ある日、森の中、くまさんに出会った。 花咲く森の道、くまさんに出会った。 「お嬢さん、お待ちなさい」 シャベッターーーーー!! すたこらさっさっさーのーさー。 「お待ちなさい!!」 すたこらさっさっさーのーさー。 「待つんだ待っ…お待ちなさい!!」
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「私はタダのくまではない。森の精霊なのだ。だから待つんだぁ!」 「私には関係ありません。あなたはタダの不審者です。」 すたこらさっさっさーのーさー。 「待ってくれ!いや、待って下さい!話だけでも聞いて!君のためになるんだよぉ!」 「…………それは私のお金が増える話なんですね?」 「えっ?」 「私の唯一の喜びは金を増やす事なので。」 こ、この子は純粋な人間では…………ない。
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「…お金、増えないのね?じゃ!これで!」 すたこらさっさっさーのさー。 「お嬢さんっ!お待ちなさーい! ちょっ、ちょっと!おとシーものっ!」 って、もう純粋じゃなかろうといいよな。この森のルールだし…ったく、もう。 「白い貝殻のおおお!小さなイヤリング~! 止まってよ!ホント!頼むから!」 ピタ「ありがと」 「ふぅ…ハイこれ。でね…」 すたこらさっさっさーのさー 何ですと⁉
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「ちょっとお待ちなさいよ!」 ピタ ふぅ、よかった。止まってくれた。 「お金が増えないんなら私の役になんか立たちません。」 すたこらさっさっさーのーさー なんと頑固な! それならこっちにも考えがある。 何が何でも話を聞かせてやる! なんかうるさいくまね……。 待て待てって。 お金のためじゃなかったら私には意味ないって。 すたこらさっさっさーのーさー どこまででも行ってやる!
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ちょっと待って? 喋るくまなんて、なんて珍しいのかしら? お金の匂いがプンプンしますわ ピタッと止まったお嬢さん 「やっと話をきいてくれるのかい?」 「ええ。ビジネスの話ならしてあげてもいいわ」 「え、、それはちょっと…」 「ならようは無いわ」 すたこらさっさっさーのーさー 「わかった!わかった!だから話しようよぉー」 ニヤリとお嬢さん、この娘やり手だ…
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「会員登録するだけで満額バックアップキャンペーンをやっている」 ピタ☆っと止まってくれたお嬢さん。 「精霊である私が親となり、顧客を集めている。いわば、もりのくまさんファイナンシャルプランナーだ。この保険に介入するだけで、森が焼けたとき、貯蓄していた君の木の実を」 すたこらさっさっさーのーさー 「森のどうぶつにとってはめちゃくちゃ掛け値のいい商品なのに!」
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「お嬢さんお待ちなさーい! ここで止まらないと、罰金とられるよ!」 ピタッととまったお嬢さんがものすごい勢いで詰め寄ってきた。 「どういうこと!?罰金ってなに?」 「お嬢さん、ち、近い…ご、ごほん。」 いいから、早くしろと急かされる。 「この森にはルールがあって、白い貝殻のイヤリングを受け取って、森で踊ることが必要なんだ。 それをしないで通り抜けると、罰金を支払わされる仕組みになっているだよ」
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「そんなのあなたが払って。あなた、森の妖怪なんでしょ?何でもできるじゃない。」 私は妖怪じゃない。熊の姿をした雇われ精霊だ。私にルールを変更する権限はない。もし勝手にルールを破った事が上司(森の神々)にバレてしまったら一方的に解雇されタダの熊と化しててしまうだろう。それだけは避けねばならない。私にとって死活問題なのだ。 この娘は気の毒だか、罰金を払ってもらうしかないな。
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私が改めて懇切丁寧に森のルールを説明すると娘は真剣に聞いた。さらには私の立場、すなわち森の神々と森を通行する人々との狭間にいる喋る熊という立場に同情し始めた。私も悩みを打ち明け心を開いていた。 「そっか、森のくまさん大変なんだね☆ あっ、熊さんココ!どうしたの?」 それは古傷だった。 「ならいい薬あるの!特別安くしちゃうよ?!」 私はすっかりその薬が欲しくなりお友達や神々の分までガッツリ買った。
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