ようこそ美女部へ

美女部 私、栗山マヒロ。青空高校の1年生。今日が新学期。まだ部活が決まってない。でも入って見たい部活がある。それは美女部だ。美女部は美女が入れる部活だ。私は美女じゃない。でも入って美女になりたい!そして顧問の愛子先生に入部届けを出しに行った。 そこには4人の美女部の先輩がいた。

noname

12年前

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「なんだ、美女じゃないじゃないこの子」 いきなりの第一声に私はポカンと口を開けた。それを言ったのは腰に手を当てたスラリとした少しつり目の先輩。 安定の美女だ。 「そうね、普通...の下くらいかしら?」 隣にいたほんわかした雰囲気の先輩がグサリと直球の言葉を投げてくる。 「スタイルは悪いし」 「めは小さい」 そっくりな双子の美人の先輩が続けざまに言う。 そうこの美女達は性格が悪い…

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「何の用事かしら?」 冷たく言い放たれた言葉に涙がでそうになる。いや、泣いちゃだめだ。事実だもん。 「私を部員にしてください!」 言った。ついに言ったぞ、私。 目の前にはポカンと口をあけた先輩方がいた。そんな姿も綺麗だった。美女って何をしても絵になるんだなとしみじみ思う。

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「あのね…」 そう言いかけた先輩の言葉を遮って私は言った。 「私を美女にしてください」 その私の言葉を聞いて先輩方は相談を始めた。 「ねえ、どうする?」 「どうするって…でも、面白いんじゃない」 「私たちのノウハウでもってこの普通の下を美女に変身させるってのもありかもね」 「美女部の力を見せるにはいいチャンスよ」 4人の美女が一斉に私を振り返り声を合わせて言った。 「ようこそ、美女部へ」

Noel

12年前

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「待ちなさい」 顧問の愛子先生だ。 「大事な大会を控えているのよ。伝統ある我が美女部が予選敗退にでもなったらどうするの」 「大会、ですか?」 「全国高校美女大会、美女の甲子園よ」 ほんわか先輩がそっと教えてくれた。 「この子で団体戦を勝ち抜けるの?」 「彼女の薄い顔はメイクで化ける。勝機はあります」 先生の言葉に応じたのは安定美女の先輩だ。 さらに双子先輩が続ける。 「あとは髪型と」「体型ね」

hayayacco

12年前

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先輩たちは本気で私のプロデュース会議を始めだした。そして、整形とまではいかないものの、かなり見違える変身テクニックがいくつか採用されたのだった。 そして、運命の大会当日。 個人の部は見事、安定の美女先輩が優勝した。 「私が個人で優勝したことだし、まぁ、そんなに気張る必要はないわよ」 「、、、はい」 私は「見違える変身テクニック」をいたるところに駆使した姿で答えた。

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そして、いよいよ団体戦。 こちらは個人戦とは異なり、5人1組で様々なお題で美女ぶりを発揮し、その合計点で競う。 で、私達の組はと言えば、順当に点数を上げ、トップと僅差に迫っていた。 そして最後のお題は子供との触れ合い。 だが、ここで予想外の事が起こった。 「は〜い、こっちへいらっしゃい♡」 と、安定美女の先輩は、満面の笑顔で子供の前に手を差し伸べた。 だが、次の瞬間、 「ふええ〜〜ん‼︎」

hyper

11年前

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私は負けを確信した。 たぶん、この子は先輩のケバケバしい化粧と作り笑顔が怖くて泣き出してしまったんだろう。 慌てて双子の美女先輩がフォローに入ろうとするが、子供は全く泣き止む気配がない。焦り始めた先輩のメイクが崩れ始める。ほんわか先輩はそれを見てバカみたいな顔で突っ立っているだけ。こういう状況に出くわしたことが無かったらしい。 トップのチームは穏やかに交流しているのに。 私達と何が違うんだろう?

kam

11年前

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はっと気がついた。子供は人間の本質を見ている。心の美女度が試されているんだと。私はスカートが汚れるのも構わず膝をつき、子どもの顔を覗き込んだ。 「お姉ちゃんと一緒に遊ぼ!」 鬼ごっこ、隠れんぼ、全部本気で遊ぶんだ。いつの間にか美女先輩達も一緒に、六人で制限時間目一杯遊んだ。 私達は僅差で準優勝となった。でも、 「来年こそ優勝よ」「はいっ」 汗でメイクが崩れた先輩の顔は、普段よりずっと美しかった。

lalalacco

11年前

- 完 -