元彼はスーパーヒーロー
ねぇ君は
今どこで何してるの?
幸せなの?不幸なの?
恋人はできた?
新しい友達はできた?
元気にしてる?
ねぇ
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私はスマホのメッセージを見て溜息をついた。
元彼からだった。
正直、あいつって本当に馬鹿だ。幼稚だ。ワガママだ。
そんなシツコイところが嫌で別れたのに、未練たっぷり。いい加減にして欲しい。
もう私には新しい彼だっている。
さて、なんて返せばいいかな。
- 2 -
元気にしてる。
新しい友達も出来た。
彼氏も出来た。
私は今の生活に満足しています。
私を幸せにしてくれる人はもういるので、心配しないでください。
もう二度と連絡してこないでください。
こんなところだろうか。
画面右上にある送信ボタンを押して、すぐに新しいメッセージを開く。
今日の晩飯一緒食べよ^_^
彼氏の智也からだ。もちろん、と返事をしたところで、着信音。
……元カレからだった。
- 3 -
お願い
さみしいんだよ。
淋しくて死にそうだからお願い来て。
電話口から聞こえる声にわたしは少し呆れた。
もう電話してこないで。
そう一言いって、相手の返事を聞かずに電話を切った。
元彼の遠い昔の記憶が蘇る、あいつは
- 4 -
いつも唐突だった。
「今日会える?今すぐ来て」
誘いはいつも相手本位。だけど掴み所のないその横顔を嫌いにはなれなかった。
あいつの中で私は、サークル、友達、先輩後輩、バイト、勉強、飲み会、趣味、数ある項目の最下位に泳がされていた。
釣った魚に餌を与えない男。だから魚はもっと魅力的なウキに食いついた。
でも、と思う。空腹だったからではない、自ら望んで身を委ねたのだ。心地よい今の水槽を出る気はない。
- 5 -
暫くするとインターホンが鳴った。
智也だ。
冷蔵庫から缶ビールを二つ取り出し、テーブルに置くと、携帯をソファーに放り出して玄関へ向かった。
「早かったね」
そう言ってドアノブに手をかけようとした時だった。
なんとなく胸騒ぎがした。
- 6 -
テーブルに置いている携帯が誰かからの着信を伝えている。ドアの向こうにいるのが本当に智也なのか少し考えて、足音を立てないようにテーブルの携帯を見る。
鳴り続く携帯はやがて途切れて留守電にかわった。再生してみると智也からで、
『電車遅延で遅くなるから。また連絡するよ』
──ドアの向こうにいるのは誰?
そう思ったとき再び携帯が鳴る。それは元彼だった。
『早かったねって、待っててくれたんだ。ドア開けて』
- 7 -
さあっと血が引くのが分かった。
どうする。警察を呼んでしまおうか。ストーカーが来ています、って?相談していたわけでもないのに、警察は動いてくれるのかな。
待っていれば、きっと、智也が来て、追い払ってくれる。…ううん、だめ。電話してくるほどの遅延だ。
ピンポンピンポンピンポンピンポン
ガタガタガタガタガタ…
異常な催促に固まる。携帯が着信音をたてた。
『入れてくれないと、近所迷惑になっちゃうよ』
- 8 -
「ベランダ見ろ!」
元彼が叫ぶ。
カーテンの隙間から男の影が見えた。キラリと何かが光る。包丁だ。
「た、た、助けて…」
その瞬間、包丁を持った智也がベランダから入ってきた。
逃げなきゃ…咄嗟にドアノブに手をかけた。
気づいたときにはもう遅かった。元彼が部屋に入ってくる。しかし、元彼は智也を投げ飛ばし、私を助けた。
「ストーカーのふりをしなきゃ、君は僕を無視しただろ。助けることができてよかったよ」
- 完 -
作品情報
元彼はスーパーヒーロー
#8717
- リレー期間
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2年6ヶ月