安藤比呂美（２９） 安藤大輝（５） 岩井美羽（１９） 稲葉登志雄（５２） 植木誠（３４） 上原彩（２４） 牛島杏子（３３） 江波英樹（３６） 江波麻衣（３６） 江波玲奈（８） 遠藤香織（２６） 大川哲也（６９） 大川幸子（６７） 太田宏一郎（３４） 大原久子（５３） 岡悠斗（１５） 沖津敬一（２７） 沖津遙（２４） 角田徹（６３） 神原健一（３８） 神原美佳（３４） 神原陽菜（９） 神原健太（７）

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「ママァ、今日は早くお迎えくる？」 息子の大輝が甘えた声で聞いてくる。早く靴履いて！安藤比呂美は焦る気持ちを抑えてニッコリ笑う。 「なるべくね」 大輝の背を押すようにして玄関を出る。 「おはようございます。先行ってエレベーターのボタン押してますね」 岩井美羽は同じ階に住む大学生。木曜日のこの時間はいつもエレベーターで待っていてくれる。 「ありがとう」 マンションを出ると管理人の稲葉さんがお掃除中。

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「やっと晴れましたね」 比呂美が声をかけた。 「ああ、昨日は酷かったねえ、台風一過でこっちは大忙しだわ」 稲葉さんは顔をしかめて笑った。 同じ頃、植木誠はマンションの駐車場で欠伸をかみ殺していた。 (くそ、また遠出の取材か。今朝は３時間しか寝てないってのに…) 誠がキーを取り出したその時、凄まじい物音と共に女の悲鳴が鳴り響いた。 駆け寄ると、頭から血を流した女が地面にうつ伏せで倒れていた。

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この人は上原彩さんだ、と名前を思い出す。 「上原さん、しっかりしてください！」 そこへ丁度、病院の夜勤を終えて少し眠そうな女性ー牛島杏子が通りかかったので、助けを求める。 上原さんは、応急処置を施され、救急隊員のストレッチャーで運ばれていった。 「お父さんは、何にのりたいー？」 江波英樹は、妻と娘の支度を外で待っていた。何しろ、女の支度は長い。 今日は、3人で遊園地へ行くのだ。

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「うーん…あ、救急車！」 「え⁉︎救急車に乗るの⁉︎」 「違うよ！ほら、外！」 麻衣と玲奈の二人が英樹の指差す方を見ると、そこは先程の事故で大騒ぎになっていた場所だった。 「あ、香織お姉ちゃんだ！」 そこには、隣に住む遠藤香織が何やら警察から事情聴取を受けていた。 「私、何も知りません！」 「とりあえず、話だけでもお聞かせ願いますか？」 すると、警察の前に大川哲也・幸子夫妻が現れた。

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「上原さんはワシらと同じ階に住んでるお嬢さんで。今朝は８時頃にご出勤でしたよ」 「回覧板を届けに玄関を出た時バッタリお会いしまして……」 大川夫妻の目撃証言に、警察が信憑性を確認する。香織も知る限りを伝えて駅へ急ぐが遅刻になりそうだ。 警察の姿に気付き、一丁手前でタクシーのメーターを止めたのは売れない芸人・太田宏一郎。 無名に等しく、情報通で野次馬を豪語する大原久子にすら気付いてもらえない。

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大原久子がこの一大行事を見逃すはずはなく、早速隣のマンションの噂仲間に電話を掛ける。 その横で岡悠斗は登校前に 「とうとう奴らが動き出したか……」 と花壇の角に立ち、腕組みをしたまま思案顔だ。 沖津敬一・遥夫妻はもうすぐ産まれてくる息子の名前を「愛人(あいんちゅ)」にしようか「神皇(てっぺん)」しようか相談していた。 角田徹は警察の事情聴取に 「冷蔵庫の栗羊羹なぞ知らん！」 と大変な剣幕だ。

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神原美佳はまだ夢の中だった。水商売で、朝から起き出すことはない。でも下が何やら騒がしいので、歯科医の主人健一と2人の子陽菜と健太に尋ねた。どうやら警察が来たらしい。被害者の上原彩は同じ店の娘だ。香織の恋人橘内輝が彩にご執心のようで、振られる寸前だった。危機感を覚えた香織は思い余って犯行に及んだ。警察は事実関係を整理し、逮捕に踏み切るのだろう。よくある事だ。「キー君はあたしのもの」「負け惜しみ」

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今朝、述留市西区の交差点で、有毒ガスを運搬中のトラックに女性が轢かれ、また有毒ガスの吸引によって計23名が死亡する事故が発生しました。トラックは女性を轢く直前に大きくハンドルを切り、女性を引きずったままマンションに激突。荷台に載せていたガスボンベが散乱し付近に住んでいた男女合わせて22名の死亡が確認されました。現在は事故現場周辺の通行止めは解除されており、人体に影響は無いとの事です。

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