雨が降りました。 涙と混ざりました。 海が泣きました。 太陽が涙を吸い上げました。 氷が溶けました。 水になりました。 人が死にました。 涙が零れました。
- 1 -
ばらが咲きました。 蜂がふらりと現れました。 風が吹きました。 葉っぱが1枚ちぎれました。 夜になりました。 雲が星をのみこみました。 あなたが生まれました。 微かな光が差しました。
- 2 -
笑顔が咲きました。 日が昇り、落ちました。 月が包み、星が輝きました。 小さな光が少し大きくなりました。 痛みを知り、優しくなりました。 喜びを知り、暖かくなりました。 愛を知り、強くなりました。 別れを知り、出会いを知りました。 光は光を呼びました。 新しく微かな光が差しました。 光は少し小さくなりました。 光はもっと小さくなりました。 光は消えてしまいました。
- 3 -
また雨が降りました。 光は陰りました。 笑顔は散りました。 涙が溢れました。 それでも日は昇り、落ちました。 月もまた、星と輝きました。 あなたはただ、私を抱きしめました。 私もあなたを抱きしめました。 寂しさを知り、愛おしさを知りました。 何度も、過ぎ行く月日を抱きしめました。 そして、また笑顔は咲きました。
- 4 -
日が昇りました。 日が沈みました。 月が顔を出しました。 星が輝きました。 そしてまた朝がやってきました。 ただ同じことを繰り返しました。 それなのにあなたの笑顔は消えました。 私の心の空白もどんどんと大きくなりました。 私とあなたは次第に見詰め合うこともなくなりました。 咲いた笑顔も溢した涙も全て枯れてしまいました。 あなたは私の前から姿を消しました。
- 5 -
人が一人いなくなりました。 涙は出ませんでした。 雲が流れました。 ただただ流れました。 心には何も残っていませんでした。 愛が消えました。 涙が消えました。 寂しさが消えました。 痛みが消えました。 喜びが消えました。 抱擁の心地よさが消えました。 雨の日がありました。 晴れの日がありました。 風の日がありました。 私が輝く日はなくなりました。
- 6 -
「そろそろかな」 彼女は呟きました 次、星になるのは誰だろう 私が知らない人かもしれない 私の最愛の人かもしれない もしかしたら私自身かもしれない 死ぬのは怖いかと聞かれれば 「そうでもない」と答えるだろう 一番怖いのは一人になること 孤独に抱かれて過ごす日々が 何よりも怖かった。
- 7 -
今夜は、一段と星が輝いて見えます ねえ、あなた、 私の願いを聞いてくれる? 私は、ただあなたを愛しているの それだけは、未来永劫変わらない でもやっぱり、あなたがそばにいないと 怖くてしょうがないのです 私の願い 変わらず、私のことだけを見ていてほしい 私だけを抱いてほしい エゴだと言われてもいいの *** そろそろ、星が流れ始める時間が来たわ 残された時間はあと少し。
- 8 -
闇があたりを隠しました。 光が私を包みました。 消えたはずの温もりがそこにはありました。 散ったはずの愛がそこにはありました。 孤独が終わりを告げました。 そして闇がすべてを隠しました。 星が流れました。 涙が零れました。 空と混ざりました。 雨が降りました。 大地が潤いました。 微かな光が差しました。 そしてまた、笑顔が咲きました。
- 完 -