家族の絆
君がやってきた日の事はよく覚えている。冬の朝、元気な姿で私たちの子どもとして迎えられた。
布悠……ふゆ、と名付けた彼女は、私たち夫婦の宝になった。不妊治療を諦め、里親制度をつかい、ふゆに会えた。
これから、すこしずつ親子になっていくの。
ふゆ、真実を知っても変わらないでいて欲しいから私たちは、特に厳しくもなくできるだけふゆの個性を大事にしていくの。
いい子にならなくていいの。元気なら。
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そう思っていたのだけれど、いざこの時になったら後悔はしたわ。それは昨日の出来事。
ふゆは健康そのもので育ってくれて、今はもう高校二年生になった。
毎日楽しそうに通っているものだから、こんなことになっているなんて知りもしなかった。
昼間、ふゆの担任の先生である野崎さんから電話がかかってきたの。
「ふゆさんがクラスメイトをいじめているらしいんです」
そんなのはありえない。そう信じたかった。
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私は、野崎さんに呼び出された。
野崎さんは、実は私の大学の時の後輩だ。だから、ふゆの担任になったと聞いた時はとても嬉しかった。
高校の職員室の隣の面談用の部屋で、私は野崎さんと向かい合う。
ふゆは教室で待たせてある。あとからここへ呼ぶという。
「ふゆさんは、明るくてしっかりした生徒さんですが……、クラスの全員がふゆさんのいじめを証言しているんです」
全員が?
私はむしろ違和感を覚えた。
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クラス全員をどうやったらいじめられるの?
何十人もの人を相手にするなんてそんなこと可能なの?
いいえ。できるわけがないわ。逆にふゆがいじめていられるのだと考えたほうが納得がいく。
皆で口裏を合わせればどうってことはない。
そうよ。ふゆがいじめるはずがない。そんなことできる子じゃない。
そんなこと、される子でもない。詳しい話を聞かなければ。
「いじめてるって…具体的にはどういったことを?」
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「ネットいじめ...と、言いますか、あるサイトにクラス全員を写真つきで載せたみたいで...不特定多数が見ますから、そこから、まぁ、誹謗、中傷等が書き込まれましてね...」
「クラス全員っていったら...」
「でも、ふゆさんだけ載ってませんでしたから...みんな、やったのはふゆさんだと」
「そんな!ふゆがやったって、証拠もないのに? ふゆは何て言ってるんですか!」
「知らない」と...
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強い憤りを覚えた私は強い語気で野崎さんに尋ねた。
「そのサイト、教えください」
自分の目で確認しなければ気が済まない。そんな曖昧な理由で子供を疑われれば、どんな親もそう思うはずだ。
「残念ですがそのサイトはもう閉鎖されてるんです」
野崎さんは渋い顔で続ける。
「それも、ふゆさんが疑われはじめてすぐのことなんです。それが後押しになってまして」
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そこでトントン、とノックの音が響いた。顔を覗かせたのは、教室に待たせていたはずのふゆだった。
「……あんまり遅いんで、来ちゃいました。教室は居心地悪くて」
そう言われると、もう追い返せない。
私の隣に座ったふゆは、まず真っ直ぐに私を見た。
「お母さんは信じてくれるよね?」
ここで私は、すぐに頷いてあげられなかった。するとふゆは、
「やっぱりだめか。本当の娘じゃないもんね?」
どうして、それを。
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「あたし知ってたよ、ずっと前から」
ふゆは冷たい笑みを浮かべていた。
私は呆然とした。大切に育ててきたはずの娘が、まるで別人に見える。この子は私たちのふゆじゃない。
そんな私の心を見透かすようにふゆは続ける。
「そうだよ。あたしがやったの。知らないふりで元気に笑っているのに疲れたの。あたし、本当の親に捨てられたんでしょ。だから家へ来た。そんな人間のこと、本当に好き? 何であたしを引き取ったの?」
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「ふゆのことは大好きよ。あなたのことが可愛いと思ったわ。勿論、私はふゆを信じている。真実を打ち明けるのが遅れてしまったのは、本当にごめんなさい」
頭を下げて、私はふゆに謝った。
「そこまでしなくていいのに」
ふゆは決まりが悪そうに私の手をとってくれた。
「誰だって親には反抗するものよ。ぶつかってきてくれて私は嬉しかった。本題に入りましょう」
真実がどちらであっても、ふゆは大丈夫だ。私は確信した。
- 完 -
作品情報
家族の絆
#3600
- リレー期間
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1年6ヶ月