うさぎの恩返し〜うさぎ依存な少女〜

あんなに好きだったのに。 けっこんの約束もしてたのに。 まさか、こんな突然お別れ しなくちゃならないなん てうそだよね? そうだよね? お前しかいないって、他の人じゃだ めだって言ってくれたじゃん! でも、本当は薄々気付いてた。 とうとう終わりなんだね。 うさぎ可愛い。

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そう、うさぎってかわいい。 ふわふわした腹回りの毛がたまらなく触り心地が良いし、エサを食べる時に小刻みに上下する口元もたまらなく魅力的。 失恋のショックに打ちひしがれている今でさえ、少しも色褪せずにうさぎを愛おしく思うことができるのだから、私はよっぽどうさぎが好きみたい。 そもそも、彼と別れた原因の一つもうさぎにある。私はうさぎが好きすぎるあまり、いつでもうさぎを携帯して生活していた。

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えさも、もちろん携帯してた。でも ルールは守ってたはず。 しずかでおとなしいうさぎだから、 ついついつれて行きたくなる。 てんすうをつけ るなら100点満点! かれし?もうどーでもいいや! しっぽもふもふ! にんじん食べる?食べない?キャベツ がいいの?そっかそっかー! みみも長くて可愛らしいなあ! は、伸びてない?大丈夫?

すくな

12年前

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なんかさぁ、うさぎをもふもふしてたらさぁ、彼氏なんてホントどうでもよくなってきちゃうわけ。 それくらいの癒しパワーと人を惹きつける魅力があるんだよ、うさぎって。 そういえば、彼氏にもうさぎについて延々語ってたことがあったなぁ。 いや、ことがあったじゃなくて、ほぼうさぎの話ししてた。 別れ話しの時には「もうお前、うさぎと付き合えよ」とかなんとか言われちゃったし。 あぁ〜も〜、うさぎ可愛い。

ほろろ

12年前

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「そろそろ勘弁してくれよ、ご主人」 だ、誰!? 私は辺りを見回した。しかし誰もいない。当然だ。ここは私の家で今日は休日。休日といったらうさぎのミミちゃんを愛でる貴重な日だ。それを邪魔する人間は誰であれ許さない!…というわけだから誰もいないはずなのだが。 「俺とご主人しかこの部屋にいないだろ?」 え…えええ!?嘘!まさか! 「こうして話すのは初めてだなご主人」 ミミちゃんがグラサンをして立っていた。

cto

12年前

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私は立ち上がり部屋の中にカメラが隠されていないか探し始めた。 ドッキリだわ!よくあるじゃないこーいうの! でも、いくら探してもカメラは見つからなかった。 「落ち込むなよご主人。俺も長いこと耐えてたんだ。」ミミちゃんが私の肩をポンとたたいた。 「あなた、男だったの⁈」 「ああ。長谷川も言ってただろうに、ちゃんと話を聞かなかっただろ?」 長谷川とは、ミミちゃんを譲ってくれた男性だ。

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「で、でもでも、長谷川さんにミミちゃんのことミミちゃんって名前にしましたよーって報告したとき、変な名前ですねとかそういうことべつになんにも言われなかったのに──」 「まぁ、落ち着けって。長谷川だって人のペットの名前にケチつけたりはし辛いだろ?」 混乱のあまり膝をつき、四つん這いになっていた私の頭をグラサン顏のミミちゃんがぽんぽんとタッチし優しく慰めてくれる。ああ、ミミちゃんすごくもふもふしてるよ。

nanamemae

12年前

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ウサギはタバコでも吹かしそうなダンディな声で言う。 「俺ももう年だ。生まれて11年ていやぁトックにくたばっててもおかしくねぇ」 急に悲しくなる。ミミちゃんが死ぬなんて考えてもみなかった。 「ご主人には世話になったし、感謝してもしきれねぇよ。だけど、俺のせいでご主人が幸せになれねぇんじゃ死んでも死にきれねぇ。それで、俺はあいつとヨリを戻して貰いたいんだ」 色々悩んだ末、彼に電話することにした。

terry

11年前

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『…もしもし』 「あっ…もしもし!私…だけどさ」 『…うん』 「私あなたの事、あの…」 ミミちゃんを見ると、静かに頷いていた。 「やっぱり好き!」 『…うさぎの次に…?』 「……」 否定出来ない自分を呪いたい! 『はは…俺もさ、やっぱりお前が好きだ』 そして私達はヨリを戻した。 「やった!ミミちゃん!…ミミちゃん?」 ミミちゃんはいつものベッドで寝ていた。 もう起きることはなかったけどね。

moti

11年前

- 完 -