彼女がいない一週間

『呪いのアプリ』 それをダウンロードした者は7日後に死ぬ。 そんな、どこかホラー小説じみた都市伝説が、まことしやかに拡がりだした。 1日目 俺は頭にきていた。 恋人にデートをドタキャンされたのだ。 さっきから「ゴメン」メールが何通もきていたがスルーをきめこんだ。 いい加減可哀想になり、開いた一通の中にそれはあった。 何気なくリンク先のURLをクリックすると画面が一瞬真黒になったが、そこには

黒葉月

13年前

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2日目 あれ?知らないうちに寝てた? 寝落ちとかしたことねーのに。よっぽど疲れてたのか? えーっと確か恋人にメール返そうと思ってたんだよな。 あんだけ謝ってたのに何時間も放置したから流石に怒ってるかもな。 俺はケータイの電源を入れた。…充電きれたのか? 電源をいれたが表示されたのはいつもの画面ではなかった。 真っ黒な画面の中に赤い文字で一言 『ようこそ』

ハイリ

13年前

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3日目 あの後、画面がフリーズしたまま電源も落とせなくなったので、わざわざバスと電車を乗り継いで、それでも最寄りのショップに持って行った。バグだと思ったから。 店員は修理に一週間程かかります、と言って、書類にサインを求めてきた。すぐには修理費に幾らかかるかわからないとは。しかしどうしようもない。代々機を受け取りショップを出た。 アプリ落としても良いのかな? この悲劇をTweetしてやる。

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4日目 なんだこれ 代替機を同期したら、スマホのアプリアイコンが全て、真っ黒になった。 おいおいこいつも壊れてるんじゃ… そのとき俺は思い出した。 あの都市伝説を。 『呪いのアプリ』 まさか… 焦りながらも、なんとか事の始まりの記憶を呼び起こす。 そうだ、あの日。 ドタキャンされて… ダウンロードを… 恋人に電話したが出ない。 そういえばここ数日学校でも姿を見てない。 ま さ か

Pachakasha

12年前

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5日目 俺は一体どうすれば・・・ 昨日、何とか友人達の話を聞くことができた。それらを総合して考えると、 ○恋人は例のアプリをダウンロードした ○ドタキャンしたのはそれから6日目 ○昨日までの3日間、だれも恋人と連絡がとれていない ○ドタキャンの理由が明確でない 2日後には俺の身にも彼女と同じ何かが起こるのだと考えると勉強にも身が入らず、メシも喉を通らない。 今の俺には何ができるんだろうか

key

12年前

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6日目 「ようこそ」と書いてあった文字が変わった。あれは都市伝説なんかではなかったんだと気付く。 相変わらず彼女とは連絡がとれない。 徐々に近づいていくその時を俺は待つしかないのだろうか。 そんなとき思い出すのは、彼女でも友達でもなく、あんなにうざったかった両親だった。 「死にたくないなぁ…」 そうつぶやいて携帯をみる。 画面には「運命には逆らえない」の文字。 この運命からは逃れられない

R2D2

12年前

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この日、台風が猛威を振るっていた。観光名所となっている近所の川の氾濫は周辺の携帯基地局に影響し、携帯がつながらなくなった。見るとアプリも停止している。電波不安定をかいくぐり一本の電話がなった。 「逃げろ!呪いなんかじゃない!殺人だ!お前のTweetで多量にアプリがダウンロードされ、基地局もやられ犯人は場所特定に手こずってる!電話を遠くに、、」 電話がきれた。時計を見るとまだ20時。 まだ間に合う。

zeni

12年前

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俺はケータイを片手に家を飛び出した。 降りしきる豪雨の中、川沿いを走る。まだ間に合うはずだ。 その時、ケータイが鳴った 「無駄な事はやめたまへ」 真っ黒な画面に赤字で表示されたその文字を見て、俺は確信した。 何が呪いだ。何が都市伝説だ。 息絶え絶えに俺が辿り着いたのは高台にある、中学の同級生の家…恋人の元彼の家だった。

瀬川 奏

12年前

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家の中には元彼と彼女がいた。 唇を合わせながら。 「なんだよ、これ…ふざけんなよ」 ドタキャンの理由は元彼とよりを戻していたからだ。 「だってあなたは私に暴力を振るうじゃない。だから友達にも協力してもらってたの。呪いのアプリをダウンロードしたのはあなただけ。死ぬのはあなたよ」 近づく死の影。冗談じゃない 懐にあったナイフを取り出す そのとき目の前が真っ暗になった 深夜0時の鐘の音が響いた

noname

12年前

- 完 -