ーーーーーーザザッーーーーーージジジッーーーーーージジッーーーーーーザザザッーーーーーーピーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
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高速を走っていた。 ラジオを聞きながら走っていた。 突然、ラジオが嫌な機械音をあげた。 「おいおい、故障か…」 私はドンドンとラジオを叩いた。 ガーーーーピィーーーーーー プツン。 「焦っているだろう。だが、安心しろ。故障ではない。」 ラジオが話し始めた。 「君が今乗っているこのレンタカーには、特殊な爆弾が仕掛けられている。スピードを60キロ以上に保てなければ……………ドカンッ!だ。」
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「何だこれ?ドラマか?朗読か?」 昔そんな映画があったけ。 「ドラマでも朗読でもない。これはリアルだ」 ラジオは見事に私の反応を先読みし、あたかもリンクした様な台詞で返してきた。 「うは、なんかよく出来てるな。台本誰だろ?後でチェックしてみよう」 しかし、リスナーの中にはこれを真に受ける奴もいるんじゃないか?と、私は内心呆れもしていた。今日の高速は空いてて良かった。事故には巻き込まれたく無い。
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そうこうしているうちに前方にSAが見えた。 「少し休憩するか」 私は速度を落とした。 そして、時速70kmまで落とした時だった。 ピッ、ピッ、ピッ、ピッピッピッ… ん?何だこの音? ピッピッピッピーピーピー… まさかこの音、車のスピードに反比例して速くなってるのか⁉ 私は慌ててスピードを上げた。 ピーピーピーピッピッピッ、ピッ、ピッ… 音は再び遅くなり、同時に私は青くなった。
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まさか、と思った。ありえない。 恐怖は次の瞬間を想像するからこそ、膨れ上がる。はけ口はない。 アクセルにかけるつま先が震えてつりそうだ。 思考がショートして、うまくものを考えられない。 スピードを出さないと、スピードをださないと。 ブオン、と荒い鼻息を車が吐いた。 慌てて、緩める足先に鳴る恐怖音。 突然、思い出してガソリンメーターをみる。 ランプは三分の一を下回っている。
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どどどど、どど、どうしよう。「何だよ。何だってんだよ。俺、レンタカー借りて実家帰ってるだけじゃん!何も悪いことなんかしてねーよ!何でこの車なんだよ、レンタカー屋もちゃんと点検しとけよ!あいつ、チャラいなと思ったんだよ。違う店行きゃ良かったー、あー、あぁー!!ムカつくムカつく!今度行ったら絶対ぶん殴ってやるからな!絶対にだ!」 『今から指示を出す。我々のいう通りに走れ』
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『二つ前の車が見えるか?いいか、あの車を気づかれないように追え!』 カーチェイスなんて、映画でしか見たことねーぞ!しかも、こんな赤い車で気づかれないようにって無茶な…!手に汗をかいて、ハンドルが滑りそうだ。怖い! あと後ろ、車間距離近いぞ! …はっ、これは助けを求めるチャンスだ!後ろの人は誰…、怖そうなお兄さん!ど、どうしよう。こちらを睨んでるよ。でも、構うもんか。お兄さん!SOS!
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手を振って知らせよう SOS!えすおーえーす!!ぶんぶん 『あっははは!何か手ぇ振ってるし!超一生懸命ー……ごほん、何をしているのか』 「見られてるのなら、助けも呼べない。もういいや、60キロまで落とそー」 ラジオに語りかけるように言ってみた。 ピッピッピーピーピー… 速度は落ちてないのに音が速くなる。 『爆発するぞ?速度あげたほうが良いと思うなぁ、私は』 この喋り方には心当たりがある
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「お前、その声…‼」 『ふふふ、気がついたぁ?』 「お袋⁈」 『違うわ‼』 え、誰だっけ? 桐島?違う、あいつは 部活を辞めた。 二宮?違う、あいつは アイドルしてる。 坂野?違う、あいつは ゲッツだ。 誰だ?ま、いっか。 ていうか、渋滞がヤバイヤバイ… ヤバイじゃん⁈このタイミングで渋滞って いじめかよ 泣 あーさよなら、俺の人生。 ピーピーピー…スンッ。 って何もねえのかよ‼‼
- 完 -