「夢」の中で「夢」を見る
【AM5:18】
私は目覚めた。
……はずだった。
これは何の冗談なのだろう?
明るい日光が零れてくる窓の向こうは、一面ヒマワリの花畑。
昨日までそこにあった街並みは?人々は?一体どこへ消えたの?
……いや、きっと私はまだ夢の中なのだ。
私は自らの頬をつねってみる。
痛い。
いやいや、錯覚なのかもしれない。もう一度寝て覚めたらきっと元に戻っているはず。
そう願いながら、枕に顔をうずめた。
- 1 -
【AM5:30】
私はまた目覚めた
…‥はずだった。
今度はあっちこっちに銃声や爆発音が響いて、兵隊らしき人達が誰かと戦っている。どうやら、ここは戦場みたいだ。
なんで?なんで戦争が始まったの?昨日までは、平和な街並みだってのに。
……いや、これも夢だ。
また頬をつねってみる。
…やはり痛い。
いやいや、まだ錯覚かもしれない。今度こそ寝て覚めれば元に戻ってるはず。
私は枕に顔を埋めた。
- 2 -
【AM6:30】
私はまたまた目覚めた。
窓から陽の光が差し込んできてまぶしい。
さっきのはやっぱり夢だったんだ。
窓の外を見てそう思った。
私は、階段を下におりてリビングへ行った。「おはよー。」
すると衝撃の光景が目の前に広がっていた。母と妹が血を流して倒れていたのだ。
「ちょ!お母さん!フミ!しっかりして!」私は慌てて駆けより2人の息を確かめる。
こっ、これは
殺人事件?
- 3 -
[AM7:00]
私は見事に騙された。
というより、偶然が重なりあったのだ。
母がリビングで歩っていて
妹が昨日、工作でつかった
赤いペンキを持っていて
その二人が衝突して、
2人とも痛さのあまり気絶して
いい感じに赤いペンキがこぼれて
こんな光景なっていたのだ。
朝から私は変なものを見てしまった。
- 4 -
【AM7:45】
目が覚めた。遅刻だどうしようと飛び起きたけど、床に転がっている携帯の日付を見て安心した。
なんだ、夏休みじゃん。
目をこすりながら部屋のドアを開けると、廊下がなかった。というより床がない。
カーテンを開けると、月のクレーターがはっきり見えるくらいすぐそこに。
あれ?ここが宇宙なら、ドアを開けたとき何もなかったのはおかしいよ?
また、夢を見てるんだ。
私はベッドに潜り込む。
- 5 -
夢の中で夢を見る。
目覚めながらも夢の中。
無我夢中で空気と闇を掻き分けて、長い永い時を彷徨い戸惑い喘いで仰ぐ。
ヒマワリ畑で兵士達は笑い、母と妹は赤いペンキでヒマワリを塗る。
時計の針はグルグルと回り、瞬く間に夏休みは終わり、
宿題は春休みになって進級しても未提出で、何もかもが夢になればいいのにと願う母。
出来の良い妹は宇宙飛行士になって月に降り立ち、時計が鳴った。
【AM7:47】
- 6 -
ペンの芯が折れ、意識を取り戻した。
私は、トルストイの「戦争と平和」の読書感想文を書きながら寝ていた。手にはシャープペンの感覚がちゃんとある。
今まで見てきた夢は結局なんだったの!?マジで意味わかんないし!
机には、色んな本でいっぱいだ。私は、さっきからビミョーに気になる、「2分間の宇宙」という本をめくり上げようとした。
ここでさ?
宇宙飛行士のフミが出てきたらマジでシャレになんないし。
- 7 -
シャレにならない事が起こるのが世の常!
いや、夢の中か?
ま、なんでもいいや。
とにかく、その本には宇宙飛行士のフミが載っていた。
宇宙遊泳をしているフミは片手にメッセージボードを持って、もう片方の手で遠くの宇宙船を指差している。
私はメッセージボードの文字を読んだ。
「あの宇宙船ヒマワリが敵の攻撃で被弾したの。で、技術スタッフのお姉ちゃんは爆圧で投げ出されて宇宙空間を2分間も漂ったのよ」
- 8 -
え?え?…え?
ぞぞっと寒気のようなものを感じる。
いや、これも夢だ。夢だ!
脳内に吹き上がる記憶の噴水を必死に否定する。
ロケット発射のカウントダウン
無重力の感覚
技術班
突然の爆発
夢。
最後の夢。
そして目覚めた時私は一体どうなっているのだろうか。
無の中にいるのだろうか。
恐怖で涙が出てきた。
怖い。目を、開けたくない。
【AM5:18】
私は目覚めた。
- 完 -
作品情報
「夢」の中で「夢」を見る
#5437
- リレー期間
-
3年4ヶ月