あんぱん長者

俺の全財産、115円。 近所のパン屋で残り一個のあんぱん買って、残金0円。 途方に暮れていたら、そのパン屋の前で、子どもが泣いているのを見つけた。その隣で、その子の母親らしき人が必死でなだめている。 どうやら、そのパン屋のあんぱんが食べたいと泣いているらしい。 かわいそうなので、俺の唯一の財産であるあんぱんをその子にあげた。 代わりに、その母親が豚まんをくれた。 俺の全財産、豚まん3個。

ウサナギ

10年前

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豚まん3個という財産を持って、 いい事をした気分で歩いていると、 豚まん屋さんがあった。 豚まん屋さんの前で小学生3人が ゲームをしていた。 ゲームをしていた小学生たちは、 豚まんが欲しかったのか、 とてもガッカリしていた…… しょうがない。あげるとするか。 そう考えて、豚まん3個をあげた。 すると、ドーナツ6つをくれた。 なぜ6つ⁈ そんなに豚まんが欲しいんだな。 俺の全財産、ドーナツ6つ。

Ross Holt

10年前

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ははは、これじゃ まるでわらしべ長者ではないか。そう思いながら進んで行くと、6人のガキが道の真ん中でたむろしていた。困ってる人もこんなにいるじゃないか。しょうがない。俺は全財産のドーナツをガキ共に渡して道を開けてもらった。 すると1人の少女が俺にビスケットをくれた。そして少女は何か思いたったかの様にビスケットをポケットの中に入れて、勢い良く叩くとビスケットが2つになりました。 何で増やすの⁈

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うん、悪くないわ。少女はそう言い頷くと、ジャンバースカートの真ん中に付いていたポケットをビリっとはがした。何というか、某アニメのネコ型ロボットのそれみたいだな。 そしてビスケットを一枚入れたポケットを俺にくれた。 あーそういえば、こんな感じの童謡あったような。 ビスケットだけじゃなく、倍増ポケットもセットでくれるなんて気がきくな。そんなにドーナツ好きだったのか? 俺の全財産、ポケット1つ。

ゆりあ

10年前

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ドーナッツ6つがポケット1つか…ちょっと損をした気分だな… そんなことを思いながら歩いていると、スボンのポケット部分が破けた男性が前から歩いてきた。 着てる服の生地にも違和感はなかったので男性にポケットをあげた。 代わりに男性は上に来ていたスーツをくれた。え!?ここで、それをチョイスしてくるのか…この男性。男性はズボンに満足して走り去っていった。 俺の全財産、スーツ1着

スパーミ

10年前

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スーツ一着を持っているとなんだか違う気分だ。 なんか、なんでもできるような気がしてきた。 よし!バイトの面接受けるぞー! そしてコンビニ。 「では、また後日お知らせします」 俺は面接を終わった。 と、そこに質屋が。 なんとなくこのスーツいくらですか? と聞くと、 三万円、と言われた。俺はすぐさまスーツを売った。 現金のほうがいいもんね。 しかし、これって高いのか? 俺には価値がわからない。

1106

10年前

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-- ええと、確か現金が。アレ無いな、さっき銀行の支払いに充てちゃったかな。 「申し訳ありません。お客さん。現金が入って来るのが明日以降になるんですよ」 「えー。もっと早く出来ないの?」 「いつもは現金が有るんですが、今はロサンジン作の器だけしか無くて……」 「で。その器は3万保証してくれるの?」 「ウチも取扱いが初めてなんですが、その分は確実に保証します!」 全財産、3万円相当以上の器

響 次郎

10年前

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桐の箱が立派すぎて、何だか人目が気になるな。 盗難と破損防止に箱を抱えて、質屋を出ること数分。前から歩いてきた大学の同期が俺を見てサッと青ざめた顔になる。 え?何事⁇ 「嘘でしょ…それ、私のお婆ちゃんが止むを得ず質に入れたものだったのに」 ええっ⁉︎マジか! 彼女──同じゼミの神田いわく親戚のパン屋が資金繰りに困った時期があり、黙って祖母が質入れした器らしい。 俺の全財産、ど、どうすれば…

おやぶん

10年前

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「仕方ない……その器、これと交換して」 神田が差し出したのは、ふっくらと焼きあがった美しいあんぱんだった。 「こ、これは……」 「ただのあんぱんだと思わないでね!あんにとんでもなく貴重で美味な塩を使った、究極にして至高、奇跡のあんぱんよ!」 ──そうか。思い返せば、俺が近所のパン屋で買った115円のあんぱんが全ての始まりだったな。 「神田、ありがとう」 「は?」 正に、値千金の取引だよ。

まーの

10年前

- 完 -