらない悪戯をするのは一体誰なんだ。 何だか段々イライラしてきて、思わず私はその紙くずを元通りぐしゃぐしゃに丸めて、ゴミ箱へ放り投げる。 すとんっ、と綺麗にゴミ箱へ落ちたそれを見て少し満足していると、同じくその一連の動作を見ていたらしい佐藤と目が合った。 「お見事〜」 彼はそう言って小さく拍手をした。

らん子

11年前

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そのまた次の日も紙くずを 投げつけられた。 もう〜怒った。こうなったら絶対に相手が誰か突き止めてやる! 私は紙くずをシャーペンで 塗りつぶし何が書いてあったか探ることにした。 何度も書き直されているせいかほとんど文字が潰れている。その中でかろうじて残った文字を拾っていくと ずっと 好き 放課後 教室 待ってる

さぼん

11年前

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はぁ? 授業中だが、声が出るかと思った。 シャイ?なのか? いや、それなら靴箱にでも入れておいてよ。授業中に投げるなんてふざけているとしか思えないから、これも含めて悪戯か。うーん、もしかしたら本と…いやいや、本当に好きなら消すなよ! 後ろの方の席の奴に聞けば、簡単に終わる話だった。でも、これをあえて楽しんでやろうと思った。悪戯ならば、絶対に仕返ししてやる。そう考えて、放課後は残ることにした。

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放課後、夕方の暖かな光が差し込む午後5時の教室。 ぐしゃぐしゃの紙くずを塗りつぶして見つけたメッセージの通り、私はその相手を待っていた。 しかし待てど一向に現れない。 「もしかして私のことからかってるんじゃ…!?」 自分の席に座り紙をもう一度開くとやはりそこには「ずっと 好き 放課後 教室 待ってる」の文字。 「もー帰ろ。」 諦めて立ち上がったその瞬間…。

なむ

9年前

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「一人?」 他に誰もいない教室で、それは私に向けられた言葉だとすぐ分かった。振り返ると後ろの出入り口を塞ぐように佐藤が立っていた。 「誰か待ってんの?」 誰か分からない人を待っていた、とは言えず。 「ううん、もう帰るところ」 「あっ……そ」 佐藤の前をすり抜けるように廊下に出て、暗くなった道を歩きながらふと気がついた。 忘れ物を取りに来たふうでもないのに、佐藤は何しに教室に来たんだろう?

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そう言えば、佐藤は私があの紙くずをゴミ箱に放り投げたところを見ていた。 いつから見ていたのだろう。 私が投げるところから? それとも、私を目掛けて紙くずが飛んでくるところから? 佐藤の席は私より後ろ。 紙くずが何処から飛んできたか、見ていたかもしれない。 街灯の下で立ち止まり、ポケットに手を突っ込む。 「ずっと 好き 放課後 待ってる」 あの紙くずの感触が、やけに胸をざわつかせる。 「ねぇ」

灰梅

8年前

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「紙、投げてたのあんたでしょ。」 ただのはったり。 「ど、どうしてそれを!」 あたり。 「私って視野広いの。」 「その視野、まさか前世はウサギ。」 「っ人だから!まぁウサギなら許す。」 「あはは。」 佐藤ってこんな顔で笑うんだ。 ちょっと可愛いかも。 「好きって書いてあったよね。」 「梨花に投げたんだけど外れた。」 「あんたがどうしてもって… え?」 梨花は隣の席。 もしかして振られたの、私。

黒林檎

8年前

- 完 -