「夢」の中で「夢」を見る

【AM5:18】 私は目覚めた。 ……はずだった。 これは何の冗談なのだろう? 明るい日光が零れてくる窓の向こうは、一面ヒマワリの花畑。 昨日までそこにあった街並みは?人々は?一体どこへ消えたの? ……いや、きっと私はまだ夢の中なのだ。 私は自らの頬をつねってみる。 痛い。 いやいや、錯覚なのかもしれない。もう一度寝て覚めたらきっと元に戻っているはず。 そう願いながら、枕に顔をうずめた。

のくな

12年前

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【AM5:30】 私はまた目覚めた …‥はずだった。 今度はあっちこっちに銃声や爆発音が響いて、兵隊らしき人達が誰かと戦っている。どうやら、ここは戦場みたいだ。 なんで?なんで戦争が始まったの?昨日までは、平和な街並みだってのに。 ……いや、これも夢だ。 また頬をつねってみる。 …やはり痛い。 いやいや、まだ錯覚かもしれない。今度こそ寝て覚めれば元に戻ってるはず。 私は枕に顔を埋めた。

12年前

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【AM6:30】 私はまたまた目覚めた。 窓から陽の光が差し込んできてまぶしい。 さっきのはやっぱり夢だったんだ。 窓の外を見てそう思った。 私は、階段を下におりてリビングへ行った。「おはよー。」 すると衝撃の光景が目の前に広がっていた。母と妹が血を流して倒れていたのだ。 「ちょ!お母さん!フミ!しっかりして!」私は慌てて駆けより2人の息を確かめる。 こっ、これは 殺人事件?

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[AM7:00] 私は見事に騙された。 というより、偶然が重なりあったのだ。 母がリビングで歩っていて 妹が昨日、工作でつかった 赤いペンキを持っていて その二人が衝突して、 2人とも痛さのあまり気絶して いい感じに赤いペンキがこぼれて こんな光景なっていたのだ。 朝から私は変なものを見てしまった。

KuRiA

12年前

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【AM7:45】 目が覚めた。遅刻だどうしようと飛び起きたけど、床に転がっている携帯の日付を見て安心した。 なんだ、夏休みじゃん。 目をこすりながら部屋のドアを開けると、廊下がなかった。というより床がない。 カーテンを開けると、月のクレーターがはっきり見えるくらいすぐそこに。 あれ?ここが宇宙なら、ドアを開けたとき何もなかったのはおかしいよ? また、夢を見てるんだ。 私はベッドに潜り込む。

11年前

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夢の中で夢を見る。 目覚めながらも夢の中。 無我夢中で空気と闇を掻き分けて、長い永い時を彷徨い戸惑い喘いで仰ぐ。 ヒマワリ畑で兵士達は笑い、母と妹は赤いペンキでヒマワリを塗る。 時計の針はグルグルと回り、瞬く間に夏休みは終わり、 宿題は春休みになって進級しても未提出で、何もかもが夢になればいいのにと願う母。 出来の良い妹は宇宙飛行士になって月に降り立ち、時計が鳴った。 【AM7:47】

真月乃

11年前

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ペンの芯が折れ、意識を取り戻した。 私は、トルストイの「戦争と平和」の読書感想文を書きながら寝ていた。手にはシャープペンの感覚がちゃんとある。 今まで見てきた夢は結局なんだったの!?マジで意味わかんないし! 机には、色んな本でいっぱいだ。私は、さっきからビミョーに気になる、「2分間の宇宙」という本をめくり上げようとした。 ここでさ? 宇宙飛行士のフミが出てきたらマジでシャレになんないし。

望月 快

11年前

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シャレにならない事が起こるのが世の常! いや、夢の中か? ま、なんでもいいや。 とにかく、その本には宇宙飛行士のフミが載っていた。 宇宙遊泳をしているフミは片手にメッセージボードを持って、もう片方の手で遠くの宇宙船を指差している。 私はメッセージボードの文字を読んだ。 「あの宇宙船ヒマワリが敵の攻撃で被弾したの。で、技術スタッフのお姉ちゃんは爆圧で投げ出されて宇宙空間を2分間も漂ったのよ」

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え?え?…え? ぞぞっと寒気のようなものを感じる。 いや、これも夢だ。夢だ! 脳内に吹き上がる記憶の噴水を必死に否定する。 ロケット発射のカウントダウン 無重力の感覚 技術班 突然の爆発 夢。 最後の夢。 そして目覚めた時私は一体どうなっているのだろうか。 無の中にいるのだろうか。 恐怖で涙が出てきた。 怖い。目を、開けたくない。 【AM5:18】 私は目覚めた。

largo

9年前

- 完 -