ガムフェチ殺人事件

ここは、郊外のN市。町での話題は最近発生している物騒な連続殺人事件。被害者はみな男性ばかりが5人。でもその5人を関連づけるものは何もない。ある人は、数学教師。ある人は医者。そのほか、学生、会社社長、絵描きと職業もてんでバラバラ。 奇妙なことに、被害者の死に顔はみな穏やかだった。もっと奇妙なことは、事件の現場。きまって、あるものが散乱しているのだ。

noppo

14年前

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「やっぱり犯人はガムが好きなんだろうな」吉田がいつも通り間の抜けた発言をした。そのうちガムを売っている店を探し出せなんて言うに違いない。 「おい、このガムを売ってる店を探し出して不審者が買いに来なかったか聞き出せ。」 はいはい。探しに行きますよ。このどこにでも売っているガムですよね。日本中で扱っていない店を探す方が難しいと思われるぐらい何処にでもあるこのガムで良いんですよね。

didi

13年前

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クールミストガム。日本中どこにでもあるガムだ。やれやれ。それにしても、なぜ犯人はわざわざこんなありきたりなものを犯行現場に残すんだろう。犯人は誰でもない、とでも言うのだろうか。 「クールミストガム、売れてる?」 疑うべきは身内から、だ。警察署内の売店でおばちゃんに声をかけた。 「さっぱりよ。だってあの事件でしょう?みんな疑われるの嫌だからね。でも、事件発生前に1ダース買ってった人がいたわねえ」

13年前

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誰だよ、そういう悪目立ちをやる奴は。 思わずげんなりした声が出た。 わざわざ署内の売店であからさまに不審な行動を取らなくてもいいだろうに。 これも仕事だから裏を取らないといけないが、調べたところでどうでもいい事実が出てくるだけの予感がひしひしとする。 「あらー」 ケラケラとおばちゃんが笑って言った。 「いやね、あんたんとこの警部だけどね」 吉田かよ。

leisai

13年前

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警部!裏取れましたよ。 取り敢えずそこのコンビニでは CMGは一ヶ月に15売れれば良い方だと… あと3km先にあるコンビニでも同じく… 駅の中のコンビニでは30はいくけど ダース買いは無いと…。 ふむ。そうか、ご苦労だ。 それから警部! 署内の売店でおばちゃんが警部が ダース買いしたのを目にしたそうですが… んん?アレはな、娘に口臭を指摘されてな 暇さえ有れば噛んでるんだ はっはっはっは

13年前

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そんな話をした後、俺は調査の続きをする事にした。 そして調査を続けて2日、重要な証言がとれた。 それは事件が起こった場所から60キロ離れたコンビニでダース買ではないが、ほとんど毎日のように買いに来ている人がいるとの事だった。 早速警部に報告すると、翌日から厳戒態勢で張り込みをする事になった。

gelly

13年前

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張り込みをして2日目の朝だった。 朝のコンビニは人が入れ替わり立ち替わり通り過ぎて行き、もはや皆同じ顔に見える程だ。 そんな時。年端も近いコンビニ店員が血相を変えて見張りをして居た覆面パトカーに駆け寄ってくる。 俺は急いで窓を開けた。 「どうした!?」 「あの子ですよ!刑事さん!!」 店員が指差した先に居たのは、大人達に混じってレジに並ぶまだ幼い女の子だった。

snow

13年前

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「一人で買い物?」 俺は少女の後ろに並び、幼稚園の先生みたいな声色で話しかけた。我ながら実に胡散臭い。 少女はきょとんとした顔を俺に向け、しばらくじっと見つめてから、ようやく頷いた。 「それ、お家の人に頼まれたの?」 少女はまたしばらく固まり、首を横に降った。 「じゃあそのガム、好きなんだ」 「別に」 今度は俺が固まってしまった。その声と表情があまりにも少女らしからぬ冷たさを感じさせたからだ。

こばやし

13年前

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「このガムは合図」 「合図?」 尋ねると、少女は軽蔑するような目を浮かべて見つめ返してきた。 「あんたも同じなの?」 はて、何のことだろう。 「ガム噛んでるとね、これを欲しがる大人が来るんだよ。お医者さん、この粉ガムに包んで口移ししてくれっていうからした。次の奴もきっとそうして欲しいんだろうなって」 被害者の男たちは少女の噛んでいるガムを欲しがる変態だった。 「ねえ、あんたも欲しいの?」

aoto

13年前

- 完 -