“貴方に一目惚れしてしまいました。 貴方のこと、ずっとずっと好きでした。 付き合ってください。” 1年前、偶々同じ電車になった、あの赤髪を、大きな背中を、窓の外を見つめるきれいな瞳を、気付けば追いかける自分がいた。 ああ、やっと言えた。 頑張った、私頑張ったよ。 あれ? それにしても無反応続きすぎじゃない? 私はゆっくりと顔をあげた。
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さっきまでそこにいたはずの、赤髪の彼の姿は、もうどこにもなかった。 「そんな......」 一生懸命、勇気を振り絞って告白したのに。 やっぱり、知らない人からいきなり告白されてびっくりしちゃったのかな。だけど、黙っていなくならなくてもいいのに。 私は悲しくなって俯いた。 すると、足元にさっきまでは確かになかったメモが落ちているのを見つけた。 もしかしたら、彼からのメッセージかも。
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「なぜ俺が見える? こちら側の者なのか? ここでは危ない。南口改札を出て右手のビルの地下駐車場に来てくれ。」
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「なんだ…ろう…これ 俺が見えるってなに? ここでは危ない?」 私は、気になって仕方がなかった 「気になるし…いってみようかな危ないって書いてあったし…」 そうつぶやき、私は南口改札に歩いていった ~南口改札~ 「着いたけど…どこにいるんだろう…」 「ここだよ」 ビクッ いきなり背後から、声が聞こえた 「び…ビックリしたぁ~」 「ごめんごめんっ驚かせちゃったね」
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彼は飄々としていた。 まるで、面くらったような 顔で。 彼の口からゆっくりと、言葉が漏れる。 みやびなのか、、、? 顔をあげると、懐かしい笑顔が、、。
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「みやび? もしかして、みやびなのか!?」 彼が急に私の手を掴んで来たので、面食らった。 「一般人に俺が見えるなんて、おかしいと思ってた。でも、それなら納得がいく。また会えるなんて……」 正直、意味がわからない。でも、懐かしそうな顔で微笑む彼を見て、顔が赤らむのを感じた。 「あ、あの……」 戸惑う私に、我に返ったのか手を離して彼は言った。 「ごめん。急に驚いただろ。でも聞いて欲しいことがあるんだ」
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みやびと俺は前世で永遠を誓い合っていた。でも、両家の親に反対されていてね。だからこっそり会って愛を育みながら、粘り強く親たちを説得し続けていた。しかし、許される日は来なかった。みやびが政略結婚させれることになってしまったんだ。いよいよ会えなくなると確信した俺たちは来世でまた会うことを約束して、そしてーー前世に別れを告げた。そしてやっと生まれ変わったかと思えば、再開する前に俺が死んでしまった。
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「ーそして、俺は浮遊霊になった。まだ、今世から来世へ生まれ変わる事のできない理由があったからだ。」 「理由……? 」 「そう、理由だ。いわゆる、俺の願望だな」 彼の言う願望とは一体なんなのだろうか。 気になり問おうとするが、それは失敗に終わった。 「……っ⁉ 」 彼の唇が自分のそれに重ねられたから。 すぐに彼の顔が離れていく。触れるだけの軽いキス。 私は何も考えられなくなった。
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「それは、現世のきみに誓う事だよ。」 「なっ、なにを?」 私にはみやびの記憶なんてないのに。 「来世でも、また君と恋をします。」 「えっ、あのっ…でも!」 「君には僕との記憶はない。でもこうしてまた僕と出会った。きっと来世でも僕達は見えない何かで繋がっている。」 彼は優しく私を抱き締めた。すると…涙が溢れた。 魂が、覚えている。 またね。大好きだよ。と… 彼は笑って、静かに夜空の星になった。
- 完 -