1番小さい巨人とクウ

 今日、僕はとても大きな人に出会いました。  身長は、15メートルくらいでしょうか。  彼を最初に見た時は、とても驚きました。逃げ出そうかとも思いました。  でもやっぱり、好奇心が恐怖心に勝ったので、話しかけてみることにしました。

12年前

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「すいませーーーん‼︎」 僕は大声で呼んでみました。 でも、彼の耳には届かないらしく、僕の方に全く気付いてくれません。 そこで僕は、建物の屋上に上がり、もう一度叫んでみました。 「すいませーーーん‼︎」

hyper

12年前

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「大丈夫、聞こえてる」 彼は落ち着いた声で答えました。 「でもね、きみ、いくらなんでも40階まで上がらなくてもいいんじゃないかなぁ」 「だって。さっき下から呼びかけても気付かなかったじゃない!!」 「あはは、ごめんごめん。ちょっと考え事をしていたものでね」 「考え事?」 びゆううううううううううううう ううううううううう ものすごい風!

髭鬘

12年前

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何かと思ったら、彼が手で仰いでました。 「ここは暑いなー。」 僕はフェンスに掴まりながら叫びました。「お願いだから仰がないで!」 それでようやく、落ちそうになっている僕の様子に気づいたらしいのです。 「ああ、ごめんごめん。」 彼は能天気に笑いました。マイペースな奴です。 「ねえ、何を考えてたの?」 「自分の星に帰る方法だよ。」 僕が聞くと彼はそう答えました。少し寂しそうな顔をしていました。

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自分の星、という非現実的フレーズにも関わらず、僕は納得していました。人によく似た姿をした彼の身長部分は、やはり地球に存在するものではなかったのです。 彼は故郷を見上げるように遠い目をして言いました。 「実は、私の住む星で私は一番背が低いんだ。その事を意識するのが嫌で、自分よりも小さい知的生命体のいる星に移住してやろうと思ったんだよ。でも、この星に来て分かったんだ。大きいことも存外不便だって」

流され屋

11年前

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「まったく困ったものだよねぇ」 彼はやれやれと言うように首を振りました。その振動で僕はまた屋上から転げ落ちそうになりました。 「帰る方法が無いの?」 慌てて立ち上がりながら、僕が訊くと、彼は照れ臭そうに笑いました。 「ロケットがあるんだけどね。いやはや、この星にへ来るまではここに住もうかと思っていたから、行きの分の燃料しか積んで来なかったんだ」 「燃料が必要なの?」 「ああ、特別な燃料がね」

kam

11年前

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「この惑星にもある?」 「ああ、たぶんあるよ。私の星ではクウという名だが…ここではなんと呼ばれているのだろ」 クウなんて物質の名は初耳です。僕は特徴を尋ねました。 「クウはクウを引き合わせる。互いのクウが高まると一つになり、新たなクウをどんどん生産しだす。故郷はクウで満ち溢れているが、背が低い私は残念ながら私のクウと合うクウを見つけられなかった。生産できないのに分けて貰うのは肩身が狭いものだよ」

真月乃

10年前

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その答えは僕を混乱させました。 「う〜ん。それじゃあ、分からないなぁ〜? なんのことだろう? ひょっとしたら、この星には無い物かもしれないね〜?」 「えっ? そうなのかい? それは困ったなぁ〜。どうしよう……」 今度は僕が彼を混乱させてしまったようです。 「僕は子供だから、まだ知らないだけかもしれないよ。だから、そんなにクヨクヨしないで! あっ、そうだ。ロケットを見せてよ」 「そっか。いいよ」

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高さが彼の3倍もある巨大なロケットにはなにかを吸い取るような穴がありました。 「ここからクウをいれるの?」 「そうだよ、でもクウがないからなあ。」 彼は悲しそうな顔をしていました。 「大丈夫、僕も一緒に探すよ!」 その時彼の心臓のところから光る物質のようなものが出てその穴に吸い取られていきました。 「クウだ!」 彼は喜んでその物質を眺めていました。 クウとは相手を思いやる気持ちだったのです。

- 完 -