眠気の果て

眠気覚ましに飲み慣れていない 珈琲を一気に一杯飲み干した。 こうもしていなければ生活なんてできない。 毎日、眠気との戦いだ。 現代社会における人々は、常に眠気と戦っているように思える。 一心不乱に働く姿がかっこいいと言われていた時代にも、まさに眠気と気力の戦いだったのであろう。生活をする為に働いているのではない。もしかしたら、何かを誤魔化す為に生きているのかもしれない。

honeyrose

13年前

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眠気に勝つために、何か無いものかといろいろと考えてもみるが、やはり気力が無ければ勝てないのであろう。 そんなことを考えてる今でも、眠気と闘っている。 そうやって闘ってる間に、空には星が光り月が雲に見え隠れしている。 空を眺めるのもたまにはいいものだ。 さて、もう少し頑張るか‼ と、気合いを入れ直して、仕事に取り掛かる。 後少しだというところで、いつの間にか夢を見ていたようだ…。

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奴はまだ帰ってきていない 私は重たいまぶたをこじ開け隣のビルの ある部屋を ライフルのスコープ越しに何時間も見張っている。 そう私はある国に雇われた狙撃手いわゆるスナイパーだ。 今夜のターゲットは戦争を始めようとしてるバカ国のお偉いさん、女遊びと酒と金が大好きなハゲ豚さ 名前はおぼえてない顔と身長おぼえればなんとかなる。 珈琲を飲んでから1時間経つがまだ来ない。眠い・・また眠気に襲われる

gokigen3

12年前

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奴も眠気と戦っているのだろう。何かを誤魔化すために夜を徹して、女を侍らせ浴びるように酒を飲む。夢のように莫大な金をぽんぽんと湯水のごとく賭け事に使う。 安らかに眠ることが許されていない気分になるのだろう。煌びやかな夜景の街では眠らない人々が闊歩する。 欠伸を一つ。 部屋に明かりが点いた。やっと帰ってきたようだ。眠気を奥歯で噛み締めて堪え、スコープに意識を集中させる。 窓が開いた。人影が見える。

lalalacco

11年前

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スコープが捉える残像を追いかける。 その瞬間に神経を尖らせ思考を捨てる。「今だ!」と思う前に、弾丸は捉えていたが… 目が覚めると留置場に居た。 どうやら、仕事を終えた後に睡眠へ堕ちたらしい、潮時がやって来たと言う事だ。 甘んじて全てを受け容れる、遅かれ早かれ形は違えど、この状況に陥るのは必然だったのだろう。 TVでは戦争が始まったとやかましく、要人を仕留めても、根源を経つ事にはならないと知る。

唐草

11年前

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それから取調べの日々が始まった。物的証拠は逃れようもない程に揃っていた。それでも自白は必要なのだろうか。あれこれ執拗に訊かれたが、ずっと黙っていた。 想像に反し、取調べは実に紳士的だった。日中の数時間だけ取調室に連れていかれる。残りの時間は鉄格子の中で、ぼんやり過ごした。 食事は三度、定期的に運ばれる。夜になると灯りが落とされた。規則正しい生活だった。眠気と戦う必要は最早なかった。

misato

10年前

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健康なライフサイクルを送る私にとって、眠気は敵ではなく、夜毎親しみを込めて私を訪問する気のおけない友であった。 今も世の中には過少な睡眠時間のため、必死に欠伸を噛み殺し瞼をこじ開け仕事やら娯楽やらに勤しむ人々が溢れているのだろうが、私はいち早く彼らの群れを抜け出したことになる。今の私は悠々自適、快眠を貪っている。何も不足はない。こんなに気持ちのいいことはない。少々退屈なのが難点だけれど。

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私は手に入れた規律ある生活に身を任せる。いつの日も、待ち遠しいのは眠気である。 深まる宵に看守から起こされる。手渡されたのは一枚の紙。開いて読んだ後に食べろという。書かれていたのは「仕事が入った」という文字。 ああ、またか。 看守はニヤリと笑みを零して立ち去った。翌日、私は留置所の外にいた。 「早速で悪いが、君に殺害してもらいたい人物がいる」 仲良くなれた眠気とは、またしばらくおさらばのようだ。

aoto

10年前

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そしてまた私は、スコープに目を押し当て、コンクリートに張り付き、ぴくりともしないブラインドを眺めている。 頭上では、檻までは届かない太陽がギラつく。装備の温度が上がりきっていた。 苛立ち。あの素晴らしき眠気は遠く、目を閉じる事は許されない。 ふいに陽光が強くなり、目が眩んだ。暗転。 真昼だというのに、夜になった。 ああ、はじめからこうすればよかった。 目を瞑ったまま、ベルトに挿した短銃を抜いた。

- 完 -