第一次学校革命〜焼きそばパンをこの手に〜

「風紀委員会」と「図書委員会」と呼ばれる組織がある。学生の七割がどちらかの組織の関係者であることから規模をお分かり頂けるだろう。この二つは豪く仲が悪い。何かと小競り合いばかりしている。この巨大組織を監視する為に作られたのが「料理研究会」であり、その活動を妨げる為に「風紀委員会」が組織したのが「茶道部」であり、その活動を理由なく阻害するのが「天文部」である。 そして俺はそのいずれにも所属していない

朗らか

11年前

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はっきり言えば俺は優秀だ。テストは95点以下をとったことがない。成績もオール5。部活では県まで出たことがある。その他にも作文やら書き初めやらでとった賞状で自室の壁は埋めつくされている。 故に風紀委員やら図書委員は激しく俺を勧誘する訳だ。だが、入る気はない。これ以上成績を良くしても周りから騒がれて厄介なだけだ。そんな俺の元に手紙がきた。 【明日の業後、生徒会がある。君も参加したまえ。生徒会長】

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泣く子も黙る生徒会。 風紀委員会と図書委員会の役員、及び各部長で構成される組織である。 俺宛の手紙を盗み見た友人達がざわつきはじめる。 オイ、あいつヤバイぜ、あの生徒会から呼び出しだってよ… マジかよ… ヒソヒソと聞こえる声をよそに、俺は焼きそばパンを買いに購買部へ。 購買部は学内で唯一、学生組織の息のかかっていない中立地帯だ。 ところが。

11年前

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購買部はすでに生徒会の手によって陥落していたのだった。門徒広く発売されていた焼きそばパンは、風紀委員と図書委員が独占してしまっていた。あろうことか、カレーパンまで侍従にして、酒池肉林の限りの贅を貪っていたのだった。 「我々が焼きそばパンを独占してしまったのは不本意なことである。我々の目的はただ一つ。彼が生徒会の一員になるということだ。さすれば、捕虜にした購買部の縄を解くことも吝かではない」

aoto

11年前

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「あぁ、そうですか。ご苦労様です」 「え、ちょっと待ってよ。ねぇ、吝かでは無いのだよ。君の行動次第では……」 何か言っているが、無視して立ち去る。 しかし、内心俺の怒りは頂点に達していた。焼きそばパンの恨みは消えない。 やられたらやり返す。10倍返しだ。 取り敢えず、生徒会と風紀委員を潰そう。 何かいい方法はないか? そうだ、学園祭の実行委員長になろう。 一匹残らず駆逐してやる!

terry

11年前

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学園祭の実行委員長は立候補制だ。毎年、風紀委員会と図書委員会が出した候補者二人の一騎討ちとなるのが通例だが、今年は俺が加わり三つ巴の戦いとなった。 俺は第三勢力の料理研究会と天文部の支持を取り付け、さらに水面下に燻る反乱分子たちを動かし強引に当選を勝ち取った。 その他実行委員も第三勢力で固めることに成功した俺は、早速、企画の検討に入った。 今年の学園祭のテーマは決めてある。「革命」だ。

hayayacco

11年前

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そう、俺はこの腐敗しきったシステムをぶち壊す。 理由なら単純だ。別に正義を振りかざしているわけじゃない。 単に風紀委員会と図書委員会が俺の日常を妨げた。それだけだ。そして、それだけで充分なのだ。 やがて学園祭の日が訪れる。 学外の客も多く訪れるこのイベントで、この学校がもはや風紀委員会と図書委員会のものではないことを知らしめるのだ。

C.K.

9年前

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大本営と化した放送室より革命の火蓋は切って落とされた。 天文部の後方支援を受けた料理研究会のサーベランスは素晴らしく、風紀と図書それぞれから盗聴した破廉恥色の醜聞がスピーカーから垂れ流れる。 我が校は共学。男女比率も五分五分なのだから、犬猿の仲をロミジュリする輩など補習人口を上回るほどいた。 ここまで組織内の汚点が暴かれ生徒会が粛清に動かぬ筈はない。 だが生憎と俺の食べ物の恨みに抜かりはなかった。

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学内の執行機関である職員会議への根回しは済んでいた。 生徒会室を含んだ関係教室の全てが、講師陣によって差し押さえられたという報告を受け取り、俺は全校放送する。 「俺たちの革命は完遂された。俺はここに生徒会の即時解体、購買部の解放、俺の永世生徒長への就任を宣言する」 これが後に第一次学校革命と呼ばれる事件の顛末だ。 この後、生徒会残党との戦いや職員会議との確執などがあったが、それはまた別の話。

空夜

8年前

- 完 -